第8話 電気飛行機の開発1
俺は飛行機の開発に着手した。
前にも言ったが、この世界には化石燃料がない。つまりは石油が利用できない。
前世で飛行機を飛ばしているのは航空燃料と呼ばれているもので、これは石油の中でも軽量でオクタン価が高いものだったのだ。
この航空燃料に比べると、それ以外のものとでは重量と発生するパワーの比が圧倒的に劣るのだ。
特に俺がこの世界で利用している電気の場合、バッテリーが重いのだ。
バッテリーと同じ重さの航空燃料とを比較すると同じパワーを出すには、10倍以上バッテリーの方が重いと言われている。
このため電動飛行機というのは、現世でもまだ開発できていない事を俺は知っていた。
しかしこの世界の魔法の力を併用して、電気飛行機を作ってみたいと思ったのだ。
俺一人の力だけではどうしようもないことはわかっている。
まずは飛行機というものをみんなに知ってもらう必要がある。
俺はグライダーを最初に作ってみた。
俺は設計図を引いて、主要な部品としてアルミニウム合金を提供したくらいだが、エリックと職人達が設計図を基にして、製作に協力してくれた。
俺とはアカデミーでパーティーメンバーでもあったジョルジュ・オフマンが、オフマン領のツルーズに広大な荒地を整備して、2000メートル級の滑走路を作ってくれた。
ちなみにジョルジュの奥さんは俺の元婚約者のエリーゼ王女だ。
なので俺たち夫婦とは卒業後も家族ぐるみの友達だ。
兄のジョゼフは騎士団長としての仕事で王都にずっと滞在しているので、ジョルジュがオフマン領の実質的な領主をしていたからである。
オフマン領ツルーズはリガリア王国南西部にあり、ラケルト国境に近い地域だ。
オフマン家の全面的な協力で俺はこの地に飛行機の開発拠点を作る事にした。
グライダーは限界まで空気抵抗を抑えてあるので、滑空比は1対50くらいあるものだ。
滑空比というのは飛行機が1メートル垂直方向に落ちる間に、何メートル水平方向に進めるのかを示す値である。
大きいほど少ない力で遠くへ飛ぶ飛行機になる。
グライダーくらい滑空比が大きいと、地上のウィンチを使って、ワイヤーで引っ張るだけでも、数百メートルの高さまで浮き上がる事ができる。
こうして一度浮き上がる事が出来れば、空中で上昇気流を見つけて、より上空を目指す事ができる。
上昇気流をうまく捕まえる事が出来れば数千メートルまで上昇する事が出来るし、運が良ければ丸一日飛行を続ける事すらできるのだ。
俺の空気圧縮と膨張魔法で、上昇気流を作るのは簡単だ。
グライダーを飛ばした後に上昇気流を作り出して、パイロットの支援をしてやった。
さらには俺の空気拡張魔術を魔術具にしてもらい、俺が居なくても常時上昇気流が発生する装置をツルーズに設置した。
グライダーと滑走路と上昇支援装置ができたので、飛行機の操縦技術を学ぶためのツルーズパイロット養成アカデミーがスタートした。
飛行機を開発してもパイロットがいなければ無意味だからね。
空に憧れる若者たちがツルーズにどんどんやってきた。
マリーはキャビンアテンダント養成学校も作りたいって言ったが、それはもうちょっと待って欲しいな。
こうしてグライダーによる飛行機操縦技術向上が電動飛行機開発への第一歩としてスタートしたのだった。
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