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方向音痴の半竜娘は旅がしたい  作者: 揚げパン大陸
序章 こんにちは半竜娘さん。こんにちは異世界
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第5話 惜別!?最後に見たい竜の力

 エリルはズンズン突き進む。今のところ順調である。…当たり前だ。一本道だから。

 しかし、それも続かず、またもや分岐点が現れた。


「むむっ!これは左ですね!」


「いや右だよ」


 サラッと指摘すると、エリルはガックシと肩を落とした。おっ…!ついに自信を無くしたか?


「いえ…やはり自分を信じるのが大事…!まだ諦めません!」


 …と思いきや、またすぐに回復。メンタル強いな。めげないのは良いことだけど。

 でも、考えてみたら、まったく知らない世界に1人で迷い込んで来たのに、不安に押し潰されずにここまで来ている。心が強くなければできないことだ。仮に自分が違う世界に行ってしまったとしたらどうだろうか。嫌に決まっている。

 …だから、もう少し彼女を尊敬しよう。


 そうこうしているうちに、池までだいぶ近づいてきた。そして、最後の分岐点が現れた。エリルは立ち止まって目を瞑る。じっとして何をしているのだろうか。


「こっちです」


 目を開けて左の道を指差しながらそう告げる。……正解だ。でも、今度は今までとなんか違う。


「なんでわかったんだ?」


 とりあえず理由を聞いてみる。


「水の音が聞こえたんです。それも斜面を流れ落ちるような音ではなく、穏やかな波の音です。それが左の方から聞こえたのでこっちだと思ったんです」


 すごい。思わず聴き入ってしまった。意外にも冷静なところがあるじゃないか。そもそも水の音が聞こえる?俺の耳ではまったくわからない。聞こえるのは木々の葉擦れの音と、鳥の鳴き声だけだ。もしかして、半竜の子は聴力がずば抜けて良いのかもしれない。

 そして左の道を進むこと数分、ようやく目的地の池に辿り着くことができた。


「確かにここです。この池のほとりで目覚めたんです」


 ここは小学校の遠足とかでも来るようなところだ。決して人が寄り付かないようなところじゃない。俺も今まで何の変哲もないただの池だと思っていた。

 …だが、もしかしたら何か秘密があるのかもしれない。


「池が異世界同士をつなぐワープポイントみたいになってるのかも」


「じゃあ…この池に入れば…元の世界に戻れる…?」


 エリルは水面を見つめながらボソッと呟く。そして、振り返ってとんでもないことをサラッと言った。


「ユウキも一緒に来ますか?」


 なんでぇーーー!?嫌だよ!わけもわからない世界になんて行きたくないよ!…でも、エリルとここで別れるのがちょっと寂しいという気持ちもある。

 …そうだ。せっかくだから最後に見させてもらおう。


「俺はこの世界から出ることはできない。だから最後に、エリルが本当に半竜なのか証明してくれよ」


「まだ信じてくれてなかったんですか!?」


 びっくりするエリル。そりゃ、角と尻尾だけだとドラゴンじゃなくて別の生き物の可能性だってあるだろ。


「例えば翼を生やして空を飛びまわるとか、火を吹いたりとか、ドラゴンっぽいことを見せてくれたら信じる」


 せっかくだからこの目で見てみたいのだ。架空の存在だったドラゴンを半分受け継いでいる子が目の前にいるのだから。

 しかし、エリルは表情を曇らせた。


「翼は生えないです…。私は半竜なので変身はできないんです。だから尻尾や角を消すこともできないんです。ドラゴンである父は人間の姿に変身したりできるんですけど…。あと、ブレスはちょっと…危ないので…」


 エリルはそう告げて視線を逸らす。ドラゴンブレスはできるもののしたくないらしい。


「一瞬小さく火を吹くくらいでいいから!」


「コントロールが効かなくて…。あと、火じゃないです。あ…」


 話している途中で何か閃いた様子。…何を閃いたんだ?


「ちょっと試しにやってみます」


 え…、なんか嫌な予感がする…。なんで急にやる気になったんだろう。


「いや、やっぱいいよやっぱ」


「いえ、その池に向かってブレスを吐くので」


 池…?確かに池なら水しぶきが上がるだけで済むかもしれない。

 すると、エリルはドラゴンブレスを吐くために池から離れていく。30mほど離れると池の方を向いて立ち止まり、足に力を入れて拳をギュッと握りしめた。


「ハアアァァァ!!」


 エリルは口を大きく開けて唸り声をあげる。すると、彼女の口が太陽のように眩しく輝きだし―――次の瞬間


 カッ…!!


 エリルは口から凄まじいレーザーを吐いた。レーザーは一瞬で池に到達し、爆発でも起きたかのように盛大に水しぶきを上げた。水しぶきは軽く100mを超える高さにまで上がると、俺とエリルのいる場所に向かって流れ落ちるように降り注いできたのだ。


「ぎゃああああ!」


 悲鳴を上げるも時すでに遅し。どんなアトラクションよりも強烈な水しぶきを浴びてしまったのだった。

 そして…これが原因で、俺の身にとんでもないことが起きてしまうのであった。


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