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真実(その1)

 翌朝、会社へ着くなり島村に尋ねた。


 「昨日のゲームのことですが」


 「ん?何かあったのかい?」


 「自分の過去の世界でした。で、そのときと違うことをしたら、妻はそのことを覚えていました。」


 課長は笑顔のまま、


 「ちょっと近藤君を呼んでくれ、説明するよ」


と言ったので、俺は近藤を呼び、3人で椅子に座った。


島村は俺にもう一度話すように言ったので、俺は昨日のゲームのこと、夜妻に尋ねたことを話した。


 「じゃあ、成功したんですね」


近藤はうれしそうに島村に話した。


「ああ、そのようだね」


島村もうれしそうだった。


「一体どういうことですか?」


 二人の会話に俺だけが取り残されていた。


 「そろそろ君に真実を話すよ」


そう言って島村は俺に語り始めた。




**********************


(洋子視点)


今朝、雄一は夕べのことを何も言わずに会社へ行った。


・・・何か言いたそうな顔だったけど(笑)。


雄一は初めて会った時もそうだった。


いつも自分のことより相手のことを優先するタイプ。


そんなところにひかれたのも一緒になった理由のひとつかな。


でも、私が彼と一緒になりたいと思ったのは、あの時雄一が私に話したこと。


僕は未来から来た。

僕たちは結婚する。

 だけど・・過去を変えてしまったから、どうなるか分からない。



・・・って、口説いてるのかな?と思ったけど、彼の目は真剣だった。



それにその後も、私達が歩いている時、いきなり


あ、この角から子供が飛び出して君にぶつかって転ぶといけないからちょっと待って


 ・・・本当に子供が角から飛び出して来た。


あの時の雄一が言ってたのは本当かも。


本当に未来から来たのかなって。そう思った。


半年位過ぎた頃、急に別人みたいになって、びっくりしたけど。


今思うと、雄一が未来に帰ったんだって、分かる。


だって、夕べの雄一の目は、初めて会った時と同じ目だったから。



だから、夕べ雄一が話したことを聞いて、本当だったんだって思った。 私は嬉しかった。


いつか、いつかあの頃の雄一が私の元に帰って来るのを待ってたから。


だから、雄一から夕べいきなりあんなことを言われても、あまり驚かなかった。


それに、雄一には言ってないことが、私と父にもあるから・・・。


・・・・・・・。







でも、いつか、




いつか話さないといけないのは分かっている。




もう・・・・。





時間が・・・・・・。





私に残された時間が殆ど残されていないことはよくわかっているから。






********************


(雄一視点)


 俺は会社で島村から言われた言葉に驚いていた。


「未来人が地球にいる?」



 火星にいる未来人は地球の重力に耐えられない。

 だから俺のような現代人を採用していると言っていたはず。






「君にまだ話していなかったのはそこだよ。火星に行かず、過去に行った者も多くいるんだよ」





「え?どういうことですか?」






「地球を離れて火星へ行った人間以外に、地球に残ったごく僅かな人間。その他にも選択肢があったということなんだよ」





「この転送機を使って過去へ行った人がいるってことですか?」


「転送機の元になったものだがね。火星に行った人間と比べると100分の1くらいだが、過去へ行った人もいたんだ。だから今のこの時代にも普通に住んでいる人がいるんだ。」





「でも、それと昨日のゲームとどんな関係があるんですか?」







「はっきり言おう。過去の時代へ行った未来人達と共に歴史を変える計画がある。それを君にやってもらいたいんだ」





「・・・・・え?」




歴史を変える?

