提案
一緒に住まないかと言うグランに一同が疑問符を浮かべる。
「なに、住むと言うかこの身体を共有しないかって事だ。勿論ずっとじゃない。出来るんだろ、アマン?」
グランは三人にとんでもない提案を持ちかけた。
「・・・可能よ。」
アマンは肯定する。
「よし、ならイケるな。」
一人納得するグランにフミが詰め寄る。
「待てや!なに一人で納得しとるんや!人の身体に住んで俺らに何の得があるんや!」
「まぁ、聞いてくれ。まず大事なのは俺はまだ死にたくない。それに俺には建築を極めたいと言う夢があるんだ。」
グランが己の夢を語りだす。
「次に消滅の件だけど、魂だけだと消滅するって事は肉体があれば何とかなるんだよな?」
再びアマンに尋ねる。
「少し細工がいるけど可能よ。」
「よし、なら俺はまだ23だ60年とは言わないが4、50年は生きてるだろう。その間に、フミ!お前が魔法を会得すればいい。」
「!!」
泉川がハッと顔を上げる。
「アマン40年ほどで会得は出来るのか?」
「私は理論の構築から始めたから時間がかかったけど、理論を作った私が教えるなら基礎から始めてもそこまでかからないはずよ。適正と努力によればさらに短縮も可能かもしれないわ。」
「ホンマか!」
「えぇ、ただしそれなりの時間が必要だから肉体があればの話だけどね。」
泉川の顔に希望が見えだした。
「よし、なら最後に聞こうか。お前達はどうしたい?」
グランが皆を見渡し問いかける。
「俺は新しい身体を見つけて転生するんや!それで第二の人生を謳歌するんや!」
「私もフミと同じよ。もともとそのためにこんな事してるんだから。」
「俺は、叶うなら再び剣の道を歩みたい。」
三人の意見が一致した。
「なら決定だな。さぁ、建設的な話をはじめようか。」
グランの提案に三人が頷く。
★ ★ ★ ★
「じゃあ、まずは色々あるが先にこれまでの事を水に流すんだ。」
「あぁ?ふざけとんのか?」
グランの唐突な言葉に泉川が文句を言う。
「大真面目だよ。」
「自分を殺した相手をどう許すんや!」
「・・・」
泉川が怒るのは正論だ。己を殺す原因を作った者、むしろ殺したと言っていい相手だ。現にアマンは泉川に何も言い返せない。
「よく考えてもみろ。これまでの経緯はどうあれこれからは協力する仲間だろ?それなのに遺恨を残したまま過ごすのか?」
「もっともだな。」
「シゲさんまで!」
「仕方あるまい。この女の協力無くして目標は達成出来ないだろう。昨日の敵は今日の友と言うではないか。」
「ぐぐっ!!」
泉川は何とも言えない顔をしているが諦めたのかため息をついて納得する。
「・・・しゃーないか。」
「あのぉ、私が言うのもなんだけど本当にいいの?」
アマンが恐る恐る尋ねる。
「仕方ないやんけ!ここで駄々こねたら今度は俺が悪モンやないか!」
「・・・ありがとう。」
「勘違いすんなや!しゃーなしやぞ!アマン言うたな?一時でも怪しいそぶり見せたら問答無用で叩き出すからな。」
アマンがホッと安堵する。
「ってな訳で話を進めるけど、いいな?」
一応の納得を得た所でグランは話を進める。
「とりあえず、共有と言ったが普段は俺がメインでいこうと思うがどうだ?」
「問題ない。」
「私もよ。」
「その方が都合ええやろ。」
全員が納得する。
「俺はとりあえずこのままの生活を続けるとして、お前らはどうするんだ?」
「私は貴方の身体の修復と、4人の魂の安定化に努めるわ。」
「そうだ!俺の身体はいつ頃治るんだ?と言うか完治するのか?」
グランは身体の事が心配になりアマンに聞いた。
「それは問題ないわよ。元通りというか怪我する前より身体能力が劇的に上がってると思うわ。」
「えっ?」
アマンの言葉にグランが固まる。
「元々私が貰うつもりだったから治すついでに色々イジったのよ。」
