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第3話:秘密の香りと影の囁き

 霊蘭妃の容態は小康状態を保っていたものの、後宮には静かな緊張が漂っていた。

 小花シャオファは、朝の光が差し込む薄暗い廊下を、いつものように香の調合室へ向かっていた。


 部屋の隅に置かれた棚には、様々な草木の瓶が並ぶ。ひとつひとつの香料には、彼女なりの意味と用途があった。


「香りはただの飾りじゃない。人の心と体に影響を与える、立派な治療の道具……」


 そんな思いで、小花は新しい香の配合を試みていた。今回の調合は、妃の肺をさらに楽にするためのものだ。先日焚いた木の香りよりも、呼吸を深め、気を巡らせる効果があるという。



 調合の最中、ふと扉の隙間から声が聞こえた。誰かが話している。


「霊蘭妃の病気、やはり毒ではないか? あの下女が何かを知っているらしい」


「いや、あの小娘はただの調合師見習いだ。関わらせるな」


 声は二人の侍女のものだった。小花は耳を澄ませる。


「毒……?」


 心がざわつく。後宮の闇は、思ったよりも深いのかもしれない。



 香の調合を終えた小花は、慎重に試験用の小瓶に香を詰める。


 「これは後で、霊蘭妃の部屋にこっそり置いてみよう。少しでも症状が良くなれば……」


 だが、彼女の動きを見張る影もあった。



 その夜。霊蘭妃の部屋に、密かに香を焚いた。


 煙がゆらゆらと揺れ、柔らかな花の香りが部屋に満ちていく。妃の表情はわずかに穏やかになり、

 呼吸も落ち着いた。


 しかし、その背後で、黒衣の宦官が静かに動いていた。


「香の力もあなどれないな……」


 彼は影の中でつぶやき、何かを企てるように目を細めた。



 翌日。小花の元に帝の側近、宦官の李が再び訪れた。


「妃の容態が良くなっている。お前の働きは、間違いなく効果がある。だが、後宮には疑いと嫉妬が渦巻いている。動く際には慎重に動いた方がいい」


 李はそう告げると、意味深に微笑んだ。



 小花は深く息を吸い込み、決意を新たにした。


「私の香は、ただの香りじゃない。人を癒す力を持つ武器になる。誰かを助けるために――」


 後宮の闇と対峙しながら、小さな手で未来を紡いでいく。そんな彼女の物語は、まだ始まったばかりだった。

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