後日談で
足と膝と腕をしっかり地面につけて着地する。荷台の中のため穴からの光ぐらいしか光がなく、全体を見渡すにはもう少し時間がかかりそうだ。まずは退路の確認から始める。穴からそれほど離れていない荷台の出入り口には誰もいない。鍵はかけているだろうが、多分内側からでも開けられるようにはなっているはずだ。そうでないと、もし閉じ込められた時に扉が外側から開くまでずっと待たないと行けなくなる。その上俺たちが使っていたトラックと同様で冷蔵物や冷凍物まであるようだ。そんな状態で閉じ込められたら大変だ。
前方を見ると、はっきりとは見えないがBOWとの戦闘があるようには感じられる。一度出入り口に下がり目を慣れさせる。
———見えるか?見えないなら見えるようにしてやるが?———
そんなすぐに見えるようになるわけないだろ。誰のせいでこうなったと思ってるんですかね。俺は確かに助けたいと言ったがこんな状態じゃ何にもできないし。責任とって協力してくれ。
———なら絶望病は俺が発症しないように抑え込む。お前は先程のBOWの時のように恐れず行動しろ。数分程度なら俺でも薬ほどではないが押さえ込んでみよう———
身体が何故か軽くなり、周りがよく見えるようになった。だが代わりに先程入った穴の先から光が無くなり、代わりに何て言えばいいのか分からない状態になっていた。でも今そっちを気にする場合じゃない。
さてと、BOWはどこにいるんだ?トラックの荷台のほぼ全体が見えているのにもかかわらず、BOWが見当たらない。いるのはシラヌイとその後ろに寝込んでいる男とイサリビと思われる2人の前にインが立っていた。
イン達から俺が見えないのか、いや他に目を向けられないほど切迫した状況なのだろう。だがBOWがいないのにどうしてそんな体勢でいるのだろうか?
「イン何もいないのに何でそんなに怖い顔してんのさ」
「キュウ!?何でここに!?———ああっ、そこから動かないでよ!」
「動かないでと言われても、BOWはもういないじゃん。肩の力抜けよ」
俺だったらもうとっくの昔に戦闘体勢なんて解除してる。まあ、絶望病のおかげでそんな状況の体験はゲームのみだが。
「そういう意味じゃない!いいから動かないで!」
「理由が分からないと分かんねえよ。・・・・・・後ろには行っていいか?」
インは大きく溜息をつくとこちらを睨みつける。しかし、見ているのは確かに俺の方だが俺自身を見ているわけじゃない。
「何で自分から罠にはまりに来るかなぁ・・・まあこうなった以上トラックが僕たちの家に着くまで待って貰うけど」
ああいうのが罠を張ったりするものなのか?完全に人を殺すものにしか見えなかったが・・・・・・。
トラックがガクンッと揺れる。通常であれば気にしない程度の揺れだったが、今回の場合は見れる状況ではない。その上支えがなかったことで体勢を保てず少し足の位置をずらしてしまった。
「のわっ・・・・・・あっ———」
「キュウのバカヤロ———」
その瞬間足下が光り、熱を放ち熱い何かが身体の前方を襲いつつ俺を吹き飛ばした。吹き飛んだ先で頭をぶつけ意識も吹き飛ばされてしまった。
どれぐらい経ったんだろうか?意識は戻ったが身体が動かない。目も開かない。耳鳴りが酷い。まだトラックの中なのだろうか?けれども、床が柔らかい。コンクリートはこんなに柔らかいものだっけ?
『意識は戻ったようだな』
ん?インか?だがあいつこんな喋り方だったっけ?
『あいつと一緒にするな。よく言われるがな・・・・・・俺はスザクだ。インが言ってなかったか?』
うーむ・・・・・・覚えてない。あとよ、身体が動かないんだがどうすりゃいいんだ?
