次の日〜6
「悪いけどやっぱ無理だね。だって君は日本人であって巨大人工浮島の人ではないでしょ?知ったところで何かが出来るわけでもないし、知ったことで帰れなくなる可能性だってあるんだ。だから君には言うつもりはないよ」
リーリャさんの言っているのは事実だ。知ってなんになる?大まかなことは知ってもまだ良いと思うが、内情を知ってそれで。
例えば巨大人工浮島はいつも敵対勢力同士の争いがあるとかは表に出ても特に問題はないと思う。ただ行かなくていいやってなるわけだし。
だけど、隠れて新たな戦略兵器を作っているなんて知ったらどうなる?他国にその情報が漏れでもしてみろ。表向きは国ではなく国連のものとなっている巨大人工浮島が国連の意志に反して、いや独立の準備をしていたとかだったら世界はどうみる?子供の多いここは戦場になってもおかしくない。
人工島なんてものに住んでる時点でどこの国かもわからない奴らの集まりなのだから。消されても何も文句は言えない。
「特になにかをしているわけじゃないけどね」
「そうですね。リーリャさんの言う通りです。けど一つだけ確認したいことがあるんです」
「詳しいことは言えないけど、それでもいい?」
「かまいません。俺って日本に帰れますか?インが前に言っていたんですけど、俺はシラヌイの案件で行方不明になっていると言っていたんです。となると、飛行機や船には乗れないんじゃないですか?そこがどうしても気になって」
「それだったら多分大丈夫かな。ナオフミ君が来た時に窓原さんからそれ用のものを今用意しているって言ってたから」
「それ用のもの?」
なにがあるんだろうか?俺が日本にコソコソと帰れますよ券とかか?そんな名前だったら冗談であってほしい。
リーリャさんはベッドに腰を下ろして話を続ける。俺は床に腰を下ろしたままだ。
「そこまではまだわからない。けど多分日本に合法的に帰れる物じゃないかな?君はここの人じゃないしね」
「本当に知らないんですか?リーリャさん。俺気になって暴れだしそうですよ」
「大丈夫その時は折ってでも止めるから」
口が笑ってるみたいですがねぇ・・・目が笑ってないっすよリーリャさん。
「嘘ですやりませんので許してください・・・」
「許して欲しかったら私の特訓をもっと厳しめに受けてもらうよ!」
俺を指差して条件を述べる。あれよりキツイものをやらせるのか?やめちくりー!死んでしまいます!あと指差さないで。
「やるとしても、まずは腹ごしらえだね。ここか食事場、どっちで食べる?こっちはどっちでも良いから」
ここだと食べ終わった後すぐにやらされそうなんだよな。昨日みたいに。そうなると休む時間が多少とはいえ貰える可能性のある後者を選んだ方が賢明か?
だが、そっちを選べば多分シラヌイやイサリビに会うことになるよなぁ・・・また暴力振られるのは嫌だし、もし迎撃案件にでもなったら次はない。
だからリーリャさんは選ばせているんだろうか?ならその行為に甘えよう。しっかり考えろ・・・選択肢は全てデメリットがある。前者は腹が痛くなりながらそれを耐えつつの筋トレ。もう一方は暴力案件。どちらがいいか・・・。
「リーリャさん、食事場の方でお願いします。昨日のこともありますが、あるからこそ少しでも誤解が解けるようにしていきたいんです」
「分かったよ。替えの服はそこのタンスの中に入ってるから好きなの使って。洗い物は横のかごに入れてくれればいいから。汗の付いた服のままだと気持ち悪いでしょ?」
だが、いきなり来た俺に合う服はどうやって集めたんだ?細かいことは気にしなくていいか。これも巨大人工浮島の秘密かもしれないし。
「それじゃ先に行ってるね」
そう言い残し、リーリャさんは部屋を出て行った。
———あのまま続けていたら俺が出て殺していたかもしれないね・・・———
温和か、久しぶりだな。ってどういう意味だ?そのままの意味でか?社会的にか?
———そのままの意味で、だね。流石に暴力は見逃せない。その身体は君だけのものじゃないんだから、そりゃあ当然でしょうが。それとも平凡くんはそれがいいと思うのかい?———
いや暴力に関してはちょっと気にくわないことではあるんだが、命の危機に陥っていたとはいえ、暴力を振っていた俺がそれを批判できる立場じゃないと思うんだ。
———けれど、リーリャさんに手を出したことはないのなら批判できると思うんだけどね———
温和の言うことは間違っていない。特に今回のなんて特にいわれのない暴力が飛んできたわけだ。多分普通なら温和の判断が1番正しいのだろう。けど逆に考えれば、俺の絶望病がどこから発症するのかを確認しようとしていた。とするのであれば、全然問題ないと思う。いやそれでも問題か・・・。
服を取り替えて廊下に出る。そこまでは良かったんだが、どっちに行けばいいんだ?それをリーリャさんに聞いていなかった。
———鉛筆とかそういう長いもので倒れた方向に行けばいいんじゃない?知らないけど———
んな無責任な。逆方向だったらどうするんだよ?
———聞かなかった平凡くんが悪いのだから俺はこれっぽっちも悪くない。それこそ俺が悪いというなら、責任転嫁もいいところだよ———
や、まあそうなんだが・・・。言い返す言葉が出てこない。他に対応策があるわけでもないので、温和の言った方法を使うか。
脚部ユニットからナイフを取り出してそれの持ち手部分を床に置き、刃先の方向に行くことにした。本当はペンとかそういうのの方が良いんだろうが、どこにあるか分からない以上手持ちの物で代用するしかないだろうし。
ナイフが倒れるとそれは斜め左上・・・・・・半分に分けると左側に入るので左の道を進むことにした。




