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解雇寸前だけど、推しに補佐されながら立ち直ります!  作者: kayako
第5章 こんなの「ハーレム」なんて言わない
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その7 彼が「彼」であることを


 「神城君って……

 本当に、男の子?」

 

 一瞬、沙織さん以外の全員がその場で固まってしまう。

 それでも彼女はじいっと悠季を凝視していた。本気で疑り深げに。

 みなと君さえも、彼女のこの一言には面食らっている。


「さ、沙織さん? 突然何を?」

「この前、神城君の真の姿見ちゃった時から思ってたんだけどさ。

 神城君って、男の子に化けた女の子なんじゃないの?

 男だと思うのは、擬態術のせいでそう見えるだけで――」


 その流れから当然、沙織さんは私を振り返る。


「葉子。あんたにはどう見えてるの?

 神城君、ちゃんと男の子なの?」

「そ、そりゃあ、勿論……」


 そう言いかけて、改めて私は悠季の姿を上から下まで、まじまじと見つめてしまっていた。

 いや、違う。絶対違う。

 悠季はちゃんと男のはずだ。何度か抱きついたことはあるけど、あの固い筋肉の感触は絶対に女性のそれでは……

 しかしそこまで考えて、改めて悠季を見つめると。



 なぁ、葉子。言えよ、言ってくれよ。俺は男だって。

 悠季のアメジストの瞳が、必死で私にそう訴えているのが手に取るように分かる。

 でも、そんな風に見つめられるたびに、逆に――


 自分の中での確証が揺らいでくる。

 ……あまりに可愛すぎて。


 よくよく考えてみたら、筋肉ムキムキの女性とかは似たような感触なのかも知れない。

 そもそも私、そんな判別が容易にできるほど人と触れ合ったことないし。スキンシップ苦手だし。

 悠季。もしかして貴方は、本当に……


 い、いやいやいやいや。

 駄目だ。他の誰が信じなくても、私だけは信じなきゃ。



「あの、沙織さん。

 ゲームの設定でもありましたよね? イーグルはちゃんと男性のシーフだって……」

「設定自体がフェイクってこともあるでしょ?

 だいたいあのゲーム、明らかに女性にしか見えない妖精や人魚だって、女性じゃなくて性別不明って定義されてたじゃない。色々アヤシイ」

「悠季には胸、ないですよ?

 声もちゃんと男性だし」

「胸のない女性だっていっぱいいるでしょ?

 それにあたしが聞く限り、神城君の声ってかなり高めだし。

 ハスキーボイスな女性なら、こういう声もあるんじゃないかなって思うレベル」


 必死で抗弁する私を、いとも簡単に論破していく沙織さん。

 意地悪なのか本気なのか、全然分からない。

 そして彼女は――とても意地悪く、微笑んだ。

 悪魔じゃないかというレベルの凶悪な笑みを唇に浮かべて。


「というわけで、葉子。

 あんた、確認しなさい」

「「へっ!!?」」


 同時に叫んでしまう私と悠季。

 え、確認って、わ、わ、私が、え?


「あ、あああああの沙織さん、確認って何を……」

「皆まで言わせないでよ。

 当然、神城君が男の子だってことを、よ」


 えっと、その、つまり……

 私が、悠季の、その……?

 頭が一瞬真っ白になり、顔が猛然と紅潮していくのが分かる。


「あ、えと、その、沙織さん。

 私、悠季の上半身なら何度か見たことありますし、それじゃダメですか……?」


 とはいえ、パーカーからちょっと覗く胸とか、お風呂上りにバスタオルをすっぽり被った姿とかばっかりで、そのまま素っ裸の上半身は記憶にない。

 私が見た、最も露出度が高い悠季といえば――

 この前のスレイヴ戦でのあの姿が限界だ。

 それを見抜かれたか、沙織さんは呆れたように告げてきた。


「葉子、くどい。

 胸の有無だけじゃ分からないって、さっき言ったでしょ?」


 降ってわいた、このとんでもない状況に――

 悠季も思わず、みなと君を睨む。


「おい……ハルマ」


 そ、そうだ。

 みなと君なら、きっと証明できるはず。だって同じ男子だし、向こうの世界ではきっと、同じお風呂に入ったことだって――

 私も悠季と同じく、助けを求めるようにみなと君を見つめてしまったが。


 そんな私たちの視線に気づいたか。

 みなと君はわざとらしく腕組みして考え込むポーズをとったと思ったら、糸目をさらに細くしてにっこり微笑んだ。


「ま……私なら兄さんの『証』を立証してさしあげることも、出来なくはないっスが」

「だ、だったら!」


 大嵐の中の一筋の光明とばかりに縋りつく私。

 しかしみなと君は全く笑顔を崩さず、親指と人差し指で綺麗な丸を作ってみせる。勿論、悠季に。


「兄さん。

 当然、頂くべきものは頂きますぜ♪」

「もういい! この妖怪金目小僧が!!」


 うん、知ってた。

 ついにブチキレたのか、耳の端まで真っ赤になった悠季が思わず自分のジーンズに手をかけている。

 あ、駄目、悠季、それは。


「わーったよ!

 お前らがそこまで言うなら、今すぐここで――」


 しかしそんな悠季を、素早く沙織さんが制した。


「ちょっと、神城君。

 あたしにまで見せるつもり?」


 もしや沙織さんって――

 人をからかう時だけ、とてつもなく冷静になるタイプか。


「こっちはそこまで求めてないし。

 そもそもあたしに見せたところで、証明にならないでしょ。

 だって、仮に貴方が女の子だとしても、擬態術で男に化けてたら、あたしには分からないじゃない」


 そうか、なるほど。

 擬態術がかかっている限り、悠季は沙織さんに自己の証明が出来ない。

 みなと君に証言をお願いすると、手数料がかかる。

 広瀬さんに聞いてみようかと、ちらっと考えたが――

 あの、人を刺すような視線で滅茶苦茶冷ややかに『大変失礼ですが、こちらも忙しいので』とか答えられたら嫌すぎる。


 つまり――

 残されたのは、私しかいないってことだね。

 うん……岩尾君の相談から、何でこんな話になったんだろう?


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