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高校受験に落ちた僕、実は異世界で王をやっていたらしい  作者: あっかんべー


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1/3

第1話 家を飛び出した少年、ダンジョンで登録者50万人の女子高生配信者を素手で救ってしまう

おっさん配信のリメイク作品です。

リメイク前があまり気に入らなかったので作り直しました。

こちらに迫る粘液スライム、ゲラゲラと笑う小さな小鬼ゴブリン


町を壊し、人も壊す巨大な大鬼オーガ、空を覆う様に飛び回る蜥蜴ドラゴン


ここはまるで地獄のようだった。


女性が言った。

「…アルト…ずっと愛しているからね。」


男性が言った。

「アルト!生きてくれ。絶対にそこから出てくるなよ。」


女性と男性は足を引きずりながら離れていき――


そして、魔物の群れに覆いつくされた。

僕はその光景を潰された車の中で身体を小さく丸め震えながら見ていることしかできない…。



――あぁ、またこの夢か…。



そして、僕は目を覚ました。


頬を伝う涙を拭いベッドから立ち上がり今日も冒険へ行く。



僕の名前は田中アルト。16歳。中卒のニート……だった。


"だった"というのは、つい2日前の話だ。


月曜の朝、朝食のあとで義父さんにリビングに呼ばれた。

…何故、義父さんと呼ぶのかというと、この人は僕の本当の父親ではないからだ。


今は大分復興されてはいるが、8年前にここ渋谷ではダンジョン災害…通称D災害が起きた。D災害とは、何もない場所で、いきなりダンジョンが現れ、その中から大量の魔物が現れる災害のことだ。

なぜ、ダンジョンが現れるのか、魔物とは何か、は未だに判明しておらず謎に包まれている。


そして、その時僕の両親は亡くなった、らしい。

らしいと言うのは、僕がその時のことを一切覚えていないからだ。

それから、今の叔父夫婦に引き取られ生活をしていた。


「アルト…。人にはそれぞれのペースがある。アルトもそろそろ浪人するか、就職するか考えた方がいいんじゃないかな?」


……。

正直、大分待ってくれていた方なんだと思った。

血も繋がらない高校受験も失敗した不出来な子供を1年も面倒を見てくれた。

しかも、自分で言うのはアレだが、僕は感情を表に出すのが苦手だ。

人と深くつながってしまうと、いなくなった時につらくなってしまうから…。


だから、叔父夫婦には感謝はすれどいきなり理不尽だと腹も立たなかった。


ただ、その優しさに甘えてしまっていた自分に嫌気がさした。

だから、最近動画で見た職に就こうと考えた。

別に深く考えたわけではないが……。


「…義父さん。…僕、冒険者になります。」

「…えっ?そんなのあぶ――」


義父さんが何か言いかけていたが、僕はそれだけを言い残し家を出た。



自宅の最寄り駅で気づいたら二時間ぼんやり立っていた。人通りが途切れたその隙間、駅の構内掲示板に貼られたポスターが目に入った。


《渋谷ダンジョン・一般入場開放中》


東京の地下、地上三丁目から地下五丁目にかけて突然出現した例の「穴」だ。8年前の異変以来、政府は「Dゾーン」と呼んでいるが、世間はみんな"ダンジョン"と言っている。渋谷ダンジョン。新宿ダンジョン。池袋ダンジョン。

今では大小合わせて全国に三十二か所。入場料の210円さえ払えば一般人でも入れる。最近は配信者が中に入って視聴者を稼ぐのが流行っているらしい。


……本来だったら、冒険者登録から始めるのが基本だけど、少しだけなら今やってみてもいいよね。


たったそれだけの動機でダンジョンに入っていった。



僕は今、家の最寄りの渋谷ダンジョンの第三層にいた。

ダンジョンの一層~二層は子供でも倒せるスライムやゴブリンのみ出るフロアだった。

だから、僕はそのまま層を降りて三層まできた。


ちなみに、正式名称・地下異変区域D-13「渋谷深層エリア」。通称・渋谷ダンジョン第三層。ここから先は「中級帯」で、ゴブリンの上位種である《ゴブリンナイト》や、粘液型の変異種アシッドスライムが出始める。一般入場は可能だが、冒険者登録し難度証明書が要る。僕はなぜか、素通りさせてもらえた。

