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方向音痴の半竜娘は旅がしたい  作者: 揚げパン大陸
序章 こんにちは半竜娘さん。こんにちは異世界
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第7話 断念!世の中諦めが肝心

 長かったような短かったような眠りから覚め、俺はまぶたを開けた。視界に映ったのは気持ちいいくらい青い空。地面に寝そべって仰向けになっているようだが、やけに頭の位置が高い感じがする。


「あっ!目が覚めました!」


 声が聞こえたのと同時に、視界に至近距離でエリルの顔が映った。今の状況を把握すべく、頭を動かして視線を移していく…。視界に映ったのはエリルの体。

 なるほど、膝枕されているようだ。


「お、おはよう!エリル!」


 俺は途端に恥ずかしくなってガバッと起き上がってしまった。起き上がったら起き上がったで、もう少し膝枕されてても良かったなと後悔。

 …まぁ、それはさておき、俺達はどうやら森の中にいるようだ。花滝山の池の周りの景色とほぼほぼ変わらないが、池は見当たらない。夢の中で出逢った神様は…異世界に来たって言っていたが…。


「ここ…異世界…?」


「そうです!」


 元気な声が返ってきた。……マジか。


「いやいや、なんでそう言い切れる!?」


 俺はエリルに根拠を問い詰める。辺りの景色を見渡しても、花滝山の中の景色と変わらない。異世界と言われて信じる方が難しい話だ。そうだ。エリルは俺を騙してるんだろう。


「さっきここを通りかかった妖精さんに訊いたんです。ここはアレイアですか?って。そしたら、そうだって」


 妖精さん?そんな名前の人がいるのか。……いや、妖精さん?ん?


「妖精なんているわけないだろ!」


 思わずツッコミを入れてしまった。メルヘンじゃないんだから妖精なんて実在しない。……あれ、でもドラゴンはいるんだよな。


「います!」


 エリルも負けじと反論する。その表情は嘘じゃないと強く訴えかけている。


「あっ!ほらっ!あそこに!」


 不意にエリルが上の方を指さしたので、その方向を見上げると、ヒラヒラと半透明の羽を広げて飛んでいる小人っぽい姿が。…おぉ、あれは確かに妖精っぽい。

 いやいや違う!!何かの間違いだ!!信じないぞ!!俺は信じないぞ!!そうだ…!スマホで場所を確認しよう。どうせ花滝山の奥にでもいるんだろう。

 早速スマホを取りだし、マップを開こうとする…が、画面が変わらない。ずっと通信中になっている。……よく見ると圏外と表示されていることに気付いた。

 どうせ山奥で電波が届かないだけだと思うが、これでは今どこにいるのかわからない。…困った。周りを見渡しても森と青い空だけで、目印になるものが一切ない。


 ドサッ…!


 突如、上空から何かが落ちてきた。……箱だ。ピンク色の包み紙で覆われた箱が落ちている。見た目クリスマスプレゼントみたいだが、そんな時期でもシチュエーションでもない。

 怪しい…。見るからに怪しい…が、なんだか気になってしまい、手に取って包み紙を剥がし、箱を開けた。


「な、何ですかその物騒なものは!?」


 後ろから顔を覗かせたエリルが箱の中身を見てギョッとする。俺もギョッとした。…別の意味で。

 箱には黒い拳銃が入っていたのだ。エリルは恐らく拳銃というものを見たことが無いので、この厳つい見た目に動揺しているのだろう。俺の動揺はそうじゃない。この拳銃は間違いなく、夢の中で神様が俺に手渡した武器だ。


「…これは何だ?」


 拳銃と一緒に紙切れが入っていたので取り出してみる――と、手紙だった。


“あきらめが悪いね。ここは異世界のアレイア国だよ。日本なんてないよ。大事なことなので2回書きます。ここは異世界だからね!神より”


 ――手紙にはこう書かれていた。俺はそっと拳銃をブレザーの内ポケットに入れ、エリルの方に顔を向けた。


「エリル、ここはアレイアなんだよな?」


「信じてくれるんですね!そうです!」


 エリルは表情を明るくして頷いた。


「エリルがアレイアから世界を飛び越えた時、この場所にいたのか?」


「いえ…、ここには初めてきました」


「どこから世界を飛び越えたんだ?」


「えっと……わかりません」


 はい、さようなら…。


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