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真実(その2)

 結局今日は俺が場所と年代を聞いた男の家に泊まることになった。



 俺から頼んだのではなく、頼まれたのだ。



 

 この辺で武士は珍しく、是非泊まって行ってくれと言われたのだ。




 俺も食べるものもないし、丁度よかったので泊めてもらうことにした。



 俺はデータボックスで近藤に連絡した後、早めに眠ることにした。



 これからどうするかを考えたたが、まだ結論はでない。



 とりあえずゲームのときに世話になった毛利元就を頼ることにした。



 厳島の合戦よりもまだ前なので、広島の北部にいるはずである。




 まだ勢力を伸ばす前のほうが出世もしやすいし、天下も取りやすいのではないかと考えたからである。



 近藤からも「私はしばらく京で情報収集をします。山本さんもがんばってください。」といわれたので、しばらくは別行動になる。





 翌朝、目が覚めると同時に俺は毛利元就のいる、吉田郡山城を目指して旅を始めた。




 データボックスで場所を確認し、歩いての旅なので、4日から5日はかかるだろう。





 俺が岡山を経て吉田郡山城へにたどり着いたのは、4日後の夕方であった。





 「それがしは山本雄一と申す。毛利家に仕官したく参りました。」



 「・・・・しばし待たれよ」


 

 城兵が中へと入っていく。



 待っている間に周りを見回した。



 ゲームとは全然景色が違っていた。


 城もゲームのときとは全く違い、城というより砦と言ったほうがよい城だった。




 「御館様がお待ちである、ついて来られよ。」




 城兵と一緒に来た武士に言われ、一緒に城の中へ入る。




 「御館様、山本殿を連れて参りました。」



 「うむ、入れ」




 俺も広間に入り、上座に向かって平伏する。



 「お初にお目にかかります。山本雄一と申しまする」




 「山本雄一、聞かぬ名だが、いずこの者か」



 「はは、下総の国でござりまする」



 「左様か、で、我が毛利家に仕官したいと聞いたが、相違ないか」



 「はは、それがしは諸国を旅しておりましたが、毛利様こそ、それがしの一命をお預けするにふさわしいお方と決め、参りました。」



 頭を上げ、上座に座る男をみる。


 毛利元就は確か40歳を過ぎたころであるが、上座に座っている男はもう少し年上にも見える。



 しかし、話し方といい、様子から毛利元就に間違いなさそうである。



 元就はしばらく他の者と話した後、




「それでは毛利家への仕官を許す。励まれよ」



 「はは、ありがたき幸せにごりまする。」



 俺は再度平伏してから広間を後にした。





 広間を出た直後、



 「おい!」



 振り返るとまだ10歳にならないくらいの子供が俺を見ていた。



 もしかすると毛利元就の子、吉川元春か小早川隆景のどちらかだろう。


 「お前か、新しく我が毛利に来た物好きは」



 「徳寿丸様」



 案内していた武士が声をかけて子供をとがめる。



 徳寿丸・・・・!

 小早川隆景の方か。

 事前にデータボックスで勉強しておいてよかった。


 「お初にお目にかかります。山本雄一でござる」

俺は徳寿丸に一礼して、そのまま自分の部屋へと向かった。 


 データボックスで調べたところ、今いる時代から数ヵ月後には尼子氏が吉田郡山城へ攻めてくることになっている。



 まだ安芸の国の領主だった毛利氏にとっては強敵である。


 ここで俺がどんな活躍をすればいいかがまだよく判らない。


 しかし、ここで活躍しなければ、後々天下はとれない。


 とにかく当面は毛利家の武将としてがんばるしかない。



 それからの俺は毛利家の武将として戦場を駆け巡ることになった。



 データボックスにはいろいろなデータがすぐに検索されてでてくる。


 今目の前にしている敵が歴史ではどのような采配をしたのかも分かるので、俺は自分が勝つためにどうすればよいかを考えるだけであった。



 俺が仕官してから数ヵ月後には、尼子氏が攻めてきた。



 毛利家は、近隣の住民も城に入れて篭城し、大内氏の応援を待った。



 その時、まだ元服していない元春も初陣を飾った。


 さすが後世に名を残す武将だけあり、子供のころから戦場で武功をあげ、兵達も驚いていた。



 やがて大内氏の応援により、尼子氏は撤退していった。



 


