第6話 無念!神様からのプレゼント
目が覚めると、俺は真っ白な世界に1人佇んでいた。さっきまで池のほとりにいたはずなのに……一体ここはどこだろう。エリルの姿も見当たらない。周りを見渡しても、このホワイトアウトな空間にいるのは俺ただ1人だ。
「はいはーい!そこのおにーさん!」
突然、陽気そうな女性の声が聞こえてきた。エリルじゃないようだが、他にも誰かいるのか?
すぐに声のした方に顔を向けると、いつの間にか1人の女性が傍に立っていた。腰まで届く栗色の長い髪を携え、眩しく輝く純白のドレスを身に纏っている。顏も整っていてきれいだ。それだけなら、すごく美しい女性だと見惚れるのだが……、頭の上に金色の輪っかが浮いているのだ…。
「え…どちらさんですか…?」
「ん?わたし?神でーす!」
何も躊躇せず、陽気な声でサラッと素性を明かした。これではただの悪ふざけにしか思えない。こんな性格の軽そうな神様なんているのか?…とはいえ、下手に失礼なことを言って後で天罰とかされたら嫌だし、ここは素直に信じようか。
「あの…神様、俺は一体どうなっちゃったんでしょうか?」
エリルがすんごいレーザーを池にぶっ放して、噴き上がった水をもろに被ったところまで覚えているが…。まさか…死んだ?いや…あれで死ぬなんて大げさか。
「えっとねー、異世界に来ましたー。ぱちぱちー」
自称神様は嬉しそうに拍手をしている。…あぁ、そうかそうか。異世界に来たのか。異世界ねぇ。
「うそぉぉーーー!?俺まで世界を飛び越えちゃったのぉーー!?まじかよぉぉーー!!」
俺は両手で顔を押さえて天を仰ぐ。すぐそばに神様がいるけど。……いや、本当にどうすんの。もうわからん。いっそ死んでしまおうか…。
「そんなに悲観することないよー。こっちはこっちで楽しいから!神であるわたしが保障するよ!」
自称神様はキラキラスマイルで親指を立てる。…いや、あんたが言うと胡散臭いわ!そもそも、楽しいとかそんなことはどうでもいい。右も左もわからない世界で生きていくなんてできるわけがない。
「っていうか、神様なら俺を元の世界に戻してくださいよ!」
俺は自称神様…いや、神様に懇願する。神様はなんでもできる!だから俺を元の世界に戻すことだって朝飯前のはずだ!
「…それはできない」
しかし、返ってきたのは無情にも不可能という答えだった。俺は追い詰められたかのように言葉を失う。…もう、だめだ。
「わたしはあくまでこの世界の神だから、きみの世界には干渉できないんだ」
「そんな…」
俺は絶望に打ちひしがれ、地面に膝をつく。終わった…。マジに終わった。さようなら…父さん、母さん。俺はもう…そっちには戻れない。
……いや、待てよ?よくよく考えたら、エリルはこの世界から俺のいた世界に来ている。そうだ。彼女に訊けばいいんだ。どうやって世界を飛び越えたかを。
「エリルは!?半竜の女の子がいなかったですか!?」
俺は神様にエリルの居場所を尋ねるが、神様は片手を前に出して話を中断させた。
「その前に、きみにプレゼントをあげよう!ただし、どちらか1つだよー」
神様はそう言って両手を横に広げる。…と、右手には剣、左手には拳銃が発現したのだ。
「護身用に武器は必要だと思うから、初心者でも扱いやすいこの2つをチョイスしてみたよ。さぁ、どっちを選ぶ?」
…マジかよ。武器必要なのかよ。…確かに、ドラゴンがいる世界だしな。よくわからん強い生き物がゴロゴロいそう…。
それにしてもどっちにしよう…。もちろんどっちも扱うどころか触ったことすらないから感覚がわからん。…でも、剣だと必然的に斬るわけだから…嫌だな。よし、銃にしよう。
「銃で!」
「銃ね。はい、あげる。じゃあ、グッドラック~」
神様は俺に拳銃を手渡すと、手を振りながら静かに離れていく。…今更だけど、ファンタジーの世界に拳銃って似合わないかな。……いや待てよ?
そもそもこの世界って拳銃や銃弾って流通してるのか…?これがあくまで神様が創ったものだとしたら…。
「いや!!待って!!やっぱ剣で!!」
俺は慌てて離れていく神様を呼び止めるが、神様は笑顔で拒否した。
「だめでーす。変更は利きませーん。じゃねー」
「そんな!頼みますって!!あぁ…!!」
俺の声もむなしく、神様は白い世界の中へ消えてしまった…。




