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【完結】へなちょこリリーの大戦争 ~暁の魔女と異界の絵師~  作者: 水樹みねあ
第9章 雪と氷と呪いの女王~ヴィルガー王国編
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第112話 回収終了

7つのルビーを回収します。

 ハイラの竜が尻尾を振り下ろし、湖の岸の岩を打ち砕いき、湖水が勢いよく流れ出した。とはいえ、湖の水を全部抜くには何日かかるか、わからない。

 まどろっこしいと、黒百合の女神が、

「我が命に従え」

 と地面に手をついた。すると、ぐらぐらと大地が揺れ、波だった湖水が、岸から一気に溢れ出した。みるみる湖から水が抜けていく。

「さあ、抜いてあげたわよ」


 真ん中まで歩いていけるようになり、体力を使わずに済む。一段、深くなった中央部の湖底は、青く浅い岸付近より水が冷たい。

 絶対に諦めない。

 もう一度、湖に潜って底を目指す。しかし、なかなかルビーは見つからない。


 最深部まで潜る前に、体が浮き上がってしまう。

「私も行こう」

「アイフィア、止めたほうがいい、結構冷たいし……」

「私の方が体が重い、底までつかなければルビーを探せないだろう?」

 メキラから竜のうろこを借りたと、アイフィアは笑った。


「……あなたの呪いを解こうとしてるのに、冷たさで死んだら元も子もない」

「カイン。体が辛いのは、同じだろう。唇の色が悪くなっている」

 さあ急ごう、とアイフィアが水に顔をつけた。


 アイフィアに引っ張られるように潜り、湖底までたどり着く。

 きらりと光ったルビーが、視界の端に入った。慌てて手を伸ばす。

(掴んだ……!)

 足に激痛が走った。

「カイン!!」

 痛みにパニックになった瞬間に、手首を掴まれる。

「……!!」

 アイフィアが手首を掴んだまま、水面まで引き上げてくれた。

「ぷは……っ!」

「しっかりしろ、もう大丈夫だ」

 右手にはルビーが握られている。足を攣って動揺したが、掴み取れたようだ。

「カイン、アイフィア!! 岸へ」

 ハイラが気づいて、肩を貸してくれた。ズボンを脱いで、まだ痛む足をメキラが揉んだ。

 慣れない潜水をしたアイフィアは息が苦しかったようで、呼吸が荒い。

「これはまずいな。メキラ、一度城へ戻ろう」

「ああ、そうしよう。服を乾かしたら、城へ戻ろう。ルビーはすべて回収できた」




---


 城へ戻り、回収したルビー7つを洗う。説得は俺たちにまかせろと、ハイラとメキラが胸を叩いた。


 黒百合の女神がもう一度呼びかけると、ラトナが姿を表した。

 

「姉様。死にたくないのに殺される、この者を可哀想だと思いません?」

「死にたくないのに殺された、私の前の持ち主は。妹よ、なぜ人間に肩入れする」

「私は友達を助けてあげたいだけよ。頼まれたから」

 メキラが、そっと横から口を挟んだ。

「……女神ラトナよ、申し上げます。元女王だったフレイアが、他者を呪い殺すという呪縛から開放するのは、悪いことではないでしょう。お力を貸していただけませんか」

とメキラ。

「お前は」

「私はメキラ。薬師如来に仕える者。この国の民ではございません」

 薬師如来は異国の神だと説明し、仲間のハイラも同じく、人間ではないと伝える。

「人が化け物になってしまったなら、戻してあげるのが優しさだと思います。が、思った以上に強力なのです」

「そうだろうな。フレイアには、私が力を貸したのだ。子の敵を取りたいと」

 フレイアは女神の力を、呪いに変えてしまったらしい。

「しかし、子ひとりに対して、女王フレイアは、もっと多くの者を殺しております。現ヴィルガー王の家系を根絶やしにすること、それが救いでしょうか。フレイアはそれで救われるでしょうか」

「私は関わりないことだ。望まれたから力を貸した」

 黒百合の女神と同じく、彼女たちは人間たちの善悪は気にしない。

 力を貸してくれと望めば協力はしてくれる。


「女神よ。関係ないということであれば、フレイアに与えた力を、取り消していただくことはできないでしょうか。ヴィルガー王家にかけられた呪いを取り除きたい」

 私からもお願いすると、アイフィアが頭を下げた。 


「……仕方ない。お前たちは力を示した。協力はしよう」




池の水全部抜くつもりでしたが、湖底が一段低くなっていたので、カインの潜ってもらいました。

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