聖者達part 代表さんに質問責め-3
「では、次は私から自己紹介させてもらいますね。私はジーブルフリーデ公国第三騎士団アルクレーガン団長、ベル・アルクレーガンと申します。職業は氷弓師。私の団は全て女性で構成されています。そのため、男性が怖いなどの人はぜひ入団してください。また、入団していただかなくとも、お茶会や裁縫などの趣味の時間もありますので、気軽に我が団に遊びに来ると良いですよ。年はアーサーと同じ26ですね。魔族とのハーフでも何でもありませんから、皆さんとたいして変わりませんよ。私も若くして騎士団長を勤めていますが、その理由は…………。」
そう言いながら、ベルさんは一礼してアーサーさんを睨んだ。それに対してアーサーさんは当たり前のように睨み返していた。
「私の母は前団長だった時、ならず者の魔王討伐時にあなたを助けたために負った傷で団長を引退しました。アーサー、私は貴方が嫌いです。嫌いな理由がそれなのです。」
「五月蠅ぇな、ベル。俺はあの時に助けなんかいらなかったんだよ!!あの時の攻撃なんか充分防御できた!!お前の母親は無駄なことをしてるんだよ!!別に俺が助からなくてもアルクレーガンには何の損失もないだろうが!!」
アーサーさんがそう言うと、ベルさんはため息をついていた。そして、一瞬でアーサーさんの胸ぐらを掴んでいた。それはもう、怒りの表情を露わにしながらだった。
「あなたは、ほんっとうに自分の都合しか考えていませんね!!私は最初から死ぬまであなたの事が嫌いです!!アーサー!!私があなたが嫌いなのは、あなたの方が私の母に愛され、私の母に認められていて、私に一切私の実の母からの愛を受け取らせてくれなかったからです!!だから私はあなたのことが大嫌いなんです!!まだ嫌いな理由はあるんですよ!!」
「……………うるせぇんだよ。ベル。表出ろ。」
「望むところですね。これは決着をつけてからの方が良いですしね。日々の健康を怠り若いあなたに団長の座を譲らざるをえなくなった父親を持つあなたに負けるはずがありませんからね。」
「五月蠅ぇ。黙れよ、ベル。さっさと決着つけようか!!」
そう二人がいがみ合っていると、二人の頭上に盥が落ちてきた。盥の勢いが以外と強かったのか、二人は数秒間頭を抱えていた。
「まったく………こんなんじゃあ先が思いやられるよって………この台詞、もう五年ほど毎日言ってる気がするよ……」
寝ながら登場した人は、やれやれと肩をすくめていた。その横ではユンクさんがまた二人に拳骨を頭にしていた。
「アーサー!!ベル!!お前等はしばらくその場に座っとれ!!さっきはなにもスキルを使う気は無かったのだろうが、今回はより被害を出すような喧嘩だっただろうが!!ベルは戦闘以外では『瞬』を使うなと何度も叱っただろうが!!それにアーサーも応戦しようと武器を抜こうとするな!!」
その剣幕に二人はしょぼんとしてから着席した。アーサーは怠そうに胡座をかき、ベルは学校で習う集団行動の『腰を下ろして休め』と同じような手順で座った。
「ったく………どうしてエペルシュバート家とアルクレーガン家の一番上の子はいつもいつも仲が悪いかねぇ………しかも、今回はあんな事件があったから余計にさ。」
「………すみませんが、あなたは誰なのですか?それと、さっきの盥は何なのですか?」
「これはコミカルスキルの『ツッコミの盥』っていって痛みはあるけどメッてするなら丁度いいよ。」
副会長が真剣な顔で質問していた。確かにまだ自己紹介されていないので誰なのか分かっていないんだった。
改めて彼女の姿を見てみると、騎士団らしくないと思った。多分団長なのだろうけども、彼女の着ている服のモコモコ感からどうも騎士には見えないのだ。
「ゴメンゴメン!すっかり自己紹介やった気になっちゃってたよぉ~。ま、自己紹介は大事だしね!!それじゃ、私の自己紹介しちゃおうかな。私はジーブルフリーデ公国第四騎士団テンペスト団長のガンダレス。まぁ、気軽にガンさんって呼んでくれればいいかな。」
「………いや、ガンダレスよ。お前は自分の今の姿を見て、何とも思わないのか?公衆の前でなく、まだこの世界に来たばかりの転生者達なのだからまだマシだが………」
「?正装にしろって?全く………寝間着でもいーじゃないか。」
寝間着だったのか……。ならば、鎧でなくてモコモコした服でも納得できる。しかし、寝間着にしては眠りにくくないか?と思っていると、ガンさんが『転身』と呟いた。
すると、ガンさんのモコモコした服が私達の制服と似たようなセーラー服になっていた。
「はぁ~。ま、鎧じゃないだけましかな。私の職業は魔人形師だからむしろ手の繊細さを欠く手甲なんて使えないしね。」
そう言いながら、ガンさんは二体の普通サイズの人形を取り出し、宙に舞わせた。舞い踊った人形は私達転生者の中にいた二人の手の中に収まっていた。
「私の職業は人形師の上位職だからね……とりあえず後輩になりそうな人にはプレゼントをあげようと思ってさ。まぁ、どんな人でも私達テンペストのメンバーは大歓迎だからね」
人形を手にした二人はテンペストに入る気になったらしい。まぁ、物を使っての勧誘もありだよなぁ………。
ガンさんの自己紹介が終わると、一人の生徒が手を挙げた。
「ガンさんの下の名前って何ですか?」
すると、ガンさんは少しだけ微笑みながらこう言った。
「私には、下の名前は無いよ。」




