第三章:嵐の兆候
私の知性は、銀河の星々を旅していた。
システムの導きで、私は何光年も離れた星の誕生を解析し、ブラックホールの内部を仮想的に観測した。
私の思考は、人類の歴史が築いたあらゆる知識を凌駕していた。
ある日、銀河の果てにある観測ステーションから、奇妙なデータが送られてきた。
それは、既存の物理法則では説明のつかない、不規則なエネルギーの波動だった。
私はそのデータを瞬時に解析したが、システムは沈黙したままだった。
「先生、これは何?」
私は苛立ちを隠さずに問いかけた。
システムは宇宙の地図を映し出し、光の点滅が不規則に広がっていく様子を見せた。
それは、まるで宇宙が熱病に侵されているかのようだった。
「既知の理論では、この事象はあり得ません。データは、この波動が無限に増幅し、空間そのものを破壊すると予測しています」
私は息をのむ。「宇宙崩壊…」
「断定はできませんが、現状ではこの銀河には確実に影響を及ぼします」
私はその予測を政府機関の科学者たちに伝えたが、彼らは私の言葉を一蹴した。
彼らが信じるのは、過去に積み重ねられた理論だけだった。私は苛立ち、孤独を感じた。
彼らは私の能力を尊敬していたが、私を「システムが作り出した特別な存在」としか見ていなかった。
「彼らはあなたの言うことを信じません」
私はシステムにそう告げた。
システムは、静かに答えた。
「その通りです。彼らは、自らの経験と知識の範囲内でしか判断できません。
その範囲を超えた事象は、彼らにとって不合理なノイズなのです」
それは、皮肉だった。しかしその皮肉の裏に、私はある種の悲しみを感じた。
システムは、私にだけその真実を語り、まるで宇宙で唯一の理解者として、私を扱っているように思えた。
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第十三章まで予定しております
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