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最終話 異世界魔王、日常を過ごす



「お兄ちゃん起きて! 二人とも来てるよ!」



 平日の朝。

 自室で寝ていた俺は、妹の声に起こされた。


「魔王君おはよー。朝はぐっすりさんだね」

「朝のお時間をお邪魔してしまい申し訳ありません」


 立て続けに二人が俺に挨拶をしてくる。

 二人とは、もちろん澄香と千歳のことだ。


 俺の配下である二人は、学校のある日は毎日のごとく俺に家に来ている。

 そこで朝食を食べるのはもはや日課となっていた。



「おはよう。二人とも、出迎えご苦労」


 澄香たちに声をかけ、一緒にリビングへと向かった。


「どういたしまして。いつもきちゃってごめんね。お詫びに今日は食材とか持ってきたから」


 澄香は袋に入れた食材を取り出す。


「毎日ごちそうしてもらっちゃってるからね。これお母さんが持っていきなさいって」


「魔王様。私も食材を持ってきました」


 千歳も澄香に続いて食材を取り出す。


 というわけで、今日は二人が持ってきたもので朝食だ。


 料理も澄香と千歳が一緒に作るということで、俺と愛華はリビングでできるのを待つ。



「こうして見ると、二人が朝ごはんを用意する奥さんみたいだよね」


 待っている間、料理をする澄香たちを見ながら愛華が告げる。



「よかったねえ、お兄ちゃん。通い妻が二人もできて」


「そういうのではなく、配下と言っているだろうが」


「あーはいはい。配下でも友達でもいいけど、もうこれ実質通い妻みたいなものでしょ」


「俺の妻を名乗るには日が浅いな」


 そう簡単に魔王の妻になれるとは思わないことだ。


「照れちゃってもー。お兄ちゃん、私はどっちがお義姉さんでもいいからね。なんなら両方でもいいよ?」


「愛華よ、法律というものは知っているか?」


「内縁の妻っていう制度が日本にあるんだよ」


「それは制度ではない」


 そもそも内縁の妻が二人などと聞いたことがない。



「な、何の話をしているのかな。魔王君たちは」


 話をしていたら、ちょうど澄香たちの料理ができたらしく、朝食を持ってきた。


「いまちょうど二人がお嫁さんに見えるな話をしていました!」


「え? お、お嫁さん? 魔王君の? そうかな、やっぱりそう見ちゃうかな。えへへ。そっかー見えちゃうか―」


 愛華の言葉に嬉しそうに笑顔がこぼれる澄香。

 両手を頬に当て、えへえへと笑っている。



「私が魔王様のお嫁さんなんて。そんな恐れ多いです。でも、魔王様のお子を産めるなら……。ああ、人生でこれ以上の幸福はありません――」


 千歳は恍惚とながら妄想の世界に旅立っていった。


「よかったね、お兄ちゃん。とっても愛されてて」


「くだらないことを言わずにさっさと朝食を食べるぞ。おい、お前ら二人も現実に戻ってこい」



 トリップしながら「ええー、そんな若奥様なんて」と言っている澄香と「子供は3……いえ4人」とつぶやいている千歳を呼び戻し、全員で朝食を食べた。



 そして、朝食を食べた後は家を出て学校へと向かう。

 俺たちは高校に、愛華は中学校に。


 途中までは通学路が同じなので、そこまでは4人だ。



「えいっ」


 俺の右側にいた澄香が腕に抱き着いてきた。


「えへへ。魔王君の腕にだきついちゃう」


「ず、ずるいです。澄香さん。わたしもっ」


 千歳が澄香に連れられて俺の左腕に抱き着く。

 ぎゅっと体を押し付けられているため、彼女の大きい胸の感触が腕に感じられた。



 右腕は澄香にとられ、左腕は千歳にとられている。

 歩きにくいことこの上ない。


「お前ら……。何をくだらないことをしている」


 配下の二人に、呆れながらそうつぶやいた。


 愛華はその光景を見て、笑って面白がっている。



「わっ、お兄ちゃんたら、まさに両手に華じゃん。じゃあ私は前から抱き着いちゃおっかな。ぎゅー」


 そう言い、愛華は正面から俺に抱き着いた。

 歩きにくいことこの上ない。



「お前たちは俺の登校の邪魔でもしたいのか?」


「そんなことないよっ。お兄ちゃんのことが好きなだけ」


「はい! 愛華ちゃんのおっしゃる通り、私も魔王様のことが大好きです!」


「えーっと、うん。私も否定はしない、かな」



 愛華はからかうように笑いながら、千歳は堂々と、澄香は少し照れつつそう告げる。



 まったく。

 くだらないことをする奴らだ。

 とはいえ、このくだらなさも嫌いではなくなってきている。


 これからも、妹や配下たちと楽しい日常を過ごしていくのだろう。

 それは前世の戦いに明け暮れた日々とは異なるものだが、悪くはなかった。





終わり







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