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世界中の能力を喰らい尽くす偽りの遊戯~とある終末の観測者より~  作者: 古谷 怜
第一部_第一章_リーン編

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第10話_盤外の奇策と目覚める代償

「おっしゃ、やるか。いいぜ。俺はいつでも準備ができている」

 レオンがリーンにそう言うと、レオンの体が徐々に浮かび上がっていた。

「ほんとに浮いてる。すげえ......」

「ちょっとあまり動かないでよ、慣れてないんだから、死にたいの?」

 リーンが集中しながらも慎重にレオンを壁よりも高いところまで移動していた。


 自分の意志とは無関係に、地面から足が離れる奇妙な感覚。

 数分前、呆然とする自分に言い放ったリーンの不敵な笑みが、脳裏をよぎった。


「いい。作戦を説明するわね。単純なことよ。レオンには空中散歩をしてもらうのよ

 壊せない壁や動く壁があるなら、それを飛び越えればいいだけよ。」

 リーンはレオンにそう言った。

「は?どういうことだよ。それがお前の秘密なのか」

 リーンは少し考えこう答えた。

「詳しいことは言えない。そして成功するかも分からない。ただ、隣の壁を一度だけなら、超えさせることはできると思うわ。」

 レオンが驚きつつも頷くとリーンは続けて説明した。

「そして国王は私たちを絶望させるためだけに出口の直前で壁を移動させた。。。と考えると、この壁の向こうに間違いなくゴールがあるのよ。なんと性格の悪いことかしらね。」

 レオンが頷きながら、加えてこうリーンに聞いた。

「確かにな。でもなんでリーンが直接行かないんだ?個別行動にして一人の時にやれば、俺にも秘密を言わなくても良かったんじゃないか」

 リーンはより小さい声になるように意識してこう答えた。

「それは......レオンと契約をするためといえばいいかしら。後は、この先に誰かいるんだもの。私が勝てるわけないじゃない。」

 そう言われ。レオンは耳を澄ました。


「守衛がつけている甲冑の音......確かに誰かいるな。しかも相当やると見た」

 レオンはそう言うと、リーンに向かってこう言った。

「よっしゃ!やってみっか!」


 レオンが浮いているのを、国王は唖然とした表情で見ていた。そして手に持っているワイングラスを床に落とした。

「なんだあれ。わしはあんな秘密を持っているなんて知らんぞ。」

 青ざめた表情の長女、長男に向かってそう言った。

「えっと......上を開けるように指示をしたのは父上だったはずですが......」

 そう長男が言うとワインボトルを投げつけた。

「そりゃそうじゃろ。上をふさがないなど、わしの楽しみがなくなるではないか。あんなのはズルじゃズルじゃ」

「おいおい、何が起こっているかは知らねえが、今更ズルっていうのはないぜ。だってよリーンは確認してたじゃねえか。出口にたどり着ければそれでのかってな。そんであんたは頷いた。それが全てだ」

 王の間の入り口を見るとそこには、一人で動いていたはずのカーターがそこにはいた。


「なんでここにいるかって?リーンがこの迷宮に飽きていたからさ。あいつはな、絶対に絶望なんかしねえ。何かあると思ったから俺は走って国王の顔を見に来たってわけだ。滑稽だな。ごーるした後でリーンのやつに伝えてやりてえ」

 笑っているカーターと顔が真っ赤になっている国王が一緒になって庭に目をやると、そこには出口はあったがレオンともう一人男がいた。


「はは。5年ぶりくらいの再会だろうね。なんせ彼はレオンを直接とらえて投獄した張本人だからな」

 長男がそう言うと、カーターは急いで迷宮へと戻っていった。

「たのむ。無事でいてくれ。」


 レオンは目の前にいる相手を見て驚いた。

「へえ、お前は5年前に俺を捕まえて投獄したやつじゃねえか。おもしれえ」

「おい。リーン大丈夫か?」

 そうレオンがリーンに問いかけた。

「ええ。何とかね。レオンあんた重いのよ......まあいいわ。早く相手を倒してゴールしてちょうだい。」

 リーンは、電池が切れたかのように土埃の舞う地面に突っ伏して倒れてしまった。


「わしは、エルドじゃ。レオン様を捕まえてからというものこの国の守衛では唯一自由に動くことを認められたんじゃ。わしを倒してここから抜けられるかのう......」

 エルドがそう言いながら、片手剣をレオンに振りかざした。

 レオンはまだ、浮遊という通常では考えられない動きをしたせいか逃げ回るのに必死だった。

(あのころから強さが変わってねえ......むしろ強くなってやがる)


「爺さん、必死だねえ。何か親父に弱みでも握られてんのか?」

 レオンはそう言いながら、エルドの剣を受け流し始めた。

(く......手がしびれやがる。どんなバカ力だよ......)


「ほう。5年前よりは成長しているということかのう」

 そう言うとレオンは持っていた大剣ではじくと反撃を始めた。

「俺も5年間何もしなかったわけではないんだぜ。爺さん。自分の律し方も含めてな。」

「ほう。それじゃあ、わしの本気の一太刀を受けてみるがいい。」


 そう言うと、エルドの剣から強い力を感じた瞬間、胸のあたりに強い痛みが走り、視界が赤く染まり、剣が体を通過するのが分かった。

「うあああああ。」

 レオンはそう言うと地面に倒れてしまった。

「これでさらばじゃ。」



 エルドが剣を突き立てようとした刹那、来なら即死のはずの傷が、覚醒したレオンの体内で凄まじい熱を帯び、強引に塞がっていき強力な力が宿り始めた。

「ぐああああああああああああああああああ!!」

 レオンは、黒かった目が真っ赤に染まり始め、突き立てようとした剣をはじくと、エルドに向かって無心で大剣を切りつけ始めた。

「ぐあああああああ」

(......あの日、王の間で見たあの紅い瞳だ。あの時、王宮の全員が凍り付いた理由が、今なら分かる......)

「ぐううううううううううう!」

 レオンが大剣を振り回し続けて、少しづつエルドが持っていた盾を壊し始めた。

「バキッ」

(盾が......)


 エルドは死を確信した。


 その瞬間、エルドは盾の隙間から見えたレオンの獣のような表情が化け物に見えていた。

「ま、参った。ここから出ていくがいい」

 エルドはそう言ったが、レオンの剣は止まることなく、エルドを突き刺そうとしていた。


「みゃう」

 レオンの剣の前に立ちはだかったのはいつの間にかリーンの腕の中から消えていたミアだった。


 続く

次回更新:7月22日18時30分

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