係のおじさんが僕の顔をじっと見て「あ、君は…通ってもいいですよ」と言っただけだった。

理由は知らない。


ダンジョン内は静かだった。

父さんと母さんを奪ったのが嘘なんじゃないかと思うくらいに。


石造りの通路、ところどころ光苔が生えていて薄く青白く光っている。

ひんやりした空気が肺に入る。なんとなく……懐かしい気がした。


なんでだろ?、この感じ。


考えながら角を曲がったとき、聞こえた。


悲鳴、だった。


足が動いていた。

気づいたときには走っていた。


曲がった先に、いた。


壁際に追い詰められた女の子が一人。


金髪ツインテール、制服姿。スマホを片手に持って、もう片方の手で壁を押さえながら震えていた。胸元のリングライトがまだピカピカ点灯していた。配信中だ。


そして、その子の前には——


《アシッドスライム》が四体。


さらにその奥、薄暗い通路の向こうから《ゴブリンナイト》の影が三体、じりじり近づいてきていた。


女の子の顔は青白かった。


持っていた武器、折り畳みのダガーナイフが、溶けかけていた。

アシッドスライムの体液で刃が半分消えていた。


これは、まずい。


一瞬でわかった。


僕は、思わず飛び出しだ。


「……あ、あぶない!」


LIVE コメント(視聴者:12,847)

匿名A:え?誰これ

スイカ太郎:ヒナちゃん逃げて!!!

匿名B:誰だよwww

ガチ勢777:君こそ危ないよ!

ゆかりん:え待って素手じゃん

ダンジョン民:第三層で一般人?死ぬぞ??


ゴブリンナイトが一体、剣を振りかぶって突っ込んできた。


僕は右手を軽く前に出した。


——ただ、それだけだった。


ゴブリンナイトは吹っ飛んだ。石壁に激突して、そのまま動かなくなった。


残り二体のゴブリンナイトが固まった。


アシッドスライムが四体、じわじわ後退し始めた。


僕は残りを三秒で片付けた。


思いのほか動けてしまい自分でも驚いたが、そんなことよりもさっきのあの人は…いた。


手の汚れを払って、女の子の方を向いた。


「怪我していませんか?」


LIVE コメント(視聴者:48,291)


ガチ勢777:え、少年強すぎて草

エトウ:ゴブリンナイトが一撃って……第三層で?

ヒナ推し最前線:まだ、子供じゃん…。


よく見たら僕は彼女のことを知っていた。

女の子――白川ヒナは、しばらく僕を見上げたまま固まっていた。


十七歳。登録者五十万人。ダンジョン攻略系配信者。動画週間人気ランキング三位の人だった気がする。

どうやら、年上の人だったらしい…。


そんな子が今、口をぽかんと開けて僕を見ていた。

そして、ハッとしたように口を開く。


「……た、助けてくれてありがとう!」


「…いえ、困ったときはお互い様ですから」


「…っ!えっと、多分だけど君…まだ、冒険者じゃないよね?ここ、資格が必要だと思うんだけど…。」


彼女からそう見えたのも仕方ない。

実際そうだし、今の僕の格好は、パーカー姿にお金がなかったため武器を持っていない。


「えっと…お試し的な感じで入ってみた的な感じです…。」


ヒナは三秒固まって、


「……これは原石!」


と、ぽつりと言った。



ダンジョンからの帰り際、ヒナが僕の顔を覗き込んできた。


「自己紹介がまだだったよね、私、白川ヒナです!」


「僕は、田中アルトです。」


「これから、冒険者登録するの?」


「今日はお試しで、明日から登録をしようと考えています。」


ヒナはしばらく黙って、俺の顔を見て、また画面を見て、


「……明日ついって行っていい?」


と、今度は声に力があった。


「え、いや別に」


「絶対に、ついていくから…!」


断れる雰囲気じゃなかった。


僕は「……はあ」とだけ言った。



その後、家に帰って叔父夫婦に家を飛び出したことを謝った後に今日の出来事を話し、明日冒険者登録をすることも話した。


「…アルトはどうして冒険者になりたいんだい?」


「そうよ?無理をすることは無いんだから…」


「…別に今更モンスターに両親の復讐したいとかは、考えていないんだ。実際に、やった奴はとうの昔に討伐されているだろうし…。」


「…。分かったよ。ただし、条件を出すよ?」


「条件ですか?」


「うん。条件は、ちゃんと帰ってくること、とその日あった出来事を共有すること!これは約束だよ?」


「…。分かりました、義父さん、義母さん…。」


やはり、この二人は優しい。

また、この優しさに甘えてしまっている。

…いつか、何かしらの形で恩返しをしてやりたいな。


そして僕は、夕食を食べ自室に戻った。


その夜、僕はベッドに寝転がりながら今日を振り返る。


ダンジョンの中で、あの冷たい空気のことを思い出した。


あの懐かしい、という感覚。


あれはなんだったんだろう、と思いながら目を閉じた。



夢を見た。


石造りの城。耳慣れない言葉を話す人たち。足元で丸まっている何か。そして、空の色が、日本と少しだけ違った。



目が覚めたとき、窓の外は朝だった。


スマホに、ヒナからメッセージが来ていた。


《昨日の約束覚えているかな?冒険者登録!ついていくからね!でね、本題なんだけど、…第三層へ一緒に行ってくれないかな?》


1人で冒険者をやる予定だったんだけどなぁ。


僕はため息をついて、返信した。


《…いいですよ》


——なんか、また疲れそうだな。


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