第3話 エヴァの誕生
俺が教授となりアカデミーで働き始めてしばらくしてから、マリーはアカデミーを退学した。
結婚式に来ていたハンナが抱いていたピエールを見て、自分も赤ちゃんを産むと決意したのだった。
アカデミーでは教職員と学生がアカデミーの寮で住むのは認められていない。
逆に学生が教職員住宅に転がり込むのも許されていない。
俺とマリーは結婚式の後は別居婚だったのだ。
まあ実験室に泊り込んでいる事も多くて、ほとんど一日中一緒には居たのだけれど。
しかしそもそも学生中の妊娠はご法度だ。
仕方がなく、マリーは退学して、教職員住宅で俺と暮らし始めた。
ただ仕事として、俺の実験室の助手として採用されたので、結局のところ俺の授業は出席しているし、実験室にもいつも居るのはあまり変わらない。
マリーの希望を叶えるために俺も頑張った。
まずは水銀を液状にして、ガラスの中に封入した。
その一部を身体に当てやすい様に丸く加工して、温度変化がわかるように目盛りを刻んだものを作った。
いつものようにハイジとマリーとの共同製作だ。
これがなんだかわかるかな?
そう体温計だ。
この体温計でマリーは毎朝起きてすぐの体温を計測し、ノートにそれをグラフ化した。
生理が終わって、10日くらい経った頃に、体温計のグラフが前日よりもスコーンと落ちる日がある。
この日が排卵日であり、その日から2日以内にすると妊娠しやすいのだ。
ちなみにこの知識も、この世界では知られていない知識だった。
まあこれまで体温計がなかったのだから、当然かあ。
そうして万全の体制で妊活をした結果、すぐに妊娠する事ができた。
この世界では魔法で妊娠が診断できるのだ。
特にマリーは人体に働きかけるのが得意な光魔法属性である。
自分のお腹に対してエコー診断の様なイメージ撮影をする事もできた。
まだまだ医療技術が低いこの世界でも、安心しながら出産準備が行なえた。
マリーの体調は順調なまま、9ヶ月後に赤ちゃんが誕生した。
出産には俺も付き添った。
一緒にヒッ・ヒッ・フーってラマーズ法もやったよ。
華奢な体型で、骨盤が狭かったマリーにとって、出産は難事業だった。
流石に医療技術のない俺は、難産だからといって、突然帝王切開なんてできないからね。
とりあえず産褥熱の原因にならないようにと、出産に必要なものを全てアルコール消毒したくらいしか、俺が役に立つ事はなかった。
そもそも夫の立会い出産も、この世界的には相当非常識な事だったみたいだ。
十数時間の時間がかかり、マリーの精魂が尽きようとした時にやっと産声が上がった。
女の子だった。
俺はマリーに優しく口付けた。
マリーの血の臭いがした。
マリーは食い縛りすぎて、口の中が血だらけだったようだ。
それでもマリーは嬉しそうだった。
その娘にはエヴァと名付けた。
エヴァができてから、俺の発明品は育児用品が多かった。
まずはベビーカー。
この世界ではあまり赤ん坊を連れて外出はしない。
リガリアでは上下水道が整えられていて、衛生環境が良いので子供の死亡率は低いのだが、それ以外の地域ではまだまだ子供の死亡率は高いのだ。
伝染病も多く、子供はけっこう簡単に死んでしまうので、外に連れ出すものではないそうだ。
地面も前世のようにアスファルトで舗装されているわけではなく、王都の石畳が良い方で、ちょっと外れれば未舗装のところばかりだ。
このため俺が作ったベビーカーは荷馬車にも使われたダンパーとボールベアリングをさらに軽量化したもので、製作費だけで金貨数枚というおバカなものであった。
ベビーカーのおかげで、エヴァを連れてアカデミーに出勤することができるようになったので、マリーも実験室の助手として早期に職場復帰ができた。
高分子ポリマーを開発して紙おむつも作ってみた。
ポリマーの吸水効果はなかなかのものなのだが、湿気がこもりやすいのは、まだまだ改善の余地ありだった。
エヴァはすっかり実験室の人気者で、俺だけでなく、学生達もエヴァのために色々と発明品を考えるようになった。
俺はエヴァ用の発明品に単位を与え易いのを学生たちによまれてしまったからみたいだった。
まあ教授と言っても親ばかはしょうがないよね
読んでいただきありがとうございました。
毎日7時に更新をしてます。
更新頑張れ!
続きも読む!
と思ってくれた方は、下の評価クリックで応援してくれるとすごく嬉しいです!
気に入ってくれたらブックマークしてくださいね。
また感想や誤字脱字など教えてくだされば、とても嬉しいです。
よろしくお願いします