第22話 発見!それはおいしい食べ物? その1
町を出発してからはや6時間が経過した。依然景色に変わりなし……。本当に町以外は全部森だなこの世界は。それだけ木が生育しやすい環境だということか。ずっと森の中を歩いていたら、小動物の一匹や二匹出くわしそうな気もするが、見事に出てこない。人間の気配を察知して近づかないようにしているんだろう。…だったら魔物も出てこなきゃいいのに。
それにしてもあとどれくらいで着くのだろう。人の歩くスピードはだいたい時速4キロだから、単純計算で30キロは7時間半。実際はちょくちょく休憩しているから9時間くらいか…。
町を出たのが確か8時くらいだから17時……。図書館閉まってるんじゃね?あっちの世界の地元の図書館は17時きっかりで閉まるぞ。もしかすると、今日は町に到着して終わり…?
そもそも、歩き疲れて調べる気力なんてないか。でも、こっちの世界の本にはどういうものがあるのか早く見てみたいという気もある。
――そんなことを考えながら歩いていると、不意にエリルが声をかけてきた。
「ユウキ!ミスト!見てください!」
嬉しそうに声をかけるエリル。立ち止まって目を向けると、彼女が茂みの方を指差していた。
「キノコです!キノコが生えてます!」
おぉ…確かにキノコが生えている。それも見るからに怪しい色ではなく、ごくごく自然な茶色い笠をかぶっており、見た目しいたけに似ている。
…でも、名前もわからないし、食べようとは思わない………のに、エリルが茂みに入ってキノコに手を伸ばしたのだ。
「お、おいエリル!それ食べられるのか?」
俺は慌てて呼び止める。色は普通だけど、仮に毒キノコだったら大変だ。
だが、エリルは不安がる様子を見せなかった。
「食べられます!以前、旅の途中お腹がすいてどうしようもなかった時にこれと同じキノコを見つけて食べたんです。おいしかったし食あたりにもならなかったので大丈夫です!」
…なんだろう。なぜか、おおそうか!じゃあ大丈夫か!って思えない自分がいる。別にエリルを信じてないわけじゃない。なんかこう…いやな予感がするのだ。
俺がそう思っている間にも、エリルはキノコを引っこ抜いてしまう。
「待ってエリル。生のキノコは危険」
その時、ミストの制止が入った。おぉ!さすがミスト。その通りだ。そうだよ。仮に食用だとしてもちゃんと加熱調理しないと。
「食べるなら水で洗ってから」
………。いやいやいや!確かに水洗いは必要だけどそれだけじゃないでしょ!
「待て待て待て!ちゃんと火を通さないと!食中毒になるぞ!」
危うく水で洗うだけで食べようとした少女2人を止めに入る。…と、ミストがジト目を向けてきた。
「几帳面だね。そんなんじゃこの世界では生きていけないよ」
ここぞとばかりに辛辣な一言をぶつけにくるミスト。なんだよ、この世界の人間はどんだけ強靭な胃袋持ってるんだよ!…だが、ここで引き下がってはだめだ。
「ミランさんだったら絶対火を通すはずだ」
「!……なんでそこでお母さんの名前を出すの…!」
…読み通りだ。ミランさんの名前を出した途端、態度が弱くなった。薄々感じていたが、ミストは母親に対して甘えたがりなところがある。
そう。完璧優等生だと思っていたミストの意外な弱点……それは母親だったのだ。そして食に対する知識もやや乏しい。
「でも、火がありません…。とりあえずブレスで焼いてみましょうか…」
「待て待て待て!!丸焦げどころか消えてなくなるわ!!」
ツッコまずにはいられないエリルの盛大なボケ。図体のでかい魔物さえ一瞬で消してしまうエリルのレーザーが、こんな小さなキノコを程よく焼き上げる芸当をやってのけるはずがない。
俺はミランさんから出発前にもらったマッチをバッグから取り出す。
「ミランさんから貰ったマッチがあるから、これで火を付けよう」
…と、またもやミストが反応を示す。
「いつの間にお母さんからそんなものを…!」
彼女はマッチを自分ではなく俺に渡されたことに対して悔しがっているようだ。…確かにこれだけは俺に渡してくれたな。…そういや、料理はできるか訊かれたっけか。人並みにはできるって答えたけども…まさか、あれがそもそも布石だったのか…。
…まぁ、とりあえず水で洗って加熱して食べてみるか…。




