第十五話 文化祭実行計画④
展示物の内容は、可能なものをと釘をさされたうえで蓮に委ねられ、その後、
「では、他に案のある方はいますか?」
という司会の進行のもと、皆は意見を出し合った。
しかし、この文化祭でできることは限られている。皆はできる限り現実的な案を出そうと努力していたが、費用、人員、規模、そして先送りにした問題を踏まえたうえでの二週間という期限が邪魔をする。
──何か、他にできることはないのか……?
蓮は皆と同じく頭を抱えていた。状況を楽観視していたつもりはないが、いかに文化祭が困難なものであるかを改めて実感する。
「たしかにやれることは少ないな、けど」
「文化祭といえば、だよね?」
そんななか、小牧と雪乃は顔を見合わせたあと、にこやかでもったいぶった顔をクラスメイトたちに向けた。その表情に蓮は、何だか少し腹が立つという気持ちと、答えを知りたいという気持ちを抱く。
「な、何なのさ……」
「へっ、甘いな蓮。文化祭の定番といえばやっぱり、ステージイベントに決まってるだろ」
小牧の得意顔はやはり少し癪に障ったが、しかし小牧の言う通りだ。演劇にせよダンスにせよ、ステージイベントは文化祭の定番であり、盛り上がる。それに何より──。
「やりようによっちゃ、費用もそんなにかからない。二週間あれば練習も十分にできるし、集客にももってこいだぜ」
蓮の思ったことを代弁した小牧によって、皆が納得させられた。
藤咲は少し考えていたようだが、タイミングを見計らって彼女に迫った雪乃に圧倒されるかたちで、体育館を利用したステージイベントという案が通ることとなった。
「ステージを使って何をやるのかは後にするとしても……。しかし練習に時間をかける以上、文化祭でできることはあとひとつくらいが限度になりそうですね」
「それも簡単なもので、かつ人を呼べるもの……」
「何かあるかなあ」
「んー、難しいなー……」
条件は厳しい。実現可能なものであるのは当然のこととしても、それでいてこの状況下で他の生存者たちに足を運ぼうと思わせる決定的な何かが必要で、この文化祭にはそれが足りないのではないかと蓮は思う。
「そうですね……。来場者に食事を振る舞う、というのはどうでしょうか……。炊き出しのような感じで」
そう発言したのは、司会の藤咲だ。
藤咲の主張は、お腹をすかせた人々が暖かい食事を求めてこの学校に訪れるきっかけになるのではないか、というものだった。
当日こそ忙しくなるものの前日までに準備することはほとんどないこと、調理室には給食のために用意された業務用の巨大な調理器具が揃っていること、冷蔵室に大量にあるはずの期限寸前の食糧を使えばいいということなどから、懸念された問題点も払拭された。また、天候さえ良ければテントを張って屋外で配ることにより、文化祭らしさを出すことも可能だという。
「たしかに、そりゃいいな」
「うんうん、それでいこう!」
藤咲の意見に小牧と雪乃が同意し、クラスメイトたちはそれに続いた。
「では文化祭の内容は展示、ステージイベント、炊き出し。この三つということでよろしいですか?」
「おう!来たる二週間後の九月二十三日に向けて、皆で頑張ろうぜ!」
こうして皆が一丸となり、文化祭に向けての準備がスタートすることとなった。その先に待つ未来など、誰も知らないままに──。




