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71.狙撃手、追跡中に勧誘される

俺は待望の二次職になった。

大変嬉しい。

となれば早速、実戦だ。

二次職のスナイパーとやらがどの程度の強さなのか確認しなければなるまい。


俺は一次職の頃は、上級者用エリアに足を踏み入れたことはなかった。

今日はそこに赴いてみようと思う。

上級者用ということは、モンスターもそうだがプレイヤーも上級者ということだ。

どこまで通用するかわからないが、年甲斐もなくワクワクする。

これが腕が鳴るという感覚だろうか。




俺は荒廃したエリアを歩いている。

ここを暫く進むと、火山エリアがある。

そこが目的地だ。


火山エリア。

もう響きからして上級者向けだろう。

やはり火系のモンスターが多いのだろうか。

火口には強力なモンスターが住んでいたりするのだろうか。

こういう想像をするだけでも楽しくなってくる。


・・・ん?

10人ほどの集団が歩いている。

あれは・・・。


俺は素早く物陰に身を隠す。

そして遠目に目を凝らす。


やたらと筋肉が目立つ集団だ。

そして先頭にダンチョーがいて、その集団を率いている。

リコッチやクッコロもいる。

ジャスティスウィングの面々だ。


この方角は・・・火山エリア。

目的地は俺と同じらしい。

しかし10人も率いて何やら物々しい。

何をしに行くのだろうか?


ふーむ・・・。

後をつけるか。

気軽に挨拶をして直接聞けばいいのだろうが、それはPKプレイヤーの行動ではない。

後々戦闘になる可能性を考えれば、俺がいることは悟られないほうがいい。


もちろん戦闘といっても、真正面から戦うわけではない。

相手は10人でこちらは1人だ。

考えるまでもなく勝負にならない。

そもそも正面戦闘など狙撃手の戦い方ではない。


とはいえジャスティスウィングの面々は上級プレイヤーだ。

かなり距離を取って尾行したほうがいいだろう。

俺はシーフ職ではないので、近距離で追跡したところですぐバレるに決まっている。


俺はスナイパーライフルを肩から下ろすと、スコープを覗き込む。

こいつは照準を合わせるために使うものだが、簡易的な望遠レンズとして使えなくもない。

スコープの向こうでは筋肉たちが軍隊のような統率を見せながら進軍している。

ダンチョーの指揮が信頼されているのだろう。


俺は何百メートルも距離を取りながら、ときには物陰に隠れ、時折スコープを覗いて尾行していく。

さすがにこんな尾行のされ方は想定外なのか、ジャスティスウィングの面々は誰も気づいていない。


いい塩梅だ。

このまま火山エリアまで・・・。


「なあ、あんた」

「うお!?」


唐突に背後から声をかけられ、俺はびくっとして飛び退る。

振り返ると、人の良さそうな青年プレイヤーがいた。


「悪い、驚かせちまったか」

「ああ、いや。問題ない」


俺は平静を装うが、内心では心臓がバクバクいっている。

こいつに敵意がないようで助かったが、相手がPKプレイヤーだったら俺は確実に死んでいた。


そうなのだ。

これがスナイパーライフルの弱点の一つだ。

スコープを覗いているときは当然、スコープの中しか見えないわけで、視界が極端に狭くなる。

真横に誰かいても全く視認できないのだ。

俺が今キルされなかったのは、全くもって運が良かったとしかいえない。


二次職のスナイパーに転職したからといって、この弱点が改善されるわけじゃない。

気をつけないとな・・・。


「今ちょっとだけ話いいか?」

「ああ・・・まあ、少しだけなら」


俺は了承する。

今は追跡中なのだが、ジャスティスウィングの面々の進行速度はそこまで早くない。

スコープは1.5km以上先も確認できるし、多少なら問題ないだろう。


「確認なんだけど、あんた97位だろ?」

「あー・・・まあ、そうだ」


俺の名前はケンタロなのだが、97位のほうが通りがいいのだろう。

別段否定することなく頷く。

青年は人の良さそうな笑顔を見せて続ける。


「もしよかったらなんだけど、うちのギルドに入ってくれないか?」

「ギルドに?」

「ああ。あんたの狙撃力を見込んで、頼む!」


話を聞いてみると、こういうことらしい。

以前のギルド戦の配信で、相性の悪い暗ダに対してジャッティを見事勝利に導いた俺のことを見ていたらしい。

どうでもいいがジャスティスウィングはジャッティと略されているようだ。

いいな。長いから俺もこう呼ぼう。


ともあれ俺が加われば、自分たちのギルドもギルド戦で上位を狙えると思い、声をかけたとのこと。

ソロプレイヤーなんてもったいない、ぜひともその力を他プレイヤーのために役立ててほしいと言われた。


「どうだろう。あんたの力はソロプレイヤーにしておくにはもったいないと思うんだ! ぜひ!」


うーむ・・・。

青年に頭を下げられ、俺はガシガシと髪をかく。


俺を評価してくれるのは嬉しいが、少し買いかぶり過ぎだと思う。

ジャッティに臨時加入したときは、確かにそれなりに活躍はできた。

だがあれはダンチョーの作戦がハマったのと、運の要素も大きかった。

それに敵が狙撃手のことを全く警戒しておらず、初見殺しの部分もあった。

別のギルドに加入したところで、また同じことができるとは思えない。


「俺に期待してくれるのは嬉しいが・・・」


俺はやんわりと説明してお断りする。

人の良さそうな青年は、少し難しい顔をする。


できればこれで納得して帰ってくれると助かるが・・・。

俺はソロプレイが好きなんだ、見知らぬ他人のギルドに入ってコミュニケーションに煩わされたくないんだよわかったらさっさと帰れ、などという本音はあまり言いたくない。

角が立つので、敵意のない人にも悪印象を与えていらんトラブルを招きかねない。

断るときにはなるべく穏便にだ。


「ジャッティに加入したのはあくまで知人の頼みで一時的なことだったんだ」

「うーん・・・そうか。いや、無理を言って悪かった」

「いや、期待に添えなくて済まない」


青年は雰囲気通りお人好しそうで、ごねずにちゃんと理解してくれた。

俺は安堵のため息をつく。


「また何か縁があったら」

「ああ」


青年は軽く手を振ると、人の良さそうな笑顔を向けて立ち去っていった。

良かった。争いにならずに済んだ。

やはり平和が一番だからな。


俺はライフルを構えると、立ち去る青年の背後からぶっ放した。

青年は頭が爆散して死んだ。



さて、時間を食ってしまったしジャッティの追跡を再開するか。

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― 新着の感想 ―
あまりにも自然過ぎて見逃しそうだったぜ
[一言] フィクションだからこそのプレイスタイルですよね。 リアルだと完全に粘着されてまともにゲームできなくなるでしょうね。
[一言] 穏便とは
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