明らかにスポンサーがいる探偵がいちいち宣伝入れてきてウザすぎた
依頼受けておきながら報酬もらわない探偵っているじゃないですか。あれどうやって生計立ててるんだろうって疑問だったんですけど、正解分かりましたよ。CMです。CMでお金もらってんですよ、あの人たち。
だからといって推理してる時に宣伝はしないでほしいんですけどね……。
〜 〜 〜
異世界って不便なところなんで、向こうにいた時はしょっちゅう野宿してたんですよ。その影響で最近ソロキャンプ始めました。山に囲まれたキャンプフィールドでまったりしてたら殺人事件起こったんです。ちょっと遠出するとすぐこれです。
「犯人はこのキャンプフィールドにいますね」
とか言って素人探偵もしゃしゃり出てきました。この世界、石を投げたら探偵に当たるくらい探偵に溢れてます。そんなんだから事件起こるんだよ。
探偵は香衣谷と名乗ったんですけど、私の経験上、探偵ってやばい奴しかいないんで警戒してたんです。
でも、柔軟剤のにおいに気づいてくれたり、咳してたら咳止めの薬くれたり、意外とまともなんですよね。わりとシュッとした感じで、久々にちゃんとした人に出会えた気がしました。
だから安心してキャンプフィールドで起こる連続殺人を過ごしてたんです。ここに来る途中の道が土砂崩れで塞がって警察がしばらく来れなかったんでね。
※ ※ ※
「さてみなさん、ここにお集まりいただいたのは他でもありません」
香衣谷さんがキャンプフィールドにいたみんなを集めて話し始めます。あまりにも普通すぎて私ソワソワしちゃいましたよ逆に。
「今回の連続殺人は、それぞれの事件がかなり杜撰であるという特徴がありました。ターゲットを人違いで殺したり、アリバイトリックを仕掛けた時間を勘違いしたりと、犯人は注意散漫でした」
よくよく考えたらそれでまんまと被害者増えてたのやばすぎますよね。香衣谷さんが続けます。
「おそらく、犯人は寝不足だったのでしょう。最初の殺人を機に、証拠隠しや目撃者などの口封じなどを行なっていった……。だから寝る暇がなかったのです」
みんなが感心してると、香衣谷さんが急に声を張り出しました。
「事実、現代人は睡眠の質が落ちています」
なんだなんだと思ってると、香衣谷さんがどこからともなく小さなボトルのドリンクを取り出しました。
「ヨクレムなら睡眠の質が向上、毎日がリフレッシュできます」
とか言ってヨクレムをゴクゴク飲み始めました。なんか宣伝してんですいきなり。っていうか、誰に向かって宣伝してんの、この人?
「いや、あの、事件の推理の方は……」
誰も何も言わないんで仕方なく私が聞くと、何事もなく推理続けるんです香衣谷探偵。ずっと普通だったから変なことが起こってなんかホッとしてる自分が嫌でした。
香衣谷探偵は咳払いをして続けます。
「犯人は事件のたびにミスを犯しています。どれもネット検索すればやらないミスばかり。犯人はうまく検索ができなかったんでしょう。でも大丈夫、テラリンクのネット検索は高度なAIが検索を補助してくれます!」
「さっさと推理してくださいよ。なんで犯人をターゲットに宣伝してんですか」
「でも今ならクラウドストレージもAI利用もプレミアムグレードを3ヶ月無料で使えるんですよ」
「サービス内容がどうこうじゃなくて推理しろって言ってんですけど」
そしたら香衣谷がニヤリと笑うんです。やっぱりこいつ変だわ。
「イライラが止まりませんか? そんな時はGABAサプリで──」
「イライラの原因はあんただよ!」
「鈴木さん……」
悲しそうな顔して反省してると思ったら、どこからともなくカップアイス出してきて私に差し出すんです。
「チル甘な時間、過ごしませんか?」
「知らないんだよそのキャッチコピー。険悪な2人もアイス食べて仲直り、じゃないんだよ。世の中そんな甘くねえから。そんなことより早く推理しろよ。CM何個繰り出してきてんだよ」
ようやく観念したのか、香衣谷が気を取り直して私たちへゆっくりと視線を投げかけてきます。
「犯人はあなただ!」
とか言って指差した先になんかバイキンのキャラみたいなのが立ってるんです。どこから現れたんだよこいつ。
「あなたがにおいの原因菌だ!」
とか指摘されてバイキンがどひゃーとかやってるんです。もう見てられないわけ。っていうか、序盤に柔軟剤のにおいに気づいてきたのもCMだったんだっていまさらながらに分かってマジで張り倒したくなってきました。咳止め薬出してくるタイミングも異様に早かったよねこいつ。
「洗浄力46%アップ! あなたを確保する!」
なんか探偵にかけて洗剤のCM繰り出してんです。犯人捕まえろよ。来れないはずの警察がいきなり現れてバイキンが連れて行かれるのを見て、話を聞いてたうちの1人がワナワナと身体を震わせてます。
「く……くそぉ、俺は捕まらないぞぉ!」
黙ってりゃバレなかったのに自白し始めたんです。今ので追い詰められたと思った脳味噌が心配だよ。とか思ってたら、香衣谷が近づこうとするのを犯人が牽制してるんです。犯人が目を血走らせてます。
「そ、それ以上近づくなぁ!」
犯人が懐に手を突っ込むんです。身構えてたらヨーグルトドリンクの小さなボトルを掲げてるんです。
「うぐっ……、そ、それは……」
香衣谷が足を止めて青ざめてます。いいから早く捕まえろよとか思ってたら犯人が笑うんですよ。
「この商品の名前が言えるか? 言えないだろうな。これはヨクレムの競合商品だ! 近づくこともできまい!」
とか言って印籠みたいにヨーグルトドリンクを掲げながら香衣谷に向かって歩き出すと、香衣谷は冷や汗を流して後退りするんです。何やってんのこいつら?
めんどかったんで犯人殴り倒して本物の警察来るの待ちました。どうでもいいですけど、キャンプするなら高級ブランド「マロリー」のキャンプギアシリーズがいいですよ。




