第61話 指令? 炎の魔女を仲間にせよ! その6
狼男?達の足は素早く、見失わないようにするのがやっとなくらいだった。…ていうか、なんで誘拐?それも日中に堂々と…。
いろいろ突っ込みたいポイントはあるものの、今はとにかくドリーを助けないといけない。ミストが道端にある消火用の水を使ってドリーを抱えている男の足に巻き付けようと試みるも、水の量が少なくてあまり遠くまで届かないのと、タイミング悪く角を曲がられたりしてなかなかうまくいかない。
結局、俺達は町外れまでやってきてしまった。そこには一軒だけ平屋の建物が建っており、男たちはその敷地内へと入っていった。俺達は敷地の入口から中の様子をこっそりと覗く。
建物の前の広場には狼男の3人と、親分っぽい立派なひげを生やしたこれまた狼男の姿が…。
「あれ…狼男か何か…?」
「あれは獣人。まぁエリルと似たようなもんよ」
俺の問いかけにクレアがそう答えた。…なるほど、狼と人間のハーフということか。まぁ確かに、ドラゴンと人間のハーフがいるくらいだから、その狼バージョンが居ても不思議じゃない。
「あわわわわわ…!」
ルルはまたもや通常モードでおどおどしている…。あんまりおどおどされると気付かれそうで嫌だな…。――なんて思っていると
「外で覗いているやつら…、バレバレだぞ」
なんと親分狼男がこちらを見てそう言ってきたのだ。えぇ…!?もうバレてるの…!?
仕方なく俺達は狼男たちに姿を見せて、敷地の中へと入っていく。親分は不敵な笑みを浮かべてこちらを見ている。
「ワシたち狼獣人は鼻が良いんだ。そのくらいの距離なら人間の匂いなどすぐにわかるわ」
なるほど…、確かに犬も嗅覚良いもんな。……って感心してる場合じゃない。
「なんでドリーを誘拐したんですか?」
俺は縄で縛られたまま地面で横にさせられているドリーを見ながらそう尋ねる。すると、親分はフンッと鼻を鳴らした。
「ワシは金貸しをやってるんだが、このガキの親にたくさん金を貸したにもかかわらず、ちっとも金が返ってきてないんだよ。親はもう死んだらしいから、このガキに働いて返してもらうというわけだ」
「金ですか?金を返してほしいわけですよね?」
俺はわりと強気な態度でそう尋ねる。なんで強気かって言うと、ご都合主義でお金がたんまりあるからだ。
親分は眉を寄せて俺を睨んでくる。なかなかの威圧感。…さっきのルルには劣るけど。
「ほぅ…、おぬしが肩代わりするのか?」
「いいですよ。お金いっぱい持ってるんで」
俺はもうそれは自信満々に告げましたよ。ご都合主義を最大限に生かせるチャンスが来たわけだ。こういう時は金の力で解決するのが一番手っ取り早い。
そして優雅に財布を取り出して中を開けると――――
すっからかんでした。
「……あれ?」
え…?神様補充してくれてないの!?マジで!?なんでこんな大事な場面で!?いつもならすぐに補充してくれてるのに…!
「いっぱいどころか空っぽだが?」
親分が呆れ顔で俺を見ている。……やべ、恥ずかしっ!
俺があたふたしていると、ミストが隣に来てくれた。
「亡くなった親の借金を子供に償わせるのはどうかと思うけど」
「なんだ?おぬしらに文句を言われる筋合いはないぞ」
ミストが正論を言うが、親分は聞く耳持たない様子…。すると、今度は壊れたロボット状態のルルがぎこちない歩き方で前に出てきた。…だ、大丈夫か?
「…あ、あ、あの…そ、その…え…えっと…その、えー」
もう何言いたいのかさっぱりわかりません…。さすがの親分も汗を垂らしている。
「え…えと…!ど、ど、ど、ど」
「おぬし!何言いたいのかさっぱりわからんっ!」
遂に親分がキレた!いや…おっしゃる通りなんですがね。
「あわわわわわわ!」
ルルはまたもや手をワタワタさせてしまう。…いやなんで前出てきた?
「もういい!おい、そのガキを中へ連れていけ」
痺れを切らした親分が手下にドリーを連れて行くように指示する。手下はドリーを抱え上げようとするが、ドリーが手足をばたつかせて暴れ出した。
「このガキ!大人しくしろ!」
すると、手下がドリーの頭を勢いよく殴って気絶させてしまう。
「……何殴ってるんですか」
瞬間、ルルのドスの利いた声が聞こえてきた。嫌な予感がする…。恐る恐る顔を向けると…、さっきまでのおどおどっぷりがきれいさっぱり無くなり、顔に影を落として静かな怒りを露にしていました。
「あぁ!?ちんちくりんは黙ってろ!」
空気が読めない手下はルルをちんちくりん呼ばわりした。……あ、これはやばいかも。
ルルは右手をその手下に向けた―――次の瞬間、凄まじい爆炎が彼女の掌の先から放たれた。その熱量たるや、こっちまでも火の中にいるかのような凄まじさ!
炎は一瞬で手下に直撃、手下は断末魔のような叫び声をあげてドリーを手放した。
「あちあちあちいいいい!!」
服や毛が燃えてあたふたする手下。親分や他の手下は呆気に取られた様子で口をあんぐりと開けている。俺達も呆気に取られています…。
しかし、ブチ切れたルルの怒りはまだ収まらず―――今度は親分や他の手下に向かって同様に炎を放った。
「うぎゃあああ!!あっつい!!あっついってぇぇええ!!」
「ぬわわあああ!!ダンディな毛が燃えるうう!!」
親分たちもボウボウに燃えて大変なことになってる…。ルルはそれでも収まらず、今度は建物に向かって掌をかざし―――さらに凄まじい爆炎が勢いよく放たれた。
その勢いたるや、もはや炎というより熱線みたいに一瞬で建物に到達し、ルルはそのまま横に一閃。次の瞬間、
耳が裂けるような爆音と共に建物が爆発し、あっという間に炎に包まれてしまった…。
おぉ……これは…。す、スゲー…。じゃないじゃない!このままだとここら一帯火の海になっちゃう!
俺は慌ててルルの肩を叩く。
「ルルさん…!もう狼男達はやられちゃいましたよ…!い、一旦落ち着いて!」
「は…!」
ルルは俺の声にハッとして、辺りを見回し―――
「あわわわわわ!!私なんてことを…!」
手を高速でワタワタさせて動揺する。………。
「おーい!!あんたら!俺を忘れるなぁぁ!!俺まで燃えるううう!!」
すると、いつの間にか意識を取り戻し、口に貼っていたテープが剥がれて喋れるようになったドリーが、燃え盛る炎に怯えながら叫び声をあげる。動けない中で恐怖でしかないな…。
…とりあえず、もうどうしようもないので、俺達はその場から逃げるように退散しました…。




