心配するのは当たり前
まだ、右腕は痙攣したまま。左腕も使えなくなることを避けるため下手に打ち合いはせず、龍也のバットをかわし切る蓮華だが、攻めに転じることはできない。
攻撃はそこまで速くないな。さて、どうするか……
それでも蓮華は冷静だ。
「なかなか、がんばるな」
「そうですか?」
「なぜ、笑ってる? 片腕が使えないこの状況で、お前は何を考えている」
「俺はただどうすればこの戦いが終わるかなって考えてるだけ」
そう言いながら蓮華は左手に持つ剣を振るった。
それをバットで受け止め龍也は後ろに飛んだ。二人の距離が開き龍也は静かに蓮華を見つめる。
「それで、なにか思いついたか?」
「ああ。いたって単純だよ」
蓮華は笑みを浮かべた。
「あんたをぶった倒すのが一番楽そうだ」
◆
フィルミネスたちは急いで職員室に向かった。もちろんテレビで蓮華が映っていたことに関してだ。
「フィール待ってよ」
早すぎる足取りに凛はそう言った。だが、フィルミネスにはそんな声は聞こえていないようでぐんぐん前に進んでいく。
フィルミネスは職員室のドアを思い切り開けた。
「先生!」
やはりというべきか中はあわただしくなっていた。
「望月先生!!」
教頭先生がそう言っているのがフィルミネスたちにも聞こえる。いかにも緊急事態という感じだ。そのせいか、巴は思わず……
「うるさい! 今かけてる!!」
職員室が凍り付いた。さすがにやばいと思ったのか巴はすぐに謝る。
「すみません。しかし、先ほどからかけているのですが全然つながらなくて」
それを見てフィルミネスたちもなんとなく状況を理解したようだ。
「望月先生」
「佐久間か。テレビを見て来たのか?」
「はい。いったい何があったんですか?」
「わからん。ただあいつの家はいろいろと特殊だからな」
一応仲がいいとはいえ生徒の家を許可なしにとやかく言うことはできないということではぐらかす。先生たちですら把握していないという事実に困惑を隠せない。
そんなフィルミネスたちを見て、巴は教師として申し訳なくなる。
「大丈夫だよ」
そんな声が職員室の外から聞こえフィルミネスと秋久の肩に手が乗る。後ろを向くと理事長の鳴海が立っていた。
「みなさん、落ち着いてください」
その一言で、教師陣が我に返る。
「望月先生は引き続き電話をかけ続けてください」
そう言いながら職員室に足を踏み入れる鳴海の姿は人の上に立つ者そのものだった。普段とは比べものにならないくらい立派だ。
次に鳴海はフィルミネスたちのことを見る。
「彼のことを心配して来てくれたのかい?」
鳴海がそう聞くとフィルミネスは堂々と言った。
「当たり前です!」
その言葉がうれしかったのか鳴海はニコッと笑った。
「それじゃあ君たちも連絡をしてみてくれないか。蓮華くんの携帯にね」
盲点だったと言わんばかりにフィルミネスたちはお互いの顔を見て、秋久がさっそく電話をかけ始めた。
「つながりました!」
そう巴が言うと一同が彼女の方に視線を向けた。
「はい……はい。つまり問題ない、ということですか? では霧ヶ谷に代わっていただきたいのですが…………そうですか。わかりました」
静かに受話器を置く。
「彼の祖父が蓮華はちゃんと強くなってるから何も心配していないとのことでした」
巴の言葉にフィルミネスが震えた声で、
「それって、蓮華は戦いに出てるってことですか?」
巴はフィルミネスのその問いにうなずきで返した。
「レン!?」
秋久の方もつながったようだ。フィルミネスは咄嗟に、「スピーカーにして!」とさけぶ。




