157.狙撃手とイベント終盤
復活ポイントに送還された俺は憤慨した。
何だよあのスキルは!
何で鈍器が伸びるんだよ! 如意棒かよ!
インチキにもほどがあるだろ!
攻略サイトを見ていない弊害というのは、こういったところにある。
敵がどんなスキルを有しているかわからないのだ。
わからないから初見のスキルを避けようがない。
しかしこれもゲームの醍醐味である。
わからないことを一つずつ学習していく。
そうして少しずつ強くなっていく。
これはこれで成長を実感できて楽しいのだ。
俺は泉から出て、草原エリアまで移動する。
イベントはまだ続いている。
つまりまだPKのチャンスはいくらでもあるということだ。
哀れな子羊どもを血肉に変えて、俺は更に成長していくのだ。
雑魚どもは大人しくこの俺の踏み台になっていればいいんだよ。
ゴバア!!
俺はワイバーンのブレスに丸焼きにされて死んだ。
******
?!???!!?!!?!
何なんだよクソッタレ!
俺はまた復活ポイントに戻されると、空を見上げた。
そこには1000を超えるワイバーンの群れがバッサバッサと舞い、正門目掛けて飛来していた。
圧巻である。
ドラゴンほどではないが、ワイバーンもまた強力な竜種だ。
決してザコ敵ではない。
それがあれほど群れをなして押し寄せているのだ。
その迫力は語らずとも察せよう。
そして正門前では、プレイヤーたちが空から押し寄せるワイバーンどもを迎え撃っていた。
魔法使いと弓が雨あられと攻撃を浴びせ、下降してきたワイバーンを近接職が叩きのめす。
しかし空からブレスが撒き散らされるとどうしようもなく、プレイヤーたちも屍の山を築いている。
ふむ。
どうやら初日の防衛イベントも大詰めのようだ。
そして・・・誠に無念ではあるが、俺のPKプレイもここまでだ。
何故かって?
草原エリアの上空を、余すところなくワイバーンが飛んでいるからだよ。
のこのこ出ていったが最後、さっきのように焼死体になるのがオチだ。
それに、見ろ・・・!
あのワイバーンの群れの更に向こう。
巨大な影が街目指して、ドスンドスンとやってくる。
「あ、あれは・・・!?」
「でけえ! 何だ?」
「ど、ドラゴンだああ・・・!」
「うわあああ!」
防衛にあたっているプレイヤーたちが口々に叫んでいる。
そう。
あまりにも巨大な黒いドラゴンだった。
火山のエリアボスのレッドドラゴンも、屋敷を超えるほどの大きさを誇っていたが、その比ではない。
高さにして30mはありそうだ。
【レイドボス:ケイオスドラゴンが出現しました】
やはりレイドボスか!
あの大きさは、かつてのペンタくんバッジを集めるイベントで登場したレイドボス――ジャイアントイノシシを彷彿とさせる。
しかしイノシシと違ってドラゴンだ。
間違いなく今回のレイドボスのほうが強敵であろう。
それに忘れてはならないが、空にはまだまだワイバーンが飛来しているのだ。
ケイオスドラゴンの強さにもよるが、果たして正門を守りきれるかどうか・・・。
ふと遠くのほうで、「ぎゃあああ!」「うわあー!」と悲鳴が聞こえた。
別の門のほうだ。
どうやら北門、西門、東門でもそれぞれボスが登場したと思われる。
つまり、援軍は期待できないということだ。
漆黒のドラゴンはその巨体を揺らしながら、正門へと進軍してくる。
でかい。
あまりにもでかい。
レイドボスだけあって威圧感が段違いだ。
「おい、ここは・・・」
「ああ・・・」
「ちっ、仕方ねえ」
「まだ初日なのに街が荒らされたらたまらねえ」
ここに来て、いがみ合っていたPK軍とPKK軍も、正門の防衛に参加することにしたようだ。
まあそりゃあな。
この激しい防衛イベントは明日もある。
今日の時点で街の施設が使用不能になってはみんなが困るのだ。
ズシン。
ズシン。
ズシン。
漆黒の鱗を全身に纏ったケイオスドラゴンが、ついに正門前に到達した。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
天をもつんざく咆哮。
身体がビリビリと震える。
プレイヤーたちが息を呑む音が聞こえる。
「・・・いくぞ! レイドボス討伐だ!」
誰かが声を張り上げた。
「うおおおおおおおおおお!!」
それに呼応する万を超えるプレイヤーたち。
士気が上がる。
熱気が高まる。
皆が武器を構える音が響き渡る。
さあ、イベントボス戦だ。




