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ダブル異世界転生 現代科学で人を幸せにしたい  作者: とと
第5章 ピーター・クーリエの実験室
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第18話 クフクラセレクション-マリー視点

 クフクラセレクションは毎年夏の終わりに開催されます。


 私はこのクフクラセレクションの名誉審査委員長なので、妊娠出産で無理だった時以外は毎年出席しています。


 ちょうどアカデミーの夏休み期間でもあり、ピーターもよく一緒に旅行に出かけています。


 クフクラの街はフルショア南部にあり、私とピーターが新婚旅行で訪れた街です。


 ピーターがクーリエ・ド・カシスを作るために、けっこう長逗留したのがきっかけで、クフクラセレクションが始まったのでした。


 クフクラセレクションは年を重ねるごとに盛大になっていっています。


 各地の名産品や、企業の新製品が出品され、それらに銀賞、金賞、最高金賞を与えるのです。


 出品できるジャンルも、最初はカシスリキュールと、カシスを使ったお菓子だけでしたが、お酒もお菓子も種類が増えていて、途中からは料理も加わってきて、どんどん規模が大きくなっていってしまっていました。


 それらを私が全て味見するのはスケジュール的に難しいので、私の審査員としての仕事は最高金賞候補を味見して、各ジャンルで一点だけに最高金賞を与えるのだけになっています。


 あとは授与式展での表彰と、その後の祝賀会での講評を務めていました。


 ピーターは

「俺は味音痴だから」

 と、セレクションには関わらないようにしています。

 本当はけっこうグルメなのになあ。


 クフクラに来た時の楽しみの一つは少年少女合唱団の演奏会です。

 毎年彼らはセレクションの祝賀会に花を添えてくれています。

 この合唱団も最初はこの町の子達だけで作られましたが、今やフルショア公国中から受験生が来て、高い倍率を突破した子だけでやっているそうです。


 今日は昔に少年少女合唱団だったという小太りのおっかさんって感じの女性が、私たちに焼き鳥を持ってきてくれました。


 今はこの町の広場の近くで、夫婦だけで焼鳥屋をやっているそうです。

 夫も同じ合唱団だったそうで、合唱団で一緒に歌いながら愛をはぐくんでいったそうです。

 私が最初に合唱団を始めてから、もうそんなに時が経ったのだなあって思いました。


 今回のクフクラ劇団の方の演目は白雪姫をベースにしたものでした。

 そういえば最初に劇団を作った時にも私が脚本を書いて、白雪姫を演じたのでした。

 それがかなり違ったストーリーになっていました。


 小人達はハンナ、エレーヌ、アダム、ジョゼフなどの見知った名前になっていて、悪の魔法使いのダミアンに対して力を合わせて戦うのです。

 そうしてラストでは飛空艇から飛び降りたピーター王子がマリー姫にカシスを口移しで飲ませて救うというストーリーになっていました。

 話の中にフルショア後継者戦争のエピソードがふんだんに取り込まれていて、すっかりオリジナルの作品に進化していました。


 ピーターは小人達の中にちゃんとジョゼフがいるって大うけしていました。

 劇団の主役のマリー姫より実物の方がずっと綺麗だというのは贔屓のしすぎでしょう。


 エヴァがクフクラ劇団や合唱団の映画上映をしたことで、オリジナルを見たいとより多くの観光客がクフクラを訪れるようになったそうです。


 今回も泊まった宿はジルムントです。新婚旅行の時にも泊まった宿です。今の宿屋の主人はシモンの息子さんです。


 シモンは去年亡くなってしまいましたが、シモンの後を息子さんが継いで、ジルムントの主人と町長を頑張っているそうです。


 ジルムントの玄関の前には私とピーターが若い時の姿で銅像が立っています。


 銅像はだいぶ古ぼけてきてしまいましたが、やっぱりピーターはかっこいいなあとにやけてしまいました。


 そういえばクフクラセレクションのフィナーレでは最近花火が打ち上げられるようになりました。


 ピーターが製造法をレクチャーしたのです。


 花火は木炭と硫黄と硝石を混ぜて作った黒色火薬をベースに、様々な色を魅せるアルカリ性金属イオンを混ぜた星を作る事で、鮮やかな色を見せることができるのです。


 私もピーターに頼まれて、ストロンチウムや、リチウムの混じった鉱石から成分の抽出に協力させてもらいました。


 私は銅イオンで生み出される緑の花火が大好きです。

 ピーターは鉄で出来る線香花火のようなギザギザが大好きなのだそうです。

 しだれ柳のように流れる花火が好きみたいです。


 日本の夏の風物詩がこの世界でも空を輝かすようになりました。


 また来年もピーターと二人で来よう。

 クフクラはいつまでも初めての気持ちを思い出せる町でした。


連載終了カウントダウン。あと3話となりました。

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