【6】
あなたが霧の彼方へと行ってしまい、姿が完全に見えなくなると老婆は溜め息を付いて大きな杖を出すと一振りしました。
椅子が一脚現れました。
老婆はゆっくりとその椅子に座り込みました。
「涙の川の番人は定期的に入れ替わらなくてはいけないね……」
つぶやきを聞いていたのは『涙の川』と砕けた壺の破片たちでした。
また老婆が杖を一振りすると砕けた壺がまた元に戻りました。
壺に、誰かが手を伸ばしました。
「来たね……」
老婆は片目を開けて言いました。
「はい」
返事をしたのは……。
灰色のお仕着せを着た無表情の男の子がそこに立っていました。
「名は?」
老婆に問われて男の子は平坦な口調で返しました。
「ティアード・ドロップです」
これは『涙の川』の番人たちの少し怖いような、哀しい物語…………。
お読みくださり、本当にありがとうございました。
このお話は、わたしが大事な人と出会った頃に思いつたお話でした。
ルーズリーフ数枚に、一生懸命その時書いたであろう筆跡でした。
そしてこのお話はわたしの未発表の作品を集めたケースに入れられておりました。
今回企画概要を見た時、まるで運命の様にこのお話を書いた事を思い出しました。
今回のことが無ければ、ずっとではないにしろ仕舞われていたままのお話でした。
企画を開催してくださいました、ありま氷炎様に深く感謝申し上げます。
そしてこの童話作品を見つけてくださり、読んでくださったあなたに深くお礼を申し上げます。
ありがとうございました!




