70.狙撃手、二次職になる
【転職する職業を選んでください】
・アサルトシューター
・スナイパー
ついに念願の二次職だ。
非常にテンションが上がる。
だが落ち着いて考えろ。どちらを選択すべきだ?
アサルトシューターは近接戦闘も多少こなせるようになった狙撃手。
スナイパーは遠距離攻撃をより強力にした職。
どちらも捨てがたいが、どちらか一つを選ばねばならない。
非常に悩ましい。
リコッチあたりに相談してみようか?
ベテランの彼女ならいいアドバイスをくれるだろう。
俺はフレンドチャットを開こうとして・・・・・・やめる。
俺はソロプレイヤーだ。
ならば自分のプレイに大きな影響を及ぼすような選択は、自分で決めるべきだと思ったのだ。
成功しても失敗しても、その全てが自分の責任であるべきだ。
・・・。
・・・。
俺は目を閉じると、これまでのプレイを振り返る。
スナイパーライフルを構えて狙撃を繰り返す自分を思い描く。
上手くいったときは大抵、遠距離から一撃で仕留めることに成功したときだ。
逆に相手の接近を許したときは大抵、失敗している。
俺は印象に残っている失敗を思い返す。
短剣使いに接近されて、成すすべなくキルされたときだ。
仮にアサルトシューターになったとしよう。
多少接近戦がこなせるようになったとしよう。
それで俺は、接近戦で短剣使いを返り討ちにすることができるだろうか?
・・・。
・・・。
できない。
死ぬまでの時間が数秒伸びるかもしれないが、それだけだ。
接近戦のプロに近づかれたら、アサルトシューターだろうが何だろうが俺は死ぬ。
そもそも俺は運動神経がそこまで良くない。
俺は自分の接近戦能力を全く信用していない。
ではスナイパーに転職したらどうなるか?
接近されたら死ぬのは相変わらずだ。
しかし遠距離において、これまでよりも成功率が上がるだろう。
どのみち接近戦が弱いなら、これまで通り接近戦はバッサリと切り捨てて、遠距離における成功率を上げたほうが合理的だ。
うん、ここまではいい。
ここまでの思考は理路整然としている。
ならば次は感情の話だ。
俺はこの狙撃というスタイルでプレイしてきて、楽しかったか?
・・・。
・・・。
言うまでもない。
非常に楽しかった。
相手の攻撃が届かない遠距離から、一方的にキルする快感といったらない。
哀れな脳筋たちが銃弾の前に成すすべなく倒れていく様子を見て、言いようのない充足感を覚えたものだ。
狙撃は最高だと心から思った。
よろしい。ならばスナイパーだ。
俺は今後も狙撃手として生きていく。
もしかするとアサルトシューターのほうが賢いのかもしれんが、そんなことはどうでもいい。
俺が選びたいと思うほうを選ぶのが正解だ。
俺はタッチパネルを操作して、”スナイパー”を選択する。
『おお、新たな”スナイパー”がここに誕生した。ケンタロに神の道が示されんことを!』
司祭様が大手を振って送り出してくれた。
と同時にメッセージが表示される。
【あなたはスナイパーに転職しました】
【スキルポイントの振り分けがリセットされます】
【スキルポイントが+5されます】
何と、転職ボーナスでポイントがもらえた。素晴らしい。
それにスキルポイントの振り分けがリセット。
なるほど、これはあれか。
新しいスキルが増えるから、一から振り直していいという粋な計らいだ。
いいぞ、これはワクワクする。
俺は早速ステータスウィンドウを開く。
【名前:ケンタロ 職業:スナイパー】
残りスキルポイント:55
<パッシブ>
射程:0
威力:0
命中:0
アーマーブレイク:0
<アクティブ>
チャージショット:0
連射:0
バレットレイン:0
<職業特性>
ヘッドショット強化
おお!
パッシブとアクティブが一つずつ増えている。
しかも職業特性とやらが追加されている。素晴らしい。
アーマーブレイクはわかる。
もうスナイパーライフルに付いているからな。
しかしそうか、こいつは二次職で登場するパッシブスキルだったのか。
道理で強力なわけだ。
バレットレインは、何々・・・一定範囲に銃弾の雨を降らせる範囲攻撃か。
範囲攻撃。魅力的な言葉だ。
俺は単体攻撃しかできないからな。
しかし、さて。こいつを取るべきだろうか?
・・・。
・・・。
いらないだろう。
リコッチのフリージングストームを見てもわかる通り、範囲攻撃は威力がさほど高くない。
俺がバレットレインで敵を少々削っても、次の手がない。
接近されて死ぬだけだ。
パーティプレイをするならいいスキルだろうが、あいにく俺はソロプレイヤーだ。
それに俺は冷静に落ち着いて狙いを定めるためにも、いちいちアクティブスキルを使いたくない。面倒だし。
これまで通りパッシブスキルだけで戦うスタイルのほうが性に合っている。
そして職業特性だが、これは固定されていて弄れるものではないようだ。
ヘッドショットの威力が上がるらしいので、これまで以上にヘッドショットを当てれば勝ち・外したら負けというプレイになりそうだ。
そういうわけでこうなった。
【名前:ケンタロ 職業:スナイパー】
残りスキルポイント:0
<パッシブ>
射程:30
威力:5
命中:5
アーマーブレイク:15
<アクティブ>
チャージショット:0
連射:0
バレットレイン:0
<職業特性>
ヘッドショット強化
威力はこれくらいあれば、ライフルの補正と合わせて熊やシカ、そしてプレイヤーもヘッドショットの一撃で仕留めることができる。
命中もまあこの程度で困っていなかった。
そしてヘッドショットを妨げる厄介な防御スキルを貫通してくれるアーマーブレイクに、ある程度のポイントを振る。
これなら防御スキルを2枚張られても突破してくれるんじゃなかろうか。
残りは全部射程だ。
これで俺は恐らく、1.5kmくらい先から狙撃を行うことができる。
もちろんそんな最大射程での狙撃は、相手が静止していない限り当たるはずもないが、それでもキルチャンスは大幅に増えるはずだ。
うん、いいだろう。
自分のプレイスタイルに合った振り分けができたように思う。
二次職にスナイパーを選択した時点で、もしかすると賢くないのかもしれんが、少なくとも俺は満足だ。




