第20話 ピーター・クーリエ杯
ケルトンの職人街ではケルトン王国で生まれたフットボールというボールゲームが行われていた。
11人と11人で一つのボールを足だけで、相手チームのゴールまで運ぶゲームだ。
ゴールを守るキーパー以外は人間が一番上手に使う事ができる手をあえて使わない。
リガリア人はケルトンの原始的なバカバカしい遊びだと馬鹿にしていた。
手でボールを運び、力と力で戦うラグビーの方がリガリアでは人気があったのだ。
俺は現世ではキャプテ◯翼の大ファンだったから、ボールは友達だ。
俺はラグビーやフットボールが人々の闘争心をスポーツという平和的な領域で昇華することを知っていた。
すぐさまリガリアラグビー協会とフットボール協会を立ち上げ、ラグビーとフットボールの普及に俺の持っている財産をつぎ込んだ。
特にフットボールでは、リガリアフットボールアカデミーをクーリエ領に作って、フットボールが大好きな少年達を全寮制で集めて、集中育成するって事業も始めた。
リガリアフットボールアカデミーでは、守備ではあえてフラットスリーを採用して、軽やかで美しく攻めるクリエーヌフットボールを目指すんだ。
俺はトルシエジャパンが好きだったからね。
フットボール熱は全リガリアで一気に高まった。
各地方都市は自分たちの都市のチームを組織し、それぞれの都市間でホーム&アウェイの対抗戦が繰り広げられるようになった。
クーリエ領でアカデミーから育てた少年たちを中心にしたチームがFCクーリエ。
王都をホームとして王家の支援を全面に受けるサンジェルマン。
航空産業界の大企業エアロオフマン社をスポンサーとしたレアルツルーズ。
リザリアサッカーリーグを代表するビッグ3が生まれ、それはさらにリガリア以外の国にもすぐに広まっていった。
俺はこれまで俺と関わった国々の国王達にフットボールの大会を呼びかけた。
フットボール発祥国のケルトン王国。
マリーの故国フルショア公国。
飛空挺での経由地のゲルマン諸国。
そして我がリガリア王国。
たった4ヶ国でのフットボール大会だった。
しかし俺はあえてこの大会名をワールドカップと名付けた。
これからはワールドカップを4年ごとに行う。
俺はワールドカップのチャンピオンのためにトロフィーをデザインした。
もちろんそれを作ってくれたのはエリックだ。
素材はマリーが純金を用意してくれた。
このトロフィーはワールドカップ優勝を最初に3回獲得した国が永久保存できる事にした。
俺の死後、ピーター・クーリエ杯と呼ばれる事になるトロフィーとワールドカップが誕生したのだった。
エヴァは大会の映像を撮り、その映像に映る美しいスポーツシーンが多くの人の心を引きつける事となった。
フットボールはきっと国と国の戦争を防止し、この世界の平和の合言葉になってくれる。
俺はそれを信じている。
なんだかんだとあったせいか、ラグビーとフットボールは相変わらず仲が悪い。
それでもフットボールからは遅れたが、ラグビーでもワールドカップが行われる様になった。
俺はそれぞれのユニホームにおいて、ラグビーは横縞。フットボールは縦縞のユニホームを使う事とした。それで全く違うスポーツである事を強調したのだ。
人と人は絶対に争う事を辞める事はないのだ。
そうであれば、平和的なスポーツという争いを積極的に進めていこう。
不要な戦争を避けるために
いよいよ後1話で連載終了となります。