「何をしたんだ?」
「何って言われても多過ぎて困るけど、要は簡単には死ねない身体になったってことね。」
「・・・お前、人間辞めたんやな。」
「辞めてねぇよ!ってかそもそも俺は人間じゃない。トレーノだ。」
「な、何それ?」
「グラン、お前化生の類だったのか?」
グランの告白に泉川と重久が驚く。
「世界が違うとややこしいな。人間の近種族だよ。違いは瞳の色だ。トレーノは例外なく銀色の瞳をしているんだ。他には魔力量だけが飛びぬけて多いらしい。ただ魔法を使えるトレーノは聞いたことが無いがな。」
「何でや?」
「さぁな。俺にもわからないんだよ。ただ、人間は使えてもトレーノは何故か使えないんだ。これまでも幾人のトレーノが挑んだが駄目だったんだ。」
グランがやれやれと言った感じで目を伏せる。
「・・・おかしいわね?得手不得手はあるけど魔力があれば誰にでも出来るわよ?流石に全くってのはちょっとおかしいわね。」
「ちょっと待って?って事は俺にも出来るんか!!」
泉川が食いつく。
「大丈夫だと思うわよ。」
「よっしゃ!んじゃ、早速やるで!ファイア!」
泉川が手をかざしファイアと唱える。が、何も起きない。
「・・・」
「何やってるの?」
「出来んや無いかい!アマン!どうゆう事や!えらい恥かいたやないか!!」
顔を真っ赤にした泉川がアマンに詰め寄る。
「魔力を使わないと魔法が使えないのは当たり前でしょ?」
「んなモン使った事あるかい!そもそも魔力ってなんやねん!」
勝手に恥をかいた泉川がアマンに問う。
「そう言えばあなた達の世界には魔法を使う概念がなかったわね。説明は面倒だから一度体験してもらいましょう。」
アマンは泉川に魔法を体験する事を進める。
「あー、それ俺もやったが辛いんだよな。すごい痛いぞ?」
「そ、そうなんか。ちなみにどんな事するんや?」
グランの言葉に泉川はたじろぐ。
「簡単だよ。死なない様に弱めた魔法を受けるだけだ。」
「うわぁ、それ嫌やわ。失敗したら死ぬやん。」
「たまにそれで死ぬ奴はいるな。」
サラッとグランは答える。
「魂って死ぬんやろか?・・・アマン、優しくしてね。」
泉川の言葉にアマンが身震いする。
「やめてよ!気持ち悪いわね!そんな事しないわよ!」
「どういう事だ?魔法を使えない奴は魔法を受けて体得するのが常識だろ?」
グランが疑問に思いアマンに尋ねる。
「世界が違うと常識も違うのね。もしかしたら魔法の使い方自体が違うのかもね。とりあえず見てなさい。『ツイン』」
彼女が唱えるとアマンの姿がぶれて二人になった。
「「さぁ、フミ手を貸して。」」
二人のアマンが泉川を間に挟み手を取る。
「「じゃあ、行くわよ。『ファイア』」」
アマンが唱えると泉川の右手側のアマンの手から炎が出た。
「お?おお!?おおぉ!!何やコレ!」
間の泉川が得体の知れない感覚に驚く。
「この感覚を覚えていてね。今左の私がフミを通して右の私の手に魔力を集めているの。」
「何とも言えんが、なんとなくわかったわ!」
「見ているには分からんな。」
重久がよくわからないと言った感じで首をかしげる。
「さて、フミ感覚を忘れないうちにやってみて。」
「よっしゃ!今度こそ!『ファイア』」
泉川が先ほどと同じように唱える。すると今度は掌から焚火ほどの炎が現れた。
「うお!マジか!やったで!」
「マジかよ。そんな事で出来るのか。」
グランははしゃぐ泉川をみて唖然とする。
「まぁ、考え方の違いかしらね。さぁ、次はグランよ。」
アマンがグランの手を泉川と同じように取り魔法を唱えた。
「魔法ってこんな感じなのか。」
「次は一人でやってみなさい。」
「わかった。」
グランは深呼吸をした後に掌を上に向けて唱えた。
「『ファイア』」
すると掌から天まで届くような火柱が上がったのだった。