第9話 強力!半竜娘は心強い? その2
異世界に来て早々、おっかない生き物に遭遇してしまった。…生きてることに感謝。
エリルの尻尾ビンタ?で一発KO。あんな大柄な生き物を一撃で倒してしまうなんて…さすが半竜の子だ。神社でエリルに吹っ飛ばされた時、骨折しなかったけど、奇跡だったんだな…。
何はともあれ、良かった良かった…。
「グワァァァーー!!」
…と思ったら、なんと、魔物が起き上がったのだ!しぶとい!嫌だもう!
「しつこいですね…」
エリルは魔物を睨むと、その場に立ち止まったまま口を大きく開けた。
「ハアァァァァァ!!」
エリルの勇ましい唸り声が響き渡る。魔物はエリルが何をするのかも知らずに突っ込んでくる。…死んだな。
「アァァーーー!!」
次の瞬間、咆哮と共にエリルの口から強烈な眩しさのレーザーが放たれた。レーザーは瞬く間に魔物を貫き、跡形も無く消滅させてしまった。…さすがの一言。
ドガアァァン!!
直後、耳をつんざくような爆発音が響き渡った。え…?今度は何…?
ゴオォォォオオ…!!
見ると、木が大炎上していた。
「しまった…!ブレスが木に…!」
エリルがめちゃくちゃ焦ってる…。どうやら、エリルが口から吐いたレーザーは魔物を消滅させた後、そのまま後方の木に直撃してしまったようだ。そう言えば…コントロールが効かないって言ってたな。はは…。
「このままだと火が燃え広がるぞ!」
やばい。どうしよう…。木が密集している環境だと火が燃え広がりやすい。…そうだ。火が燃え移らないようにすればいいんだ。燃えている木に近接している枝を切り落とせば…!
だが、今手元にあるのは神様からもらった拳銃だけだ。あぁ…やっぱり剣にしておけば……いや、どうせ燃えている木に近付くなんてできないし、枝の位置も高くて届かないだろう。
「くそ…!神様頼む…!」
一か八か…拳銃を取り出して構えた。狙いは今にも燃え移ろうとしている木の枝だ。…そういや、拳銃って安全装置あるよな。これ、どこにあるんだ…?それらしきものが無いけど…。
いや、四の五の言ってられない!今すぐにでも引き金を引かなくては!
バァン!!
俺が引き金を引いた直後、銃口から飛び出したのは銃弾―――ではなく、金色に輝く光球だった。
「あれは…!?」
エリルが驚きの表情を見せている。撃った本人も驚いている…。
光球は猛スピードでターゲットである枝に接近し、見事命中。カッターのような鋭い切れ味で木の枝を切り落とした。
俺はすかさず逆側の近接している枝にたまを撃ち込んだ。そちらも見事命中。枝が切り落とされ、燃えている木と他の木を離すことができた。今は風もないし、葉が生い茂っている時期は木の中に水分が多いから、すぐに燃え移ることも無い。
あとは、無事に鎮火するのを見守るのみ…。
ポタ…ポタ…
その時、上から雨粒が一滴二滴と落ちてきた。上を見上げると、いつの間にか上空に雨雲がかかっていた。さっきまで雲一つない青空だったのに…。
ザァァーーー…
瞬く間に本降りの雨になり、俺とエリルは木の下に隠れて様子を見守る。雨が叩き付け、火の勢いを見る見る弱めていく。そして、あっという間に赤い炎は消えてなくなり、見事に鎮火してしまった。
さらに、お役御免と言わんばかりに雨がピタリと止んで、空が明るくなった。…なんて都合がいいんだ。
ヒラヒラヒラ…
すると、上から一枚の紙がゆっくりと舞いながら落ちてきた。その紙を掴んでみると、なにやら文字が書かれていた。…この字体、さっき見たような。
“なかなか機転が利くじゃない!さすがわたしが見込んだ子!とは言っても、彼女の力は危なっかしいから、“火消し役”が必要だねー。この森を東に抜けたところに町があるから、そこで水の魔女を仲間にしてね!神より”
…と書かれていた。なんだこの神様。見てるならもっと早く助けろよ。っていうか、とっとと俺を元の世界に戻してくれよ。実は戻し方知ってるだろこの神様!
俺は神様に不満を募らせるのであった。