  その後も俺は活躍を続け、厳島の合戦後、毛利氏が中国地方を制圧、そして月山富田城を攻め、尼子氏を滅ぼし、毛利氏の地位が確固たるものとなった。



 俺はその頃、元就の孫の輝元の側近として、輝元に仕えていた。



 体が未来にあるからか、年はとらない。


 尼子氏が降伏したのは永禄9年(1566)年であり、俺がこの時代に来てからもうすぐ30年になろうとしている。


 でも俺は全く年をとっていなかった。




 歴史では毛利氏は、これ以上の勢力拡大はしないはず。


 となるとそろそろ別の戦国大名について更に上を目指すしかない。



 俺は思い切って毛利輝元に頼み、自分で天下を取るために毛利家を辞去することにした。



 輝元は元就から許可を貰った上で、俺の辞去を認めた。



 俺は毛利家を出て、旅に出た。


 すでに俺の名前は有名になっているのか、道すがらさまざまな戦国大名や領主から仕官の誘いを受けた。


 断ると殺しにかかる者もいた。



 だがこんなところでとどまるわけにも行かず、俺は東へと旅を続けた。


 途中、京に立ち寄り近藤に会った。

 あまり近藤自身のことは聞いていなかったので、会っておどろいた。

 

 近藤は京でも一二を争う呉服屋の大店で働いていた。


 ・・・というより経営していた。

 しかしそれも表向きで、裏では数多くの忍者を使って全国の情報収集を行っていた。


 俺も近藤の助言に助けられた。


 これも忍者達の活躍によるものだろう。


 近藤は一体どうやって数多くの忍者を雇い、全国から情報を集めているのかが不思議だったが、教えてくれそうもないので聞かないことにした。


 今後も近藤の助けが必要なのは間違いない。


 とにかく俺が天下を取ることが、今回の仕事である。


 それまで元の時代には帰れない。


 この世界で俺が天下を取るためには何をしなければならないのか。

 正直なところよく分からない。

 でも、自分の信じる道を進むしかない。


 


 とりあえず当面の俺の予定では、この際なのでどこかで仲間を少しずつ集めて自分の勢力を作り、その勢力で城を攻めて、大名になることである。

 とにかく自分が大名にならなければ天下はとれない。


 仕官した先で主を倒せば、あの明智光秀と同じになってしまう。


 しかし、一人では何も出来ない。


 とにかく小さな集団でもいい、自分の兵を持たないといけない。


  今回の俺の旅の目的は、信頼できる優秀な部下を集めることでもある。


 その為、既に勢力を拡大しつつある織田家の周辺で、戦いに敗れた大名の武将と仲間になる必要がある。


 あまり有名な武将は仲間にはならないだろう。

 無名でも、きっかけがあれば、あの豊臣秀吉の代わりに天下を取れた者もいるに違いない。


 戦国時代は運も左右する。


 運が味方した者が、後世の歴史に名を残したのだと思う。


 名を残せなかったのは、運がなかったからであり、実力がなかったとは言い切れない。


 俺の旅はそんな野に埋もれた者を探して味方にすることである。


 そして、強力な武器も必要である。


 戦国時代の最新の武器はやはり鉄砲である。


 しかし、一発ずつ弾を込めなければらない上、雨が降ると使えない。


 そんな欠点を解消した、俺の時代でも使われているような鉄砲を手に入れる必要がある。


 近藤は俺が考えていたことが分かっていたのか、鉄砲のほうは何とかすると言ってくれた。


 だから俺は仲間を探すことが今一番必要なことである。



 

 そんな時に、近藤から連絡を受けた。


 京に再び戻って来て欲しい


 特に俺の旅はどこへ行くという目的があるわけではないので、再び京へ戻ることにした。


 京に戻り、近藤の呉服店へ行くと、奥の部屋に通され、近藤を待つ。


 待っている間に食事が運ばれてきた。


 ・・・・・何故かパンとシチュー・・・。


 


 さすが近藤。

 戦国時代でも自分のスタイルは崩さないのか・・・。


 ある意味、近藤が天下を目指したほうが手っ取り早いのではないかと考えてしまいながらも、30年ぶりのシチューを堪能した。



 美味い[D:F99B]



 

 ってかジャガイモをどうやって調達したんだろう?


