雨の日に4
「本音を言うと全員で行った方がいいが、暴れられても困る。悪いが俺は残ってこいつを見とく。最悪インへの脅しに使えるからな」
完全に俺を見ていなかった。何故なら刺されていてかつ動けば死ぬ可能性が上がる人間が動くとは思っていないからだ。
それは逆の立場でもそうだと思う。こんな状態で動くやつなんてそうはいない。
・・・・・・けど、俺には動かなきゃいけない理由がある。それは変わらない。その為の覚悟だってしてるかしてないかと言われたらしてる方に部類出来るほどしてる。
覚悟があるなら立て———強い心で痛みを恐怖を飲み込め・・・・・・!
右足を動かす。出血はない。左足を動かす。これも出血はない。左右の腕を動かす。出血はない。
つまりは胴だけ動かすと出血が酷くなるのかもしれない。いやナイフが刺さったままだから内臓損傷を目的にしてるのか。
ならやることは1つだ。
ナイフを右手で掴み素早く抜き取った。出血と鈍く強い痛みがマッサージチェアーの肩叩きの時のように連続でやってくる。
叫ぶな悲鳴をあげるな・・・! 耐えれば不意打ちが出来る。そこに十割を叩き込む。スザクをやれればヒナたちに向かおうとしている奴らの食い止めになる。
鈍い痛みは続いているが、今しかない。俺はナイフをスザクの目の前に落ちるように投げつつリミッター十割で飛びかかる。
走ったらばれるなら走らないで行けばいい。
ナイフが転がる。その音で俺が動いているのを察知したのだろう。即座に振り返り俺の渾身の左腕グーパンを回避する。
しかし———それも折り込み済みだ・・・・・・!
「ふんっ!—————— ぐっ!? 」
殴られたかのように顔の向きを右に変える。
確実に避けたのにと思っただろう。事実避けてはいる。じゃあなんでなのか。そんなの簡単だ。
「風圧か・・・・・・! 」
チャンスは今だ・・・! 右手のフルパワーのグーパンを入れ込む。
今度はちゃんと入った! 手応えがあった! 勝った!第3部完!
スザクが飛んでいく———筈だった。スザクは少し後ろに下がっただけで倒れこむこともなかった。つまりは・・・・・・。
「効いてない・・・・・・? 」
流石に十割だぞ? 脳震盪ぐらい起こしててもおかしく・・・・・・。
驚いてる余裕はない。この時点で俺の勝ち目はなくなかった。なら引き分けに追い込むしかない。
左手でスザクの首を掴むと室外機の上に乗らせつつビルの壁に押し付ける。
首を絞められてるからなのか声を出さないスザクだった。
「・・・・・・お前だけでも行かせない。勝てないなら封じてでも——————」
スザクの目つきが変わる。敵意とか殺意ではない別のものに。それに合わせてなにか気配がやってくる。振り返るとスザクの部下がナイフを片手に近づいて来ていた。
俺にとどめを刺すためだろう。状況からして助ける目的もあるだろうが・・・・・・。
だがそこで察した。俺が動いて避けたらスザクはどうなる?最悪俺のように・・・・・・いやスザクのように上手くナイフを刺せるとは思えない。つまりは死ぬ可能性が出てくる。
避けれない。元から避けれるほど体力なんて残っていなかったが、動けたとしても避けることは出来なかった。
俺はただそのナイフになすすべもなく首に刺されてスザクと入れ替わるように室外機の上に乗った。




