おバカ貴族と戦化粧
「それで……どうやって魔女になるの? 」
あまりに単純な疑問を、マリエはカサルに問いかけた。異端核に選ばれることで魔女へと至ることは理解したものの、具体的にその選定基準がどのようなものか、彼女には想像もつかないのだ。
「まあそうだな、いきなり核心に触れてやるのも悪くはないが、その前に一つ聞かせて貰おうか。お前はどういう魔女になりたいのだ。目標のようなものはあるのか? 」
カサルは、マリエが研究成果を踏み荒らさぬよう、地面に散らばった紙を片付けながら彼女に問いかける。
「特にないなぁ。なんとなぁーく魔法使いになれたらなぁって」
「……おぉ、呆れた女だな。国の保管庫に忍び込んでまで手に入れた異端核だというのに、肝心のその中身には興味が無かったというのか」
「うん。なんか『魔女に向けられる視線』が、良いなぁって。あ、それに私魔女ですって言えるのも、カッコイイよね」
ニコニコ話すマリエに、カサルは頭痛のする思いだったが、逆にそれは彼にとっては好都合だった。
「なるほど、な。それでは何か、手段や使える魔法に関係なく、【魔女】というカテゴリに入ることさえできれば目標は達成というわけだな」
「そうだね。魔法の杖を持って~、箒に乗って空をびゅーんって飛ぶんでしょ。気持ちいいだろうなぁ~」
「……色々ツッコミどころはあるが、第一に杖を持ったまま箒に乗ることはせん。馬の手綱を握ったまま鉛筆で紙に文字を書くようなものだからな。効率が悪い。事故のもとだ」
「事故とかあるんだ」
「棒に跨り空を飛ぶのだ。バランスを崩せばたとえ三十センチの高さからでも骨が折れる」
「むー……なんか現実を突きつけられてる気分……」
「紛れもない現実だ。───話が脱線した。魔女になる方法だが、10等級……つまり最下級の魔女になるなら、7割どうにかなる」
「本当に!? 私が3割の方っていうオチはないよね……」
「ああ。それはない。最下級の魔女になる条件は顔だからな」
「顔……? ブスはダメって言う……」
カサルはそこまで言ったマリエの頭にゲンコツを加えた。
「一時的に異端核が好む顔になれば、どんなに元が悪くとも適合することはできる。具体的に言うと”美人風”になればいい」
そしてその場合、顔が崩れれば魔法は使えなくなる。ということも付け加えてカサルは説明した。
「まあでも、ご存知の通り───私は美人ではあるよ 」
まるで既知の事実とでもいうように顔に手を当て決めポーズをとるマリエに、謙虚の二文字は存在しなかった。
「……ああ。まあその通りだが、異端核によって求める顔の条件が違う。今まで学園で何人か見てきたが、十等級の異端核は大体が垢ぬけた丸顔の少女を好む傾向にある」
「ふぅん……じゃあ私はダメじゃん」
しゅんとするマリエに、頭を掻くカサル。どうしてこんなことも予測出来ないのかと若干呆れてすらいた。
「まあ待て、早まるな。コレがどういうことか分からないのか。メイクで異端核は騙せるということだ。丸顔だろうとホームベース顔だろうと、鏡を見た時にそれっぽく映ればそれでいい」
「異端核って目でもついてるの? 」
「いいや。だが、こいつらは見えている。そして面白いのがこのメイクの種類によって、十等級の異端核でも共鳴する魔法が違うということだ」
「自分の使いたい魔法に合ったメイクをするってこと? 」
「まあ原理的にはな。しかし実際問題、メイクもその人間に似あう似合わないがある。雷系統の魔法は地雷メイクだが、それが似合わない人間も大勢いるからな。そう言うヤツらは雷系統に適合しない」
「私、地雷メイクできるよ」
そう言ってニマーと笑うマリエにカサルは溜息をつく。
「まあ待て、早まるなと再三にわたり言っているだろう。それ以上の異端核と適合するかも知れんというのに、十等級と適合するのは我が許さん。一度適合した異端核は取り外すのは莫大な金と命の危険が伴うのだぞ」
「えぇー……なんでも良いから早く魔女にして欲しいなぁ……」
「戯け。勿体ないという話だ。黙って最後まで我の話を聴け」
「しょうがない。聞いてあげるかー」
(コイツは本当に……)
そうカサルは思いつつも、自分の知識をひけらかすのは気分がいいので、しばらく好きに言わせておくことにした。
つまりこの世界では、厚化粧=武装に近いイメージで良いと思います。
化粧品は異端核との適合率を上げるための触媒として、ピンキリな値段で取引される……という設定まで持ち込むとストーリが進まなくなるので、ココに書き残しておきます……。いずれ使うかも知れないので。
ではまた(^_^)ノシ
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