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episode 10 再会と悲痛

黒塗りの車が、倉庫街の外れで静かに停車する。


潮の匂い。

遠くで響く貨物船の汽笛。

そして、異様なほど静かな建物。


劉が小さく呟く。


「……張や楊からの報告ありまして、2拠点とも夏華様はいらっしゃらないそうです。つまりこの建物に夏華様はいらっしゃる可能性が高いです」



「…ここに…夏(しあ)が」


凌雅はすぐにドアへ手をかけていた。

凌雅は静かに。しかしその瞳には熱い闘志と覚悟を燃やしていた。

凌雅が決心し扉に近づこうとした次の瞬間____



「今助けに行くぞ!!!!理世!!!!」


【バンッ!!】


濱田は勢いよく入口の扉を蹴り飛ばす。



「ッ!!?」



「なっ!!?」



あまりの濱田の破天荒ぶり凌雅と劉は唖然とした。

見張りの男が反応するより早く、江崎の拳が顔面に叩き込まれた。


鈍い音。

男が吹き飛ぶ。

思いの外、騒ぎになったことに焦る濱田。


「ヤッベぇ!!なんかめっちゃ目立っちまった」


「当たり前ですよ!敵の陣地に来てそんな堂々と入る人がありますか!?」


「アハハハハ、肝が座ってんな。なんか色々と考えてたのがバカらしくなってきたよ」


劉が吐き捨てるように言い、凌雅は濱田の肝の座り方に対して面白がり、濱田の肩に手を添える。


「さぁ、行こうか。誠くん」


濱田に対して下の名前で呼ぶ凌雅。

濱田は嬉しそうに「おう!」と行って一行は奥へ踏み込む。しばらくすると廊下の奥から複数の足音。


「侵入者だ!!」


「黎蓮会だ!!」


怒号。そして銃声。


【ダァン!!】


壁が砕ける。


凌雅は一切止まらない。

構成員が前に出るより先に敵の懐へ入り込み、男の腹へ膝を叩き込む。


「ぐぁっ……!!」


苦悶。


そのまま腕を掴み、壁へ叩きつけた。

骨の軋む音。

倒れた男を一瞥もせず、凌雅は先へ進む。


「夏(しあ)はどこだ」


冷たい声。

だが返答はない。

江崎が呆れ半分で笑う。


「相変わらず容赦ねぇな」


「急げ」


凌雅は短く言い捨てる。


その目だけが異様だった。


焦燥。

怒り。

恐怖。


それらを無理やり押し殺している。



地下へ続く階段。

そこへ降りようとした瞬間____


「おっと。ここから先は通行止めだ」


低い男の声。


現れたのは大柄の男だった。

顔の右目から左の頬にかけて傷があり、

太い腕がタトゥーで埋め尽くされている。


そして____その後ろには、拘束された理世がいた。


「っ……!!」


濱田の顔色が変わる。


「理世!!」


理世が顔を上げる。


「……兄貴!?」


掠れた声。

男は理世の髪を乱暴に掴み上げた。


「…ッ」



「動くなよ。妹の頭吹っ飛ばされたくなければ―」


言い終わる前だった。


【ドゴッ!!!】


濱田は男に殴りかかるが男に流され、みぞうちに

強烈なパンチを喰らう。


「っがぁ!?」


濱田の身体が地面に引き寄せられる。


「誠くん!?」


「なんてバカなことを!?」


「濱ちゃん!何してんだよ」



仲間の3人は濱田の考えなしの行動に、驚きと呆れの色を見せる。足元で疼くまる濱田を見て男はガハハと笑いながら話す。



「お前のその真っ直ぐな心意気は好きだ!気に入ったぞ!濱田誠!!!だがな、裏社会はそれだけじゃ通用しない」



そう言って男は濱田の頭を踏む。


「グッ…」


「お前に敬意を示して俺の名を教えてやろう。曹(ツァオ)明豪(ミンハオ)だ…。気に入った男を殺めるのはもったいないが、組織の命は絶対。さらばだ濱田誠!」


それから、明豪は濱田の頭に置いてある足を高く上げる。走っても間に合わない距離万事休す。

理世は助けに来た兄がボロボロになるのを目の前で泣きながら見つめる。



【パンッ】



明豪は倒れる。

彼の心臓を綺麗に貫く弾丸。

濱田は発砲音のした方を見るとライフルを持った男が立っていた。



「お待たせ、凌(りょう)ちゃん。とりあえず打ったけど、やっちゃって良かった??」


「あぁ、ナイスだ張」






「理世から手ぇ離せッ!!!」



鈍い衝突音。


しかし男もただでは倒れない。

濱田の腹へ膝蹴りを叩き込む。


「ぐっ……!」


「兄貴!!」


理世が叫ぶ。

その瞬間、凌雅が男の背後へ回り込んでいた。


男が気づいた時には遅い。


「邪魔だ」


冷え切った声。


【ゴキッ】


腕が逆方向へ折れる。


絶叫。


凌雅はそのまま男を床へ叩きつけた。


「ぎ……ぁ……!!」


さらに喉元を踏みつける。


「夏(シア)はどこだ」


男は脂汗を流しながら笑った。


「……もう……遅ぇよ……」


その言葉に。


凌雅の目が、凍る。


「どういう意味だ」


「霍さんが……連れてった……。あの女は特別商品だからな……」


空気が変わった。


殺気。


男が息を呑むほどの圧。


凌雅は男の胸ぐらを掴み上げる。


「どこへ行った」


「し、知らねぇ……!!本当だ……!!」


凌雅の拳が振り上がる。


しかしその時――


「凌雅!!」


濱田の声。


理世を拘束から解いた濱田が、苦しそうに言う。


「夏(シア)ちゃん……っ、別室に連れてかれたって……!」


理世も震えながら続ける。


「黒いコートの男が……連れてったの……!」


凌雅の顔に色がなくなる。

初めてだった。


あの男が、ここまで露骨に感情を崩すのは。


「……クソッ」


低い声。


握った拳が震えている。


間に合わなかったかもしれない。


その考えが脳裏をよぎる。


凌雅は奥歯を噛み締めた。


「劉!!出口を封鎖しろ!!港もだ!!」


「是!」


「江崎、地下を探れ!!」


「了解」


凌雅は乱暴に男を床へ捨てる。

そして、血の滲むほど拳を握った。


「おい!もうやめろ!こいつは…もう…」


誠は凌雅を止めると、殴られた男は冷たい床に倒れる。

凌雅も床に跪く。今までの彼とは想像もつかないほどの切に恋しい妻の名前を囁く。


(夏(シア)……)


その言葉は倉庫に消えていった。

だいぶ久しぶりの投稿になってもうた。

久しぶりに書いたらやっぱり楽しい♪

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