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60.理子ちゃん、浜辺エリアに誘う

私は栗原理子。

自分のベッドにばふっとダイブすると、ごろごろと転がる。

大きく息を吐いても胸のモヤモヤは消えない。


・・・理由はわかってる。

最近、クッコロさんとセンパイが仲良しだ。

クッコロさんを見てるとたまにフレンドチャットで楽しそうにお喋りしてるみたいだし、この前なんて2人きりで狩りに行ってた。

帰ってきたクッコロさんは「全く、ケンタロはしょうのないやつだ」なんて言ってたけれど、口元が微妙に緩んでいた。

明らかにセンパイを気に入ってるカンジだ。


クッコロさんのことは嫌いじゃない。

というか好きだ。

うちのギルドでは珍しい、守ることに重点を置いたタンクだし、本人も頼れるお姉さんってカンジで素敵な人だ。

美人だし上背があってかっこいいし、名前がヘンテコなことを除けば惚れる要素しかない。


実際、センパイもクッコロさんのことまんざらでもなさそうだし。

ていうかまんざらじゃなかったら2人で狩りになんて行かないだろうし。

・・・未だに誘ってもらえない私と違って。


私は”センパイ”と名付けたペンタくんぬいぐるみを手に取る。

それでもモヤモヤは収まらなくて、ぎゅーっと抱きしめる。

はあ・・・センパイ、センパイセンパイ・・・!

好き。好きだよう・・・。


ごろごろごろごろ。


センパイは私のこと、どう思ってるんだろ。

いや、どう思ってるかなんてわかってる。

興味がないのだ。


私も我ながら身勝手な人間だと思う。

最初は私に興味がないセンパイがよくて、そんなセンパイだから友情を育めると思って。

でもいざ好きになったら、自分に興味を持ってほしくて。


でも。でもでもでも。

センパイ、好きなんだもん・・・。

身勝手だってわかってても、好きになっちゃったら興味を持ってほしいよ・・・。


私はセンパイの面倒くさそうな目つきを思い返す。

どうすれば私に興味を持ってもらえるんだろう?


自分なりに多少のアピールはしてきたつもりだ。

でもさっぱりだった。

センパイは大人だ。私のことなんて子供ががんばって背伸びしてるくらいにしか見えていないのかもしれない。

やっぱり大人の男性は、こんな子供じゃなくてクッコロさんみたいにしっかりしたお姉さんタイプのほうが好きなのかなあ。


・・・ここはやっぱり、あれの出番だろうか。

しばらく前のイベントでペンタくんゴールドバッジと交換した、水着。

センパイを浜辺エリアに誘って、それで水着を着てセンパイを・・・。

の、の・・・の・・・悩殺・・・わああああ!


ごろごろごろごろ。


上気した頬をぺちぺちと叩いて、自分を落ち着かせる。

の、悩殺はともかく・・・古今東西、アピールといえば水着は定番だ。


大丈夫かな? 露骨すぎると思われないかな?

心配は尽きない。

でもそんな風に悩んでるうちに、もし・・・その、センパイがクッコロさんともっと仲良しになっちゃったら。

どうしよう。そんなことになったら私は絶対に後悔する。


後悔はしたくない。じゃあ行動するしかない。

前向きなのが私の長所だ。

私はセンパイを浜辺エリアに誘うんだ・・・!




ゲームにログインすると、早速センパイにフレンドメッセージを送る。

ちょっと緊張する。

大丈夫。いつも通りの調子で行くんだ。


『センパイ! 浜辺エリアに行きましょー』

『何しにだ?』


デートです。

でもそんなことは言えない・・・。

えっと、えっと。


『海にもモンスターがいるんですけど、結構貴重な素材が取れたりするんですよー』

『それを手伝えと?』

『ですっ』

『2人でか?』


できれば2人がいい。

でも素材収集ならギルメンに頼めばいいわけで、わざわざセンパイと2人っていうのは不自然だ。

うう・・・。


『もちろん、他にも人はいますよー。全部で3、4人ですかねえ』

『まあそういうことなら』


泣く泣くそういうことにした。

ダンチョーあたりに同行してもらおう・・・。


『ところで俺は水着を持っていない』

『NPCからレンタルできるんで大丈夫ですよー』

『なるほど、便利だな』


センパイの水着かあ・・・。

どんなのレンタルするんだろ? ちょっと楽しみかも。ふふー。

そんなわけで日時を決めてフレンドチャットを終了した。


やったああ! センパイを誘えたー!

私やったよ!




「ダンチョー! センパイと浜辺エリアにモンスター狩りに行くんですけど、一緒にいきませんかー?」

「ああ、構わないとも。そうだ、せっかくだからクッコロも誘ってあげよう」

「え?」


私が止める間もなく、ダンチョーはクッコロさんもメンバーに組み込んでしまった。

ううう・・・。

クッコロさんの水着、きっとかっこいいんだろうなあ。


でも大丈夫。私はがんばる。

私が交換した水着だってめっちゃ可愛い。


がんばってセンパイに褒めてもらうんだ。

そしたらセンパイの腕にしがみついちゃったりして。

それで、ちょ、ちょっとだけ・・・む、胸とか、押し付けてみちゃったり・・・わああああ!


「リコッチ? 顔が真っ赤だけど大丈夫かい?」

「はっ!? だ、大丈夫ですっ!」


慌ててパタパタと手を振る。

は、恥ずかしいよう・・・。

私はいそいそとその場から立ち去る。


とにかく、ちょっと想定外のことは起きたけどセンパイと浜辺エリアに行くことが決まった。

あそこはまさに太陽が輝く夏のビーチってカンジなので、やっぱりちょっとワクワクする。

今夜はなかなか寝付けないかもしれない。


ああ、楽しみだなあ・・・。

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