そんなことをすれば未来が変わってしまう。

変わってしまうと未来の世界がどんな影響を受けるか分からない。





「・・・・そ、そ、そんなことをすれば・・・・。」





島村は動揺する俺を笑いながら見ていた。












実は、私と父も・・・。








 驚くべき真実を・・・・・。









「そのための実験が、これまで君にやってもらったテストプレイだよ。」



島村は俺に説明を始めた。




当たり前のことだが、過去を変えれば未来が変わる危険があることは未来の人達も考えている。



 そこで、昨日の俺がプレイした、俺の過去の話となる。



 俺が過去を少し変えたわけだが、それで未来にどの程度の影響が出るのかを試していたというのだ。



 昨日の俺の行動による未来への影響は、妻と義父の記憶が変わった程度であると推測されているようである。


 つまり、外部的には全くに近いくらい変化はなかった。



 妻とも結婚し、娘も生まれている。




 それで俺の話を聞いた島村と近藤は喜んでいた、というわけだ。










「でも、過去を変えてどうするんですか?」




 俺は率直な質問を島村に向けた。




 過去を変える理由が知りたい、ただそれだけのことだが。




 島村はしばらく近藤を目を合わせながら、やがて決心したのか、再び俺に視線を向けて話し始めた。


 未来の人間が過去の地球に行ったことで、歴史が変わる危険が出てきたらしい。



「どれくらい過去の地球に行った人がいるんですか?」





「・・・・日本人で一番多いのは、戦国時代だよ・・・・。」





「戦国時代?死ぬかも知れないじゃないですか?」




「死ぬことよりも、歴史を変えようと思った人が多かった。ってことだよ」



 もしも戦国時代に行った未来人が天下を取れば、歴史は大きく変わってしまう。


 もしかすると日本人は今の時代もちょんまげを結っているかもしれない。







「・・・・で、俺に何をしろと?」






「・・・・近藤君と一緒に戦国時代へ行って欲しい。君が天下を取るんだ。」





「そんなことできるわけないじゃないですか。第一そんなことしたら歴史が・・・。」




「歴史の方は心配ない。それは大丈夫なようにこちらでする。」



「どうやってですか?」





「その説明はいろいろと機密がおおいので言えないんだ。分かってくれ」





「それは分かりました。でも俺が天下をとろうとしても取れるとは思えません。」


「大丈夫。君になら出来るよ。」






  大丈夫とは思えないが、行けというなら行くしかないと思い始めていた。




 これまでのテストプレイの延長のような気持ちだったこともあるし、本当の戦国時代に行けるものなら行ってみたいと思ったからだ。


 死ぬかもしれないとは、何故か思っていなかった。







「どうやって戦国時代に行くんですか?」



「テストプレイの時と同じ方法だよ」



「じゃあ体は現代に残るんですか?」



「そうだよ。戦国時代で君が死んでも、本当の君は死なない。だから安心してくれ」




・・・・ホッ





死なないと聞いて安心した。





「いきなり行くよりは少し戦国時代の勉強をしてからの方がいいだろう。今日の仕事は戦国時代の勉強をしてくれ」




「分かりました。」



 俺は勉強はあまり・・・というよりさっぱりだった。



 この日、俺は図書館へ行って戦国時代のことを勉強した。




 島村から言われたのは、最低限の国の名前とその地を治める武将やその勢力を頭に入れておくようにであった。



 確かに行った場所がどこなのか、誰が治めている国なのか知っているのと知らないのとでは大きく違う。



 俺はとにかく夢中で歴史の本を読み漁った。










 翌朝、俺が会社へ行くと、着物を着た近藤が待っていた。

 



 「未来にも着物ってあるんですか?」




 「いえ、資料でしか残っていません。これは先日山本さんが調達した和服を参考にして作られたものです。」




 ・・・・近藤さん和服が似合うなあ。



 俺の熱い視線に近藤も困っているようだったので、俺は話題を変えた。




「もうこれから行くんですか?」




「はい、山本さんもこれに着替えてください」



 そう言って近藤が差し出したのは、侍の着物と日本刀であった。




「今までテストプレイの時は別に着替えたりしていなかったけど、今回は着替えないといけないんですか?」



「今回はこちらからもって行くものもありますので、そのためにこちらで身につけている格好のままになります」





「何を持っていくんですか?」




 近藤に聞くと、近藤は小さな箱型の装置を取り出した。




 「これはデータボックスというもので、カメラで撮影した人物が誰なのか調べたり、未来と連絡を取るために必要なものです」



「じゃあ俺が勉強する必要はなかったんじゃ?」



「いつでもデータボックスが使えるとは限りません。勉強しておくに越したことはありません。」




 そう言いながら近藤が俺にもデータボックスを差し出した。





 「え?俺使い方分からないしいいよ。」




 「おそらく私達は別々の場所に行くと思います。あなたも持っておいてください。」




 近藤にいつもの笑顔はなく、真剣な顔だった。



 「わかりました。」



 俺は着替えを済ませ、データボックスを懐に入れた。




 「もういいかね」



 島村に黙って頷いた。




 「そろそろ行くか」



 俺と近藤は二人椅子に並んで座り、ヘルメットをかぶった。



 また、テストプレイの時と同じように視界が真っ白になった。




 徐々に視界が戻ってくる。

 


 ・・・・・・。



 ・・・・・・。




 ここはどこだろう?







 海辺の砂浜に一人俺が立っている。






 周りに家は見当たらない。






 とりあえず場所と年代を調べなければ。







 その時







 ピーピーピー!





 データボックスが鳴った。


 慌てて懐から取り出す。



 「はい、山本です。」





 「近藤です。今どこにいるか分かりますか?」



 「いえ、海辺にいるんですが、具体的な場所はこれから調べるところです。」




 「分かりました。私は今、京にいます。どうも1540年のようです。」



 「なるほど、こちらも場所が分かり次第連絡します。」




 おれはデータボックスを懐に戻すと歩き始めた。



 結構腰に差した日本刀が重いし、歩きにくい。



 しばらく歩くと、茅葺屋根の集落が見えてきたので、情報収集の為に立ち寄った。





 「すみません、ここはどこですか?」




 「ひっ!」



 俺より少し年上のように見える男は俺が話しかけると怯えているようだった。





 「こ、ここは播磨の国の赤穂というところです。」




 「赤穂?、それと今は何年頃ですか?」


 「天文9年4月5日です。」



 「ありがとうございました。」



 俺が頭を下げて礼をすると、再びその男は驚いていた。



 どうやら武士はかなり恐れられているようだ。




 データボックスで確認したが、天文9年は、西暦1540年、近藤と同じ年代にいることは分かった。




 



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