7 嵐を告げる者
「ここは眺めが良い」
黒いタートルネックのカットソーとデニムパンツを身に着けた白髪の青年が、真名仮センタービルの屋上庭園から夜の街を見下ろしていた。
先のバニシア・シュロメンスの起こした事件の影響でビルの屋上はいまだに修復工中であり、関係者以外は立ち入り禁止となっている。青年は関係者ではないので、これは不法侵入ということになる。
「バニシアも愚かな奴だ。こんなところで捕まってしまうだなんて」
青年はバニシアとは旧知の仲であり、自分たちの計画に参加するようバニシアにも呼び掛けていた。しかし、自身の計画を優先させたバニシアは参加を固辞し、三ヵ月前に部下たちを引き攣れてテロ計画を実行に移し、そして失敗した。
『申し訳ないが。君達の作戦が実行される前に、世界は一変しているだろうさ』
決別の際にバニシアの残した言葉を思い出し、青年は苦笑した。世界は一変するどころか破壊の基盤となるはずだった真名仮市は平和そのもの。結果論ではあるがバニシアの発言はまぬけだったと感じる。
バニシアの計画を止めてくれた者達には感謝しなければいけない。彼の計画が成功していれば、青年たちの計画にも支障が出ていたに違いないからだ。
「久世灯夜か、早く会ってみたいものだ」
バニシアの計画を潰した人間の情報は青年の耳にも入っていた。灯夜の存在を知れたことに関しては、バニシアに感謝するべきなのもしれない。
出来れば今すぐにでも顔を拝んでみたいが、今回真名仮市を訪れた目的は作戦前の下調べのため。作戦前に怪しまれても困るので、灯夜と対峙するのは作戦本番までのお預けだ。
「どれだけの血が流れるか、見ものだな」
どの場所を狙えば効果的か、それを見定めるための下調べだ。日中にも様々な場所を回ってきたが、狙うならやはり病院や学校といった常に一定数の人間が存在する場所が無難だろう。頭数は揃っているので、複数の場所を同時に襲撃することも可能だ。
そして、襲撃のメイン会場となる場所は、
「やっぱりあそこだよね」
青年の視線の先にあるのは、オープンを間近に控えたアリーナ会場。オープンセレモニーには市長を始めとした街の有力者や多くの一般市民が参加する予定となっている。狙うのにこれほど適した場所は存在しないだろう。当日は警備も厳重だと思われるが望むところだ。
「本番が待ち遠しいな」
遠足前の小学生のように、青年の胸は高鳴っていた。
アリーナのオープンまであと一週間。
悪意という名の嵐は、確実にこの街へと近づいてきている。
2章と3章を繋ぐこのシリーズも今回で終了です。かなり時間がかかってしまい申し訳ありません。
3章のテーマは総力戦で、灯夜以外のキャラクターたちの戦闘シーンも多く描写する予定です。物語の転機となるような重要な章になるかと思います。
3章開始時期は今のところ未定ですが、決まりましたらあらすじの欄、活動報告等でお知らせいたします。
それでは皆様、これからも「ウィザード&ワーウルフ ~二つの最強を宿す者~ 」をよろしくお願いします。




