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ゴスロリ貧乏貴族は天才発明家(男の娘)!? ~働きたくないので魔道具を作ったら、いつの間にか国家経済を支配していました~  作者: 星島新吾
第一章:黄金郷編

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おバカ貴族とエルドラゴ

「一攫千金の夢はここにある! 眠らない街エルドラゴ!」


 煌びやかなチラシを流し読みしながら、カサルは航空船のデッキに備え付けられたビーチチェアに仰向けになっていた。


 本日は晴天、雲一つない絶好の日焼け日和だ。昼食後、マリエたちは「お宝の匂いがする」と言って飛び立ってしまい、カサルはエルドラゴ上空でお留守番である。


(またしばらく眠るのも悪くないが……それももう飽きたな)


 かつて領地の民を飢えから救うため、独力で食料生産の巨大工場を開発し、運用・保守までこなした超人である。そんな回遊魚のごとき人間が、ただビーチチェアの上で時間を潰すなど、耐えられるわけがなかった。


「これより、オレの新しい暇つぶしを立案する。拍手!」


 ざわざわ、と風が彼の頬を撫でた。

 彼の暇つぶし宣言に共鳴するように、風はエルドラゴの街から様々な情報を運び、彼の耳に囁きかける。つるはしを振るう労働者の掛け声、香ばしい脂の匂い、果ては地下にある賭場の熱気まで、余すことなく。


「ほう……下界はそのようになっているか」


 こうして手に入れた情報から彼らの趣味嗜好を理解し、効率的な食料生産を……。そこまで思考が飛躍したところで、カサルはふと微笑を浮かべた。


(領地にいた時と我はまるで変わらんな)


 領地の地下空洞で稼働中の『カサルの無料食料配達サービス』と同じことをしようとして、彼はその手を止めた。


 ここは自分の領地ではない。別の暇つぶしを思考することにした。


(ここは確か鉱夫の多い街だったな。であるならば、延々と険しい坑道を歩き回っているのだろう。非効率極まりない……。そうさな、昇降の労力をゼロにする靴でも作ってやるとするか)


 新しい玩具を思いついたカサルは、早速船内の工房へと赴いた。


 マリエが金に糸目をつけず取り揃えた最新器具がズラリと並ぶ工房は、カサル自身がカスタマイズした、新たな聖域(サンクチュアリ)だった。


 既に図面やガラクタで足の踏み場もない状態ではあったものの、製作に十分なスペースは確保されている。彼は水着姿のまま作業台に向かうと、辺りのガラクタを見渡した。


(強化ゴム……魔獣の皮革……風属性の触媒……よし)


 脳内にある設計図通りに材料を加工するだけなので、製作は一瞬だった。

 機能自体の実装にかかった時間はわずか十五分。

 残りの三時間を費やして無駄に洗練されたデザインに仕上げると、外は既に夕刻の色を帯び始めていた。


「よし……風の魔法を練り込んだ『風の靴』の完成だ。さっそくテストに行くとするか」


 カサルは完成した革のブーツを手に、下界に降りようとして、自分の格好に気づく。まだ水着姿だ。


(おっと……いかん。危うくエルドラゴの住民を余すことなく悩殺するところであったわ)


 急いで船内で服を探すが、自分のドレスは洗濯中だ。


 仕方なく、三人の中で一番小柄なゾーイの部屋から白いワンピースを拝借し、水着の上からそれを着ると、エルドラゴへと降下した。


 ふわり、と街中に着地すると、周囲の人間は空から降ってきた少女に目を剥いた。


「あ、あんた大丈夫かい!?」


 出店をしている老婆が心配そうに声をかけるが、カサルは軽く頷き、辺りを見渡した。


『眠らない街』というだけあって、どこもギラギラとした明かりが彼を出迎えている。マリエから貰った小遣いを確認すると、カサルは食事よりも先に服屋へ突撃した。ゾーイの服では生地が安っぽすぎて肌に合わないからだ。


 一時間ほどして店から出てきたのは、エルドラゴ特有の宝石が散りばめられた、黒いレースのドレスに身を包んだ完璧な美少年だった。


 カサルはその新しい装いに満足すると、『風の靴』と蝙蝠傘を手に、噂の鉄板料理店へと向かった。


 鉄板料理の店に入ると、途端に焼けた肉と男たちの汗の匂いが鼻を突いた。


 中にいた客は全員ギョッと目を剥き、その場違いな存在感に圧倒されるようにして、身を縮める。

 頭を剃り上げた強面の店長は、そんな客たちの様子に気づき、カサルを睨みつけた。


「ここはあんたみたいなお嬢さんが来る店じゃあないぜ」


 鉄板の上では、脂の乗った内臓肉モツが香ばしく弾けている。


「友達からここが美味い店だと聞いたんだが。ドレスコードを間違えたか?」


「……っ!? お前、男なのか!?」


 店長の声を聞いて、カウンター席に座る客全員が水を吹き出しそうになった。


「ああ? どこをどう見ても男だろうが。それよりも、そこの店先に貼ってあったフルコース、あれを食べに来たのだ。席はまだあるか?」


 ふりふりのドレスを纏った美少年は、ショートヘアを靡かせ、宝石のような瞳を店長に向けた。


 店先には、大々的に『スタミナ満点! 内臓焼きフルコース』の文字。


 店長ゴードンは、自分が不用意に「フルコース」と書いてしまったばかりに、とんでもない客が来店したのだと悟り、背筋に冷たいものが走るのを感じた。


「ゴードンさん。俺の隣が空いてるよ」


 老いた炭鉱労働者の提案にカサルは頷き、店主の方を見た。店主ゴードンは迷いに迷った挙句、震える手でカサルを席へ案内した。


(き、貴族様だ……! どうする、味付けは薄くすべきか? 銀食器なんてうちにはねえぞ!? あんなおちょぼ口で、うちのゴムみたいなモツが噛み切れるのか!? もっと小さく切ってやらなきゃ喉に詰まらせちまう!)


 ゴードンの脳内はパニック寸前だったが、ここはエルドラゴ一の鉄板焼きの名店。店主にも意地があった。


 ゴードンはフライ返しを握りしめ、覚悟を決めたように鉄板と向かい合う。

 貴族の小僧だろうが何だろうが、俺の料理で黙らせてやる。

 その職人の誇りにかけて、彼はドレスを着た美少年に最高の一品を提供しに取り掛かった。

スローライフ……?


ではまた(p_-)ノシ

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