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コミュ障は止められない

問:あなたはスイーツバイキングに行ったら何皿食べますか?


三皿?あぁ、いいですね、ちょうどいいです。もちろん皿のサイズにもよるでしょうが、だいたい4,5個は何かしら乗せることができるしょう。そうすると、最大15個食べたということになり、値段が2千円程度なら十分元をとったといえます。それにそれだけ食べれれば満腹でしょうし、満足感は得ていると思います。


え?二皿いかないぐらい?なるほど。あなたは小食なのですね。しかし、お腹いっぱいスイーツを食べたということは元をとることなど考えていないはずです。口に広がる甘さでやはりあなたは満足感を得ていることでしょう。量より質。好きなものをたくさん食べている時、あなたはさぞ幸せそうな顔を浮かべていることでしょう。


かくいう私もあまり甘いものは得意ではありません。おそらく一皿分も行かないことでしょう。でもいいんです。目の前の女性が幸せならば。その姿を見るだけで私は十分、幸せなのです。そう、美味しそうに食べる女性の姿は我々男性の目にはむしろ目の保養といえるほどなのです。体重のことなんて気にしなくていいんです。食べたいときは食べればいいんです。ほら、見てください、この光景を。私と一緒にスイーツバイキングに来た女性二人の姿を。幸せそうでしょう?


「ちょっと春宮さん!それ今、私がとろうとしてたのに!」


「早く取らない方が悪いんでしょ!これは私が食べるの!」


「あー!それラス1だったのにぃ!!」


「悩んでるからいけないんでしょう!こういうときはパッパと動くの!」


確かに幸せそうではある。しかし、この場に相応しいのはバイキングという生易しい言葉ではなく、戦場と言った方が正しかった。いや確かに海賊的な所はあるけども。


店に入った俺たちは席に着くや否や、皿を手に持ち店内を練り歩いていた。彼女たちの目は先ほどまでの気まずいものではなく、そう、獲物を狩るようなハンターの目に変わっていた。恐ろしかった。間違えて食われるなんてことないよな。


何度も言うが、俺は甘いものは得意ではないので皿にはコーヒーゼリーとかあまり甘くないものをチョイスした。だが、せっかくのスイーツバイキングだ、少しはケーキでも食べようとチーズケーキも手に取ってみた。ちゃんとしたケーキを食べるなんて何年振りだろうか。一口運ぶと口の中にはチーズの香りがいっぱいに広がり、それをコーヒーで流し込むとそれをかき消すようにコーヒーの苦みが喉を潤し、最高な食事だった。一度手を止めて店内を見回してみる。女性のお客さんばかりで皆、ケーキを口に運びながらその顔を綻ばせている。幸せそうだと思った。店内のBGMも邪魔にならない程度のクラシックが流れており、店内の雰囲気も相まって素晴らしい空間を作り上げていた。最高の場所だな。


このしょっちゅう聞こえてくる怒号が無ければもっといいのに。


「千夏ちゃんとりすぎ!そんなにとったら他のお客さんの分が無くなっちゃうでしょ!」


「どうせ補充されるんです!いいでしょ別に!春宮さんこそいつまでそこに立ってるんですか邪魔ですよ!」


「なっ!私はまだ悩んでるの!千夏ちゃんみたいに馬鹿みたいに食べないから!」


「あ!!馬鹿って言いました!?言いましたよね!?馬鹿って言った方が馬鹿なんですよ!」


「うわ!子どもみたいなこと言ってる!!あー、だからこんなに身長がちっちゃいんだねぇ!分けてあげよっか!?」


「分けてもらえるんなら分けてもらいたいですけどね!!分けられるんですかね!あ、でも馬鹿には無理か!!」


「なんなのこの子!!!」


あいつらなにしてるんだよ。せっかくのシチュエーションが台無しじゃないか。


店員さんも止めに入ればいいのかオドオドしている。他のお客さんもいることだし、このまま行くと喧嘩に発展しかねない。しょうがない、俺が人肌脱ぎますか。


席を立ち、口論している二人の元へ歩み寄る。


「ちょっと、あんまり騒がないの」


神経を逆なでしないようにできるだけ優しく、子どもに言いかけるように仲裁に入る。しかし、返ってきた言葉は、


「「うるっさい!!藤宮さん/藤宮は黙ってて!!!」」


とのことだった。うわぁ、仲良しじゃん。


俺はそれ以上、何も言えなくすごすごと席に戻った。まだ熱が残っているコーヒーを一口飲み、窓の外へと視線を移した。あぁ、今日もいい天気だ。

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