聖者達part 代表さんに質問責め-2
「その国ってどれくらいの距離なんですか?」
普通科クラスに友人がいるのであろう女子がシータさんに質問していた。まぁ、私達も聞きたかった事なので本当に助かった。少なくとも暗からこの国に来てくれるという安易な考えは持てない。
「どの国に行くにも地図と馬車は必要になる距離です。一応基本セットに地図は入っているんですが………ステータスウィンドウの出し方を言うのを忘れていましたね……」
ステータスウィンドウなる存在はあの声の主も言っていた。しかし私達六人は私と響と鈴が性転換していた事もあって頭が混乱していたためだ。そのために異世界の人間であるユンクさんやシータさんと言葉が通じている事にもあまり疑問に感じていなかったのもそのせいだ。
「まぁ、ステータスウィンドウ……略してSWは出そうと念じながら手首をスナップさせてください。それだけですぐに呼び出せます。」
そう言われてスナップしてみると、確かにSWが出てきた。周りの皆も一緒にだったのでかなりの量のSWが飛び出す結果となっていた。
「職業は多少の適性は汲んでいますけど基本的にはランダムに決まっていますから……………。」
シータさんがそう言っていると、ホールの中に人が入ってきた。ユンクさんが後ろにいるので多分騎士団の人なのだろう。
「ま、一応転職の儀も用意してあるから気にしないでも良いって事だぜ!!」
若い赤色の髪の男がそう言うと、それに対抗して緑の髪の女の人が文句を言っていた。
「何を言っているの、貴方の転職の儀は剣士にしか転生しないではないですか。私の方が安定してます。」
「オメェーの方が安定しないだろうが!!ったくこんなのが団長務めるなんて、そこの女どもはどこまで酔ってんだか。」
「そういう貴方も団長としてはなってないじゃないですか。威厳すらなく部下と酔っぱらう貴方には言われたくないですね。」
「あぁん?やんのかコラ!!表出ろ!!」
「五月蠅いですが同意見です。一回表に出ましょうか。」
「………………お前等、喧嘩するのもいい加減にしろ!!」
「「くっそ覚えてろよ!!ユンクさんがいなかったらお前は潰してたからな!!」」
「…………お前等、本当にいい加減にしないか?」
登場と同時に喧嘩を始め、退場しようとしていた二人をユンクさんが抑えていた。
「まったく…………お前等の親も仲か悪かったがお前等も悪いのか………。本当に、お前等の遺伝子は何世代も前から変わらないな………。」
「zzzzz……………………あっ、アイツ等への説教……終わった?というか、大きな音を出すのもやめようよ……。二人もそんなに血の気が強いと軍の希望者全員私の団に引き込むからね。」
「お前の所が一番希望者少ないじゃねーか!!」
…………かなりの日常感溢れる騎士団長の人達がいる中に物凄い雰囲気を持つ人が話の中に入っていた。
「…………………転生者の中に商業に興味のある者はおらんか………?」
「……………いくら勇者が怖いからってお前自身が怖いほど筋肉をつけるなよ。勇者のせいで故郷が無くなった事は分かっているつもりだが……。」
「しかし………。それより、自己紹介しなくても良いのか?」
「っ……。そういえばそうだったな。私は終わっているからお前等はやっておけ。」
そう言うと喧嘩をしていた男の人が最初に手を挙げた。
「はいはーい!!最初は俺がやらせてもらうぜ!!」
「ま、まぁここの転生者達は全員未成年でついでに言うと魔族でもないからな。そこは気をつけて勧誘しろよ。」
「わーってるって。ったく赤ん坊の頃から見てきたってだけで今も心配されちゃ困るぜ、ユンクの旦那。」
「…………さっきはさん付けだったのにな。」
ユンクさんが言うと彼は苦笑いしていた。さらに目もそらしている。何かあったのだろうか?
「いやいや……………さすがに怒られたときには戻りますって。何回遊びとして騎士団演習に入り込んでは他の団員に怪我させて殴られたことか……。『威圧』も入って逃げられなかったのもありますけどね!!」
威圧というのはスキルなのだろう。あの風貌のユンクさんに叱られれば私ですら怖じ気づいてしまいそうだ。
「他にも色々とやっていたじゃないか。それより、これ以上、お前の痴態を晒さない方が身のためだと思うのだがな。」
確かに、これ以上聞いていたらこの人の名前を知る前に泣き虫団長と覚えてしまいそうだ。
「はぁ~、分かりました、分かりましたよ。ユンクの旦那」
「…………旦那と呼ばれるほどの年の差では無いと思うがな。」
「まぁまぁいいじゃん。今は同じ団長同士なんだからさ!」
「………まぁ、そうなんだがな。」
「それじゃ、改めましてジーブルフリーデ公国第二騎士団、エペルシュバート団長のアーサー・エペルシュバートだ。職業は雷剣士。まぁ、上位職ってわけ。年齢は26。まぁ親父が早めに引退して指南役に行ってしまったからな若いってわけ。俺の団は男性のみで構成されている。女性が苦手だったり恐怖症だったりするやつ専門だな。まぁ、同性愛ってわけじゃねぇけどな。軍入りしたいやつはよろしく!!」
アーサーさんが二カッと笑うと、ユンクさんが気付いたように口を開いた。
「そういえば、私の職業は紹介していなかったな。私の職業は剛騎士。アーサーの雷剣士と同じく、上位職だ。上位職とは下位職業……例えば剣士、格闘家や魔法使いなどの職業を極めたり、本人の適性によって変化しているのだ。」
団長さん達の紹介で私達は自分の職業を確認していないのだけど、どんな職業なのか楽しみになるのだった。