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方向音痴の半竜娘は旅がしたい  作者: 揚げパン大陸
第1章 魔物問題を解決しよう
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第38話 切迫!?モルテナの池へ その2

 ミストと池を目指して道なき道を進んでいく。両手で草や木をかき分けながらだと、どうしても頭なんかに葉っぱが付いたりしてしまう。

 案の定、ミストの頭にも葉っぱが乗っかっていたので、俺は彼女に声をかけた。


「ミスト、頭に葉っぱが付いてる」


 すると、ミストは頭をこちらに差し向けてきた。


「払って」


 な、な、なぁー!?そんな……彼女の髪に触れようもんなら、どんな攻撃魔法が繰り出されるかわからないと恐れていたのに……まさか彼女からそんなことを言うなんて…。

 だけどやっぱり俺には敷居が高くて、指で恐る恐る葉っぱの先をつまんで放り投げた。


「取れた?」


「うん。取れた」


「全然気づかなかったよ」


「気付かないようにそっと取ったもの」


 もう恥ずかしくて視線も合わせられない。ミストが不満なのか嬉しいのかもよくわからない。ただただ速い鼓動音を感じながら足を前に進めていく。


「ユウキの頭にも付いてるよ」


 ミストはそう言って、俺が避ける間もなく手を伸ばして優しく払いのけた。………なんというか、すごく……。

 うわあぁぁぁ!!俺ってやつは!!なんと無防備な!!あぁ…もうだめだ!もう…だめ…。


「ミスト!」


 俺がいきなり声をかけたので、ミストはややびっくりして振り向いた。


「手………つなごう」



 それから何分間かはわからないが、池に着くまでずっと手を繋いでいた。彼女の手はほんのり温かくて、柔らかくて…もう最高でした。

 茂みから抜け出て、視界が開けた先に現れた池。神秘的な雰囲気にコバルトブルーの美しい輝きを見せる水面。


「きれい…」


 ミストはその美しさにボソッと声を漏らす。俺の方はミストのことで頭がいっぱいなのでそれどころじゃなかった。


「…座ろうか」


 俺は狂ったような声の調子でそう言うと、ミストも合わせるように腰を下ろした。地面に座り込むと、多少気分が軽くなったように感じたが、次の瞬間……ミストが体をくっつけてきたので……もう一瞬にして沸騰。


「ユウキ、緊張してる…?」


「緊張!?してない!」


 ごまかし技術ゼロ状態でそう言っても通用するわけも無く、ミストは緊張しまくっている俺を見てクスッと笑う。その笑顔がまた最高にかわいすぎたのでもうだめだ…。


「素直でよろしい。実は私もすごく緊張してる…」


 えぇっ!?全然そんな感じしないけど!いや…っていうか、ミストの顔赤い!


「その……ユウキにとっておきの魔法を見せたくて…」


 なっ…!?とっておきの魔法!?なんだそれは!?え…!?なんだそれはっ!?

 もう故障寸前の俺の頭は東西南北180度明後日の方向を向いており、もうなにがなんだか状態である。……と、ミストが俺の手を引っ張るように立ち上がり、池に向かって歩き出す。…そしてそのまま、池に着水した。


「え……?浮いてる…?」


 故障寸前でもわかった。俺は今…池の水の上に浮いている。沈まない。波紋だけが静かに周りに伝わっていく。


「すごい!すごいよミスト!水の上を歩けるなんて!」


 もう、称賛するしかなかった。素直な感動を言葉にするしかなかった。

 ―――いや、違う。ミストはそれを求めているんじゃない。バカだ俺は。気付くのが遅いんだよ。彼女は頑張ってとっておきを見せてくれたんだ。だったら…俺だって…。


「ミスト!俺は………ミストのことが好きだ!」


 途端、一際大きな波紋が池全体に広がっていく。そして広がる無音の時間…。

 なんだが…怖い…。けど、俺はミストの目をじっと見つめている。もう迷いはない。ミストのことが好き。頭が良くて魔法も強い非の打ちどころがない彼女だけど、何より実はすごく優しくて人思いなところがとにかく好き。

 ――と、彼女が涙を浮かべていた。


「ミスト!?」


 びっくりした俺が心配そうに声をかけるが、彼女は涙を浮かべつつ嬉しそうに笑みを浮かべた。


「嬉しいよ…。好きな人から好きって言われるのがこんなに嬉しいなんて……」


 …最高に嬉しいな。これは。この世界に来てよかったと心から思えた瞬間だった。


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