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好きな人



「あ、」

「よお」



学校近くのコンビニまで買出しを頼まれた楓は、同じ理由でやって来た昶と遭遇した。

頼まれたといっても飲み物やお菓子などで、簡単に言ってしまえばただの使い走りなのだが。



「間に合いそうか?」

「何とかって感じ。

そっちは?」

「うちはもうちょい。

真が仕切ってくれとるから割とスムーズに進んどるし」

「流石草田君…!!」

「はいはい」



カゴ俺持つから俺のんも入れてえぇ?

ちゃんと自分の分は払いなさいよ。

分かっとるっちゅーねん。



カゴを渡し、ふと違和感。



「アンタホントにあの馬鹿男!?」

「何やねん急に!!

失礼な奴やな!!」



いつも顔を合わせるたびに喧嘩を吹っかけてきていたのに。



「別にー?

俺も大人になったっちゅー事や」

「訳分かんないしウザい」

「うっさいわ」



会計を済ませ各々荷物を持って学校へ戻る。



「水森、そっちの袋貸せ。

こっちの菓子だけ入っとる袋の方が軽いから」

「いい加減それ止めてくれない!?

気持ち悪い!!」

「だから何がやねん!?

人がせっかく親切心でやったってんのに!!」

「急にキャラ変わり過ぎなのよ!!

そういうのは好きな子にしてあげれば!?」



勢い良く続けられた楓の言葉に、昶がぐっと詰まった。

その思いがけない反応に、楓はニヤリと悪どい笑み。



「何々、アンタ好きな子いるの?

何組の誰?

応援くらいならしてあげるわよ?」

「…別に、叶わへん恋やし」



何で本人の目の前でこんな話を。

どうにでもなれと不貞腐れた。



「って事は彼氏持ち?

面倒くさい相手を選んだのねアンタ」

「…ああ、めっちゃめんどくさいわ」



いつだって彼女相手では素直になれなくて。

彼女の瞳は、ずっと真だけを映していて。



彼女の瞳には、俺は「真の親友」としてしか映らない。



「何よ?

私の顔に何かついてる?」



諦めようと、思った。

報われないのなら、いっそ。



「……や」



そんな事、出来る訳ないのに。



「俺が好きなんは、お前や」



彼女の瞳に、ようやく俺が映る。




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