『俺は医者じゃないし、理系じゃないからな。金縛りとかなんじゃないか?しばらくすれば治るだろ』
そういうもんなのかねぇ。
『そう言う相手を不安にさせること言わないでよスザク。イン、君が動けないのはただ縛ってるだけさ』
『そっちの方が疑い掛けられそうだが・・・・・・』
何かの怪我で見えなくなってたり動けなくなった訳じゃなくて良かった。けどさ、何で縛る必要があるんだ?俺はそれほど寝相が悪い訳じゃないんだが。インは見たことあるだろ?まあ、あれはカプセル内だったって事もあるか。
腕と足そして目を塞いでいたものを取り外してもらう。肩を回したり足を伸ばしながら、インとスザクに感謝の言葉を返す。
「何で縛られたかは周りを見てごらん。大体分かるから。後はスザクに任せるよ」
周りには俺と同じように縛られている人達もいたが、いくら何でも人が多過ぎる。ベッドの数が多過ぎてベッドに横になれてない怪我人も多くいた。
「了ー解。日南休、まだ身体痛むなら言ってくれて構わない。いくら自分から突っ込んだとはいえ俺たちがしっかりしときゃ怪我するわけがなかった訳だしな」
「俺は大丈夫だ。けどさ、こんだけの人どうしたんだよ?何でこんなに怪我人がいるんだよ」
「全員テロでの犠牲者だよ。インがお前から頼まれていたのは、シラヌイの救助だ。他の奴が怪我したところで俺には関係がない。それに俺らは正義の味方じゃない。ただの人を殺すのが大好きな対話のしない殺人鬼さ。とは言え、人並みの感情は持ってるからこうして可能な限り救助した訳だが」
もし彼が冗談ではなく本気で殺人を好む人間だとしても差別するつもりはないし、それ以前に自分は手を出してなくて、他人に事を任せた以上俺に彼らを批判する権利はない。批判するとしたら、会って数分の人間に評価を下げるような事を言っていいのだろうか?
怪我人が並んだ廊下を抜けていくと、扉としてはかなり大きく、軽自動車ぐらいなら余裕で通れるほどの部屋の扉の前でスザクが止まり、横のキーボードに何かを打ち込む。パスワードか何かだろう。打ち終わるのと同時に扉が開き、スザクはその中に入っていった。俺も他にすることはないのでそれについて行く。部屋の中には窓原の他にその部下と思われる人達と、その周りのカプセルに俺が謎の声に導かれて撃退したBOWが入れられていた。
「親父どうだこいつの様子は、回収直後と変化は?」
「変化はないが、分かったことがある。細胞の崩壊具合からみて強制的に展開された様だ。強奪品だからな多少の劣化は避けられない。あと俺はお前の父親じゃない。後ろの日南休はもう大丈夫か?まだ痛むのならちゃんと報告してくれ。いくら掠れただけとはいえ、このBOWの火力は強大だ。変な痩せ我慢は自分の首を絞めることになるぞ」
「本当に大丈夫だ。問題ない。ちょっと聞きたいんだけどさ、何故回収したんだ?車内に残ってたのなら回収するのは分かるが、落ちたのを拾うとなるとポリスメンに見つかるんじゃないか?」
「一般人に回収が出来るとでも?状況上BOWをぶっ飛ばすのは必要だった。だからあの後回収にわざわざ戻ったんだよ」
「お疲れ様です。それでこのBOW、目が覚めてないか?目が開いてるように見えるけどさ」
「こいつに起きてる自覚はない。寝ている時に周りの音は聞こえるが、その音が何か分からない事があるか?」
「起きる時はきっちり起きるから分からないな。それとどういう関係が?」
「分からないのならこう言えばいいか。つまらない授業の時の状態だとなら分かりやすいか?」
学校に通学していた時は、本当に眠くなったのは学園祭の時に朝5時からあるから集まれと言われて結局自分しか来なかった時ぐらいだが、他のことで俺が経験した事でその内容に近いのといえば、その地域の記念日にテレビや現地で演説があった時か。
「なるほど分からん」
「そうか・・・ここにいても特にすること見ることもないだろう。ゲストカードが渡しておくからそれを使って時間でも潰してくれ」
一度だけこちらを見ると、自分の席の棚からカードを取り出し俺に向けて飛ばす。これがまた小さいので手の間に挟むことが出来ず身体に当たって、勢いが収まったのをもう一度挟んで財布に入れた。
「親父無理すんじゃねぇぞ」
「それはこちらの台詞だ」
おうさと言いながら反転し部屋を出て行くスザクのあとを追いかける様に俺も部屋を出た。




