2度の敗北
ラームと談迷子とウィフは太閤の横穴の先を目指して、地下を進んでいる。
「お前なら、雑賀故我を置いて行くことに同意しないと思ったんだけどな。」
「死ぬつもりなら、そうでしょうけど。どちらかというと、私たちがいると邪魔みたいな印象でしたし、死ぬ人の眼ではなかったです。」
「直感ってやつ?そういうの確かに当たる時はあるな。でも。」
「でも?」
「あいつは何かやると、必ず事態がややこしくなるんだ。謀をしすぎでな。」
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雑賀故我はティの部隊が混乱し出したのを確認した。
「おい、撤退するぞ。こっちにくる前に。」
「何が来たのよ、応援?」
「久我天根だよ、知ってるだろ?俺を殺しに来たのさ。できれば別れて逃げたほうがいい、やつの狙いは仇の俺さ。」
ティの背後には強力な力を持った男がいた。
ティのように、神の兵器を持つわけではない。
しかし、その佇まいは何か普通の人間ではなかった。
むしろ、そのものが、神そのものに見えた。
兵士の一人が、その男に発砲する。
ティは止める間もなかった。
しかし、不思議である、発砲したはずが、発砲する前に兵士の機関銃は片腕と一緒に地面に落ちていた。
「手当をしてやれ。」
刀を振るっていたのだ。
血払いをして、ティの方に近づいてくる。
いや、ティを越えて先に進もうとしている。
今のティは神の兵器を持つ男だ、その超越者と錯覚させた感情が、感性が誤った選択をしてしまう。
「お前は誰だ。何をしている。」
声はやや震えている。
この間合いでは霊陽棒がいかに射程無限でも加害範囲である。
「俺?俺は。久我流の久我天根だ、昔馴染みの知り合いに用があってきた。教えてくれると助かる、どこにいるか知らないか?」
誰のことを言ってるのかわからないのに、ティが答えられるわけもない。
邪魔をするなという意味であろう。
ティは知っている。久我流とは現代では最強の傭兵のチーム。
久我幻魔がリーダーのはず、久我天根?だれだ?
問題はこの男が、ラームや談迷子に組するかどうかである。その可能性がある限り、ここで見逃すわけにはいかない。
天根はティ達の部隊をすり抜けるように、まるで存在しないように進んでいく。
歩きながらどこかへ、通信を始めた。
「おい、バカウサギこの座標にいるんじゃないのか?」
『バカか、彫刻じゃないんだ、人間だったら動くだろ、そっからは自分で探せ馬鹿!そして迷ってのたれ死ね!』
すぐに通話は切られてしまったようだ。
ティはその間もずっと霊陽棒をチャージしていた。
一撃で、不意打ちで、一瞬で仕留めないと負けてしまう。
細心の注意を払っている。
まだ、久我天根は納刀していない。
納刀して、間合いの外に出て、意識が逸れた瞬間を狙うのだ。
ティの眉間には脂汗が出ていた。
震えてすらいた。
「おい」
しかし、ティはここで久我天根を殺害することを決めたのだ。
「おい」
放置するにはあまりにも強すぎる、危険すぎる、他の道士連の兵士では敵わない。
「おい、聞こえてなかったか?」
久我天根の声は不思議である、遠くなのに、小さい声なのにはっきりと聞こえる。
「そこの兵士を助けてやれと言ったんだ。でなければもう一つ腕が落ちるぞ。」
ティの考えは全て見透かされていた。
しかし、すでに霊陽棒のエネルギーはフルにチャージされている。
今は太極図も存在しない阻害するものは何もない。
地下空間を全て覆うほどの大きさで振り上げて、振り下ろした。
それは一瞬の出来事である。
全てを天根の眼は、鼻は、口は観測していた。
刹那でこれは見えない攻撃であると判断する。
逃げる空間などない。敵は間合いの外だ。
なら、手持ちの刀で迎撃するしかない。
見えない空間を袈裟懸けに切り裂いた。
柳生の一刀石を切り裂いた斬撃である。
恐ろしいことだ。
恐ろしいことに、霊陽棒の影が切断されたのである。
ティはその状況に驚く暇もない。なぜなら、ドンッという音がし、ティの肩を銃弾がかすめたのだ。
天根は背中のライフルでティを狙撃していた。
反撃が早すぎて霊陽棒が攻撃から防御にスイッチするのも間に合わなかった。
攻撃を凌いだ上で、すぐに反撃し、その上で正確にこちらに当ててくる天根の技量にティの血の気が引いていく。
華山道士連も一流の傭兵の集団である。
しかし、次元が違いすぎるのだ。
狙撃を外したのには理由があった、天根の身は無事であったが、悲惨したエネルギーが拡散したのでグラヴィトロンの影響を受けて膝がふらついた。
ここで追撃をしていればティは久我天根を倒せていたかもしれない。
それをしなかったのは恐怖が勝ったからだ。
いや、多分恐怖の通りに逃げたのは正解である、ティは久我天根には勝てないだろう。
ティはとうとう兵士達を置いて逃げ出してしまった。
兵士達は逃げ出す隊長を見て、少し動揺したが、すこし経ってティを追いかけて去っていった。
天根が通信を始めた。
「おい、バカウサギ、お前と雷蔵さんはどこにいる?」
『バカはお前だろ、カス!雷蔵は一緒にいる、お前より二回層上だ。』
「なら、治療を頼みたい。グラヴィトロンの影響を受けた。」
『・・・きついのか?』
天根がウサギに泣き言をいうことなんて今まではなかった。
それに対する天根の回答はなかった。
『わかった、少し時間はかかるが、除染はできると思う。行くまでに死んでなければ、な。』
「ああ、頼む。」
ウサギと雷蔵もティに出くわす可能性がある。
しかし、その事を天根が伝えないのは余裕がないことよりも、雷蔵が負けるわけがないという信用からだった。
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ティは久我天根から逃げ出している。
元きた道を必死で逃げる。
遠くに二人の人影があった。
一人は耳が生えている、ウサギ?の耳か?
一人は190センチはある大男だった。
ティは警戒するも、霊陽棒で蹴散らそうとした。
横に一線すると、大男は、雷蔵は、見えない一撃を身を低くしてかわす。
次に縦の一撃を放つが、それもかわされて。
ついには当身を鳩尾に入れられる。
はじめての経験である、人に殴られて体が宙に一瞬浮いた。
痛いなんてものではない。この男の拳が自分一人を支えているのだ。
それほどの一撃を受けて、ティは気絶してしまう。
雷蔵は気絶して倒れる前にティを掴んで優しく地面に寝かした。
ティを放置して、雷蔵とウサギはどこかへ行ってしまった。
ティとして幸いだったのは霊陽棒を回収されなかったこと、トドメをさされなかったことである。
その理由としては実力差がありすぎたことであった。
このあと道士連の兵士に救助されたが2時間はティは目覚めることはなかった。




