俺、5mジャンプできるんだ
息抜きに思いついたものを書きました。
よければ読んでいってください。
「ふわぁぁー」
眩しい朝の光が窓からベッドに差し込む。
自分では珍しく目覚まし時計が鳴る前に起きられたなと、自分自身に感心しながらベッドから降り、その足でキッチンに向かう。
高校のホームルームは8時半から。
今の時刻は6時を丁度回ったところなので、コーヒーでも飲んでゆっくりしようという戦法だ。
やかんに水を入れてガスコンロで火にかける。
お湯が沸騰する間1Kの一人暮らしの家を眺めた。
ここで一人暮らしを始めたのも丁度1年前か。
今日が高校二年生の新学期初日だと気づいて、感慨深くなってしまう。
いつの間にか沸いていたお湯をインスタントコーヒーに注いだ、ゆっくり学校に行く準備を進めていく。
「さて、新しいクラスの人間はどんな人たちなんだろうな。楽しみだ!」
熱いコーヒーを啜りながら期待に胸を弾ませていたこの時の俺、『源 一』は、今日この日から世界の体系が大きく変わってしまったことなど思いもしなかったのだった――。
「よし、そろそろいい時間だし学校に向かおうか」
5階建てのマンションの階段を足早に下る。
しかし、朝でまだ体が目覚めてなかったのか、自分の右足に自分の左足を引っかけて体のバランスを崩してしまった。
「おわッ!」
目の前には十数段の階段。
更にこのマンションの階段は外側に螺旋を描くように造られていて、このまま勢いよく突っ込めばマンションの三階部分から外に身体が丸々放り出されてしまう。
だが、このまま階段を転がれば怪我することは避けられないし、もし打ちどころが悪ければ……。
「クソ、階段じゃなくてエレベーターを使えばよかった!」
過ぎたことを悔やみながら、俺は一か八か残った左足を思い切り伸ばした。
上手くいけば外にも放り出されず階段にも打ち付けられず、ちょっとしたうち身と擦り傷で済むだろう。
しかし、瞬間自分の身にありえないことが起こった。
階段を前傾姿勢のまま蹴り飛ばした直後俺は空を飛んでいた。
いや、そう錯覚するほどに自分の跳躍力が桁違いだったのだ。
耳にはビュンという風切り音が聞こえ、視界は既に階段の外、つまりは空中に放り出されていた。
「えええええええ!?」
思わぬ展開に空中でもがく。
しかしもちろん体重移動なんて出来ず、数メートル前に進んだ後、今度は推定5mほどの高さから身体が自由落下を始めた。
え、死ぬじゃん――。
地面を見つめながら最初に思ったこと。
マンションの3階からまるで時をかけるかのような体制のまま、凄いスピードで地面に向かっていく。
「こんな面白いシチュエーションで死ぬのかよ、俺! いやあああ、まだ死にたくないいいいい!」
叫んでいる間にもう地面すれすれのところまで落ちて来ていて――。
「こうなったら!」
ズドンッ!
人が落ちただけとは思えないような大きな音と共に俺は地面に着地した。
「足がしびれる! 痛い!」
着地の衝撃を殺すために着地の時に地面を思い切り踏みつけたせいか、それとももともと地盤が緩かったのかは分からないが、足元のアスファルトは放射状にひび割れその煙があたりに蔓延している。
「足は、痺れただけで……無事?」
軽く足踏みしてみるけど全然痛みを感じない。
一体どうなってんだ、この状況。
「でも、確実に俺の身体はおかしくなってる。これ、夢じゃないよなぁ……」
ほほをつまむも痛みは確かに存在していて。
「ならもう一回跳ぶしかないのか……」
崩れた足場を避け、平らな地面で垂直跳びの要領で身を屈めた。
太ももにグッと力を込めて、
「行くぞ!」
掛け声とともに真上に跳躍。
視界がすさまじく揺れ、一瞬浮遊した時先程落ちてきた3階が見えた。
――あれ、俺なんかやばいことになってるんじゃね……?
ズドォンッ!
マンションには本日2度目の大きな音が鳴り、案の定2つ目のクレーターも同時に生まれたのだった。
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