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第26話 異世界魔王、配下2人と朝に会う


 スマホを買った翌朝。



「おにいちゃああああん!」



 朝、眠っていた俺を妹の大声がたたき起こした。


「なにごとだ。この魔王の眠りを邪魔するとは……」


「なにごともなにも大事だよ! お兄ちゃん早く起きて!」


「俺は眠い。邪魔をするな」


 時計を見ると、まだ朝の7時だった。


「なんだまだ7時か。あと30分は寝れるな」


 再度布団にくるまり、俺は目をつむる。


「いやそれ昨日もやったでしょ! 早く起きて!」


 愛華は昨日と同じように布団を引っ張る。


「そもそも毎日、こんな朝早くから起こすな。俺は朝の時間は優雅に過ごしたいのだ」


「普通、朝優雅に過ごすっていうのは、朝早く起きることを言うんだよ!」


「それは凡百の人間にとっての優雅な朝だろう。人間の尺度で魔王を測るな」


「どこの誰の尺度から見ても、いまのお兄ちゃんは優雅なんじゃなくてだらしないって言うの! ほら早く起きる!」


「わかったわかった……。起きてやるから騒ぐのをやめろ。布団をひっぱるのもだ」



 この魔王たる俺の安眠を邪魔するとは。

 妹だから大目に見てやっている物を。

 他の人間だったら万死に値する愚行だぞ……。



「ほら起きてやったぞ。それで、なにが大変だというのだ? これでくだらない用事だというのなら、許さんからな」


「あっ、そうだ。お兄ちゃん大変なの! 家の前にかわいい女の人が来てるの!」


「なんだ。千歳か? それならば昨日も来たであろう。騒ぐほどのことではない」


「千歳さんだけじゃなくて、ほかにも一人来ているの! もうものっすごいかわいい人! あれだれ? 今度こそお兄ちゃんの彼女!?」


「だから俺に彼女はいない。いるのは配下だけだ」


「配下……もしかして新しいお兄ちゃんの中二仲間? いやでも、あんなにかわいくて中二な人がそう何人もいるわけ……」


「ひとまず家にあげたらどうだ。どうせ千歳もいるのだから、一人も二人も変わらんだろう」


「うん……。それじゃあ、家に呼ぶね」


 愛華は玄関に向かって行った。


 その隙に俺は寝間着から制服に着替え、リビングへとおもむく。


「魔王様。おはようございます!」

「魔王君おはよう!」


 そこにいたのは、千歳と澄香だった。


「なんだ。やはりお前らか」


「やはりっていうことは、こちらの美人さんとも知り合いってわけだね」


 俺の言葉に、愛華が反応する。


「自己紹介してやれ」


「「わかった」」


 愛華と澄香の台詞が被る。

 お互いに、自分に言われたものだとおもったらしい。


 二人して恥ずかしそうに顔を赤くしていた。


「あー、じゃあ私から言いますね。王真勇人の妹の愛華です。兄がいつもお世話になっております」


「私は魔王君――じゃなくて、王真君のクラスメイトの弓村澄香っていいます。王真君にはいつもお世話になっています。よろしくね」


「よろしくお願いします!」


 どうやら自己紹介が終わったが、重要なことを言っていないので、俺は口をはさむ。


「おい澄香。最も重要なことを忘れているぞ。お前はただのクラスメイトではなく、俺の配下だろう」


「あっ、えっ、うん。そうだけど……。あれ魔王のことって妹ちゃんの前で言ってもいいことなの?」


「当たり前だ。俺が魔王であることは、誰にも隠すことではない。この世に生きるあまねく全ての生命体に対して、俺が魔王であることを知らしめてもいいくらいだ」


「あー、うん。まあ、そうだよね。魔王君はそんな感じだよね……」


 あはは、と澄香は苦笑する。


「あの、弓村さん」


 その様子を見ていた愛華が澄香に話しかける。


「妹ちゃん。弓村じゃなくて澄香でいいよ」


「それなら私のことも愛華って呼んでください」


「了解しました! 愛華ちゃん!」


 びしっと澄香が笑顔で敬礼した。


「それじゃあ、澄香さん。澄香さんはその、お兄ちゃんの魔王とかのあれこれって」


「もちろん知ってるよ。私も魔王君って呼んでるし」


「あ、ああ知ってるんですね。っていうかもうそれあだ名みたいになってるんですね」


「うん。あと私も魔王君の配下ってことになってるんだ」


「それ! それですよ。その、澄香さんもそういう中二的な……?」


「中二? うーん。私は別にそういうのは……。配下になったのも魔王君に下の名前で呼んでほしいからだし」


「あっ。そうなんですね。あれ、それお兄ちゃん的にはありなの?」


「別に構わんぞ。どういう目論見で俺の配下になろうとも自由だ」



 前世のころは、それこそいろんな思惑で俺の配下になっていた。


 純粋に俺の強さを信奉するもの。

 魔王の配下となって箔をつけたいもの。

 俺の庇護を求めて配下になったもの。

 俺に敗北し命とひきかえに配下になったもの。

 魔王軍で暴れたいだけのもの。

 俺のことを殺したいから、寝首を掻くためにあえて俺の配下になったような奴もいた。


 配下になる理由など、それぞれの自由だ。

 立場に見合った働きをすればそれでいい。



「ふーん。お兄ちゃん的にはそれでオッケーなのか。っていうか澄香さん、下の名前で呼んでほしいって。あれそれもしかして」



「えっ! いやその、それはえっと……ちがくて……。クラスメイトだし、仲良くしたかっただけで……」


「ふーーーん」


 澄香の様子を見た愛華はクルリとこちらを向く。


「ねえお兄ちゃん。この人ほんとに彼女じゃないの?」


「だから彼女はいないと言ってるだろう」

 

「そ、そうだよ。彼女じゃないから。いやでも、そう見えちゃうかな……? えへへ。やっぱり、お似合いとかなのかな……!?」


 どこか嬉しそうに澄香は頬に手を当てていた。



「お兄ちゃんお兄ちゃん」



 愛華は俺に小さく耳打ちする。


「この人めっちゃかわいい! 顔も可愛いけど、中身も!」


「そうか。よかったな」


「も~。興味ないふりしちゃって~。お兄ちゃんもかわいい子すきなんでしょ? 私には隠し事できないからね!」


 ふふふ、と愛華は笑いつつ言葉を続ける。


「それで、お兄ちゃん的にはどっちが本命なの?」


「質問の意味が分からんのだが」


「澄香さんと千歳さんのどっちを狙っているのかってこと。あ、どっちも狙い? すっごく可愛い澄香さんと、胸が大きい千歳さん。確かに選べないよね。よりどりみどりだね~」


 愛華は、なぜか俺よりもテンション高かった。

 テンション高いまま話し続ける。


「私としては未来の義姉候補は何人いてもいいからね。楽しみにしているね!」


「そうか……。お前が楽しいなら、それでいいんじゃないか」



 こいつは本当、朝からテンション高いな。

 そう呆れたのだった。



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