こいつらケーキばっかり食ってんな
準備を終えた春宮と合流し、スイーツバイキングの店へと向かった。
「なんで急にスイーツバイキングすることになったの?」
「いや東が・・・」
「藤宮さんにちょっと貸しができましてね!」
詳しい説明はしないようだ。俺的にはすごく助かるが。東の肝心なところで濁す話し方をするのはおそらく短所であり、長所なのだろう。それに助けられたことも今までたくさんある。ありがとう東。お前のそういう所、すごく好きだ。
「貸しって?」
「藤宮さんにおっぱい触られたんですよ!」
結局言うんかい。
「え?」
春宮がこちらを睨む。
「いやあれは事故なんだって!!」
東のことを見直したかと思えばすぐこれだ。俺はしどろもどろになりながらも否定する。
「しかも触るだけじゃ飽き足らず、揉みしだいたんですよ」
「いやそこまでやってないから!!!」
「そこまでっていうことは触るには触ったんだ?」
「謀ったな東ぁっぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
キシシと東が笑う。掌の上で踊るとはこのことか。
「まぁ二人が仲良いのはいいと思うけど、あんまりやりすぎないようにね」
保護者目線で春宮がため息をつきながら言う。待って、なんか恋愛的にこの流れはどうなの?保護者目線になっちゃったらそれはもう叶わないということでは?自分の気持ちに気付きながらも相手に譲るみたいな姉的ポジションに落ち着こうとしてない?
「まぁ減るもんじゃないですし、藤宮さんのことは好意的に思っているのでそこまで気にしていないのですが」
「好意的?」
途端、春宮の顔が曇る。どこかひっかかるところがあったのだろうか。
「えぇ、私は藤宮さんが好きですから」
「そ、そうなんだ」
「はい!愛の為に生きてます!!」
ふんす、と胸を張って宣誓する東。それは宣誓なのか、はたまた先制なのか。というかこの話の流れはまずくないか。嫌な予感がする。
「春宮さんは、誰か好きな人いないんですか?」
嫌な予感が的中した。
「私!?私は・・・」
ちらりと俺を見やる春宮。首を傾げて見せるとすぐに春宮は目線を逸らした。
「今は特に、いないかな」
そう!これこれ!返答がどちらでも俺が傷つくやつね!!!仮にいるってなった場合は、「俺以外の誰かなのかな」ってすごいもやもやするし、いないってなった場合は、「あぁ、俺じゃないんだな」っていうくそめんどくさいやつね!!!やばい!!すごい辛くなってきた!!!もう帰っちゃおうかなぁ!!!
「そうなんですかぁ」
呆然としている俺を尻目に質問を投げかけた張本人はさして興味が無いようだった。じゃあなんで聞いたんだよ。ほんとは俺のことが嫌いなんじゃないのか?
「まぁでも今にいい人見つかりますよ!」
そう、東は適当なフォローをした。
それから、店に着くまで重苦しい雰囲気が場を支配し、誰も一言も喋ることは無かった。いや、一人を除いては。
「あー!スイーツバイキング楽しみだなぁ!!!ケーキ食べるの久しぶりだし!!!」
この場の空気を作り出した犯人は、それを払拭するための罪滅ぼしのように明るくそう喋っていた。一人で。ていうかお前この間も食ってただろ。しかもホールで。
「やっぱりあれですよねぇ、女たるもの定期的に糖分を摂取しないとだめですよね?ねぇ春宮さん」
「そ、そうね」
やめろよ春宮に話しかけんなよ。一人で喋ってろよ。
「あれ、でも藤宮さんは甘いの苦手なんでしたっけ?」
やめろよこっちに振るなよ。いたたまれないんだって。
「ん、まぁ、そだね」
「え!?そうだったの!?」
それに食いついたのはまさかの春宮だった。
「じゃあバレンタイン迷惑だったかな・・・」
「いや!そんなことないよ!めちゃくちゃ嬉しかったし!!」
「そ、そう。ならよかった」
ほっと胸を撫でおろす春宮。それを見て満足そうに微笑む東。きっと場の空気がいくらか和らいだことで「どうだ?上手くやっただろ。褒めろ」とでも思っているんだろう。絶対褒めてやらない。
「お、着きましたよ」
「こりゃまた可愛らしいデザインのお店だこと」
「ここは店員さんの制服もかわいいんですよー、入りましょー!」
東を先頭に続々と店に入る。
「いらっしゃいませ」
店員がこちらに頭を下げる。なるほど、確かに制服が可愛い。一言で言うなればメイド服を少し崩したような感じだ。ふと春宮がそれを着た時を想像する。これが、萌えか。
「それじゃあ、始めますか!」
席に着くや否や立ち上がる東。知らない内に腕まくりまでしている。本気だ。
そこからの様相はまさに戦争と呼ぶにふさわしかった。