 ジャガイモはまだ日本にはないはず。


 疑問もあるが美味しさにはかなわない。


 そしてシチューを食べ終えた後、更に衝撃な出来事が起こった。


 



 なんと、食後のコーヒーが出てきたのだ。



 コーヒーももちろん30年ぶり。


 ってか、・・・・。


 もう何も思うまい。



 近藤、君はすごいよ。


 なんで君が天下を取らないんだい?



 すっかり近藤に対する敗北を感じながら、コーヒーを飲み終えた頃、近藤がやってきた。






 「お待たせしました」


 近藤はどこぞの大名の奥方かと思うような着物を着ていた。


  「食事は口に合いましたか?」


 「・・・久しぶりのシチュー美味かったよ。まさかジャガイモが食べられるとは思わなかった。」


 「それは良かったです。イスパニアから取り寄せるの大変だったんです。まだヨーロッパにも普及していませんから。」


 ・・・・呉服店てかなり儲かるのか?それとも、まさか外国にまで忍者を派遣しているのか?



 あれこれ思っているうちに近藤が本題を切り出す。



 「今回お呼びしたのは、山本さんの仲間に最適な方が見つかったので、紹介するためだったんです。」



 そう言って、近藤が手を叩くと、部屋に3人の男女が入ってきた。


 しかも1人は白人、この時代でいうなら南蛮人だった。

 

 「この3人は、私がこちらで見つけた、未来からこの時代に来た方々です。」


 そうか、近藤がこの時代へ来た目的の一つはこれだった。


 近藤の目的は俺のサポートの他に、未来から来た人たちを見つけることだった。


 「彼らもこの時代へ来て10年くらいになりますし、それぞれ一芸に秀でた方々ですので、山本さんの部下に最適です」


 「ありがとう、助かるよ」


 俺は3人に向かって挨拶をした。


 「山本雄一です。よろしくお願いします」


 「まことです」

 「有紀ゆうきです」

 「マイクです」


全員がそれぞれ挨拶をした。


 「彼らはこの時代では武士ではないので、氏はありません。山本さんが必要だと思えば氏をつけてあげてください」




 この日は近藤の屋敷に泊まることにした。


 夜、真とマイクと一緒に寝ることになったので、二人から話を聞くと、二人とも今日始めて会ったことが分かった。


 真は雑賀で鉄砲鍛冶、マイクは近江で南蛮商人として暮らしていたところ、近藤に声をかけられ、未来から来たことを見破られたという。

 未来人は、自分が未来から来たことを絶対に他の者には話さない。


 うかつに話して、有力者から利用されたり、異端者として討ち取られる危険があるためである。



 俺も、何故二人が戦国時代へ来たのかは聞かなかった。


 いろいろ理由があるからだろうし、知らないほうがいいかもしれないと思ったからだ。


 真もマイクも俺の部下としてがんばることを約束してくれた。


 有紀は別の部屋だと思うが、旅をしながら聞けばいいだろう。


 それにしても商人と鉄砲鍛冶、しか未来人というのはとても助かる。


 新型の鉄砲を開発できるし、それをつかった貿易も出来る。


 しかし、天下をとるにはもっと仲間を集め、手ごろな城を攻め落として、大名になる必要がある。



 出来ればこれまで世話になった毛利家とは戦いたくないので、中国から離れた場所で城をとりたい。


 いろいろ考えているうちに眠ってしまった。


 翌朝、有紀も加わり、4人で近藤の店を出て、東へと旅を始めた。


 旅の途中、有紀からも話をきいた。


 有紀は忍者として、近藤の下に仕えていたらしい。

 今回俺の手助けをするよう命令を受けたと語った。


 ・・・一応念のため普段どんな食事をしていたのかも聞いたが、戦国時代の普通の食事だといっていた。


 ・・・やはり近藤だけがあんな食事をしているのか。



 そんなこんなで俺の天下統一への旅が始まった。


 


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