59.狙撃手とぶぎゃ
今日は大森林に来てイノシシ狩りをしている。
PKもいいが、モンスターも狩らないとスキルポイントが溜まらない。
なるべく早く転職したいからな。
・・・ん?
今何か、モンスターとの戦闘では発生しないような音が聞こえたぞ。
耳を澄ませると、間違いなく聞こえる。
甲高い金属音。
これはプレイヤー同士が戦っている剣戟の音だ。
俺は木々の間を縫って、身を隠しながら近づいた。
予想通りの光景が広がっていた。
6人と5人の集団が戦いを繰り広げている。
片方はバランスの取れた前衛・後衛の集団。
そしてもう片方は、4人の筋肉男たちと1人の生産職らしき女の子。
・・・というかあいつら、ジャスティスウィングの面々じゃないか。
どれもギルド戦で見た顔だ。
女の子は、あの初心者いびりを受けていた子だ。
なるほど。
恐らく女の子が採取のためにこの大森林に足を運び、周りの4人の筋肉ダルマたちはその護衛として同伴したに違いない。
そこでPKギルドのメンバーに出くわして、強襲を受けたわけだ。
「早く逃げるんだ!」
「いや待て、他にもPKがいるかもしれない!」
「確かにそうだ! 俺たちから離れるな!」
「はっ、はい・・・!」
4人の筋肉たちは女の子を守りながら、6人組のPK集団と戦っている。
だが当然ながら劣勢だ。
人数もそうだし、人を一人守りながら戦うというのは難易度が高い。
PK集団もそれがわかっているようで、左右に展開しながら意図的に女の子を狙うように、弓や魔術スキルを行使している。
筋肉は身体を張って女の子を守り、その隙に別の筋肉が攻撃を仕掛けようとするが、PK集団の前衛に阻まれてしまう。
女の子はその様子を青い顔でおろおろと眺めているが、戦闘力がないので何もできない。
どちらに加勢すべきだろうか?
普通なら戦友とも呼べる筋肉たちがいるジャスティスウィングだろう。
PKに嫌な思い出があるであろうあの女の子を、このまま放置するのも不憫だ。
・・・。
・・・。
うむ、よし。
俺は膝立ちになり、スナイパーライフルを構える。
スコープを覗いて照準を合わせる。
一撃必殺。よく狙わなければならない。
慎重にトリガーを引く。
ターン。
半泣きでおろおろしていた女の子の頭が爆散した。
「なっ!? 貴様らああ!」
「おんどれら許さねえ!」
「まっ、待て! 今のは俺たちじゃ」
「問答無用!」
「ぶち殺してやるああああ!」
重い荷物を抱えてさぞ不自由だっただろう。
肩の荷を下ろしてやったぞ。
怒りの形相で反撃に転じる筋肉4人組。
PK集団の6人も余裕の表情が消えて、全力のぶつかり合いを始めた。
これでいい。
ここからは慎重に狙撃しなければならない。
つまり、俺の存在が露見しないようになるべく人数を減らすのだ。
最後に俺一人が生き残っていればミッション達成だ。
ジャスティスウィングへの義理? 知らんなあ。
俺はPKプレイヤーだ。
筋肉の一人が、敵の前衛に攻撃を叩き込む。
それと同時に俺のライフルが火を吹く。
敵の前衛が消滅する。
「っしゃああ! 一人討ち取ったぞ!」
「くそっ、仲間の仇だ! やっちまえ!」
「こっちこそ仲間の仇なんじゃああ!」
両者ともに興奮しており、俺の狙撃がトドメを刺していることに気づいてない。
敵の魔術師が怒りに任せて火炎スキルをぶっ放す。
直撃する筋肉。
それに合わせて銃弾を叩き込む俺。
筋肉が一人消滅した。
筋肉の攻撃。狙撃する俺。
敵の攻撃。狙撃する俺。
そんなことを繰り返して、筋肉も敵も残り一人になった。
一騎打ちだ。
「・・・なあ、さすがにおかしくないか?」
「なんか変じゃのう」
「・・・ん? いたぞ、あいつだ! 狙撃手だ!」
「なにい!? あっ、ケンタロじゃねえか!」
さすがにバレた。
だがもう遅い。俺は即座に一発ぶっ放す。
筋肉が弾けて消えた。
「くっ、くそ・・・!」
敵は距離を見て不利と判断したようで、背中を見せて一目散に逃げ出した。
悪くない判断だ。
だがなあ、もう遅いと言っただろう?
ライフルの射程は長いんだよ。
ターン。
最後に残った敵も、後頭部に銃弾を受けて「ぶぎゃ」と哀れな悲鳴を残した。
俺はライフルを肩に担ぐ。ミッション達成だ。
卑怯? 漁夫の利? そうだろうとも。
だがそれがどうした? これが狙撃手の戦い方だ。
気づかないほうが悪いんだよ。
恨むなら脳みそまで筋肉に染まった自分たちを恨むんだなあ。
所詮お前らは脳筋だ。
ライフルにカモられて、哀れな悲鳴を上げているのがお似合いなんだよ。ふははははは!
「・・・やれやれ、キミは彼らが援軍を呼んでいるという発想はなかったのかい?」
俺は増援にやってきた銀髪イケメンダンチョーを見ると許しを請いながら逃げ出したが、背中から串刺しにされて「ぶぎゃ」と鳴きながら死んだ。




