卓ゲ者の持ちネタ
「ダイスが決まったら、次はキャラメイクだな!」
その言葉と共に、風月の前に一枚の紙が差し出された。A4の用紙を横にして真ん中に折り目をつけ、左右にいくつかの表が書かれたその紙には、【CODE:e】と表題が書かれていた。枠の外にはサイバー風な装飾が描かれていて、近未来的にも見える。
プレイヤーキャラクターは『楔』と書いてデバッガーと読む特殊な職業の人間で、電脳世界に突如発生した異影という正体不明の異形を除去するのが目的となる。
特殊能力もあるが、異能を使えるのは主に電脳世界内部となる。SF要素やファンタジー要素はあるものの、現実離れしすぎていないお陰でイメージがしやすい。
キャラクターも現実に即した作り方が出来、西洋風異世界ファンタジーとはまた違った没入感を味わえそうだ。
「まず、さっき用意した十面ダイスを三つ……と、風月ちゃん、桜ダイス三つを同時に振ってみてくれる?」
「はい」
言われたとおり、ダイストレーの上に三つの六面ダイスを転がすと、十、四、二の目が出た。
「合計十六だから、この欄に十六って書いてくれる?」
「えっと……この心の項目でいいんですよね」
「うん、そう。いまみたいな感じであと三つ埋めてみて。振り終わったら五点のフリーポイントを横の欄に振り分けてね。極振りでもいいし、バランス取ってもいいよ」
「はい。やってみます」
先ほどと同じようにダイスを三つ振り、出た目を順に記入していく。
最終的に心が十六で、技が二十一、体が十九、そして知が十一となった。フリーポイントは心に一、技に二、体に一、知に一と、特技を少し延ばす方向で振り分けた。
心技体知の大分類を埋め終えた風月は、その下に並ぶ技能欄を見た。其処には行動を示す単語がいくつも並んでおり、それぞれが心技体知のいずれかに分類されていた。
「あの……こっちの項目はどうするんですか?」
「さっき振った3d……えっと、まず先にダイスの振り方の説明したほうがいいかな。僕うっかりいつもの調子で言っちゃいそうだし」
「そうですね。いちいち訂正するのも面倒ですし」
千景の横で、巴がダイスをいくつか箱から取り出しては風月の前に並べていく。ダイスは六面のものと十面のもの、それからピラミッド型のものがある。まじまじと見つめる風月に、巴は「そのマキビシもダイスですよ」と可笑しそうに補足した。
更にもう一つ、別の入れ物からゴルフボールを一回り大きくしたものを取り出してきて、風月は今度こそお手本のように二度見した。
「これもダイス……なんですか……?」
「ええ。とはいえ止まらないし出目も見にくいので、まあ、コレクションアイテムですね」
感心して見入る風月に、六面ダイスが二つ差し出される。それを手のひらに載せて見せながら、千景は先ほどの説明の続きを始めた。
「ダイスを振るときは、どの種類を何個振るかっていうのをndxで表すんだ。例えばこれなら、2d6、こっちの十面を三つだと、3d10って感じにね」
「因みにこのゴルフボールはd100ですよ」
「百面……面? なんてあるんですね……」
つい見た目のインパクトに圧倒されてしまったが、千景の説明はとてもわかりやすい。つまり、先の能力値を決めるときに振ったダイスは3d10ということになるのだろう。頷きながら解説を聞いていると、四面ダイスが四つ、風月の手に乗せられた。
百面も凄いが、これはこれで何度見てもピラミッドのミニチュアにしか見えない。
「じゃあ、それを振るときはなんて言うかわかる?」
「えっと……四面が四つなので、4d4……ですか?」
「うん。よく出来ました。こんな感じで省略して言うから、もしわからなかったら言ってね」
「このゲームでは基本的に十面しか使いませんので、略して2dなどと言うことになります」
「わかりました」
振り方の説明を終えたところで、技能の項目へと移る。
心の項目には精神分析、説得、恫喝、心理学など心や精神にまつわる行動が並び、技の項目には機械修理、調理、描画、機械操作など手先を使う行動が、体の項目には投擲、水泳、登攀、反射、格闘など、肉体を使った行動が並んでいる。面白いのは、同じ戦闘に使いそうな技能でも近接武器技能は体に分類されていて、銃火器関連は技に分類されていることだ。
心技体三つの他に知という項目もあり、それは見たまま知識に関する技能が記されている。
「この技能には、さっき振った3dと選択職業で出た数値の合計を振り分けることが出来るんだ。でも、初期作成だと一つの項目に二点までしか振り分けられないのと、知の『異』技能だけは霊感みたいなものだから、初期値が確定で零になるよ」
「あなたのキャラクターが得意そうだと思うものに振り分けるといいですよ。逆に、苦手そうだと思うものは思い切って零にしておくといいです」
「はい。あ……でも、零だと足を引っ張ってしまいませんか?」
「このゲームは周りと協力してクリアを目指すものですからね、あなたが苦手なものは他の誰かが補ってくれますよ」
その言葉に安堵し、風月はキャラクターシートに向き直った。
間もなく自分の分身が出来上がる。そう思うだけで胸が躍る自分に気付き、風月は知らず知らず沼に足を踏み入れていた。




