第5話 イレーヌ・クーリエ
あたいはイレーヌ。6歳になった。
ママはナンシーといって、ブランデーの貯蔵庫の清掃や、ブレンダーの人達の洗濯の仕事をしている。
だからあたいはママの仕事場の泉の近くで遊んでいる事が多い。
泉には水色のスライムがたくさん居て、ブランデーの樽にくっついて、木の屑を食べたりしている。
そんなスライムの中で一匹だけ紫のスライムがいる。
あたいの話友達のマルコってスライムだ。
マルコは喋る事ができるスライムだ。
マルコはあたいのパパの事を知ってるって教えてくれた。
ママはあたいのパパのピーターはもう死んじゃったって言っていたが、マルコはピーターが王都にいることを教えてくれた。
パパはアカデミーで先生をしているんだって。
だからあたいは大きくなったら、絶対にそのアカデミーって所に行くんだ。
ママには教えてないけどね。
泉のそばにあるブレンダーが住んでいるお家にはヘンリー爺さんが居て、よくあたいと遊んでくれる。
ヘンリー爺さんは凄い物知りで、他のブレンダーのみんなからすごく尊敬されている。
昔はあの飛空挺の開発にも関わっていた技術者だったんだって。
最近は蒸留器の修理なんかもやっている。
蒸留器はとっても壊れやすくって、ヘンリー爺さんがいなければなかなかうまく動かないそうだ。
ある日あたいはママがやっている洗濯の真似をしていた。
洗濯物をマルコが食べる。
マルコはそのあとに水と洗剤も食べる。
あたいがマルコに向かって力を注ぐと、マルコの中で洗濯物と水が高速回転するのだ。
少しの間回転させたら、今度は逆に回転させる。こうすると汚れが落ちやすい事を見つけたんだ。
洗剤を入れて洗った後には、水だけでもう一回洗うと、洗濯物がとても綺麗になった。
そのあとにマルコに水を抜いてもらいながら、より早く回転をさせる。そうするとほとんど乾いちゃうんだ。
最後に洗濯物だけをマルコが吐き出すと、汚れも落ちていて、ほとんど乾いているんで、ちょっと干すだけですぐに着られるようになるんだ。
今日もいつものように洗濯をしていたら、ヘンリー爺さんに見つかってしまった。
ヘンリー爺さんが言うには、あたいが使っているのは魔法だそうだ。
パパのピーターとおんなじ無属性が使えるっていう事だった。
ヘンリー爺さんはパパのお兄ちゃんのトーマスって人にあたいの魔法の事を伝えたそうだ。
あたいはトーマス伯父さんのお家に引き取られる事になった。
これまではママがずっと断っていたそうだ。
トーマス伯父さんはこのあたりでは一番偉い人で、みんなに御領主様って呼ばれている。
トーマス伯父さんのお家は凄く大きかった。
ちゃんとママも一緒だよ。
あたいの名前が単なるイレーヌから、イレーヌ・クーリエって、新しく苗字が増えた。
ある日トーマス伯父さんから、星見の水晶っていうキラキラの石に力を込めてみろと言われた。
あたいが手を水晶に当てて、力を込めると、水晶はクルクルと回った。
あたいの力は無属性魔法の回転というのだそうだ。
あたいはそれから魔法力を高めるために、風車小屋の風車を、風が吹かない日に魔法で回す仕事についた。
風車を回すと電気ってのがとれるらしい。
他には馬車の車輪を馬なしで回して走らせる仕事もした。
あたいが乗ると馬車が倍の速度で走れて、馬が楽できるんだそうだ。
それらの仕事で稼いだお金で、家庭教師を雇ってもらって勉強を教えてもらっている。
アカデミーに行くには勉強ってのも大事だとトーマス伯父さんが教えてくれた。
ママはあたいがお屋敷に引き取られる条件に、自分が使うお金は自分で稼ぐっていうのを入れたって言っていた。
そんなの当たり前じゃん。
あたいは15歳になったら、王都のアカデミーに行くんだから。
そのためにお金をちゃんと貯めておかないとね。
パパ、あたいの事を待っていてね。
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