103.狙撃手とリコッチと別荘の完成
俺とリコッチは森を抜けて、湖のほとりに辿り着いた。
まだ土地の権利書はあまり出回っておらず、この周辺にある家は俺たちの別荘だけだ。
そのうち権利書が出回るようになると、この素晴らしい景色にも多くの家が立ち並ぶことになるのだろうが・・・・・・まあ、しばらくは俺とリコッチの2人だけで楽しめるだろう。
「センパイ! 早速家具を配置したいです!」
「ああ」
俺たちは別荘に入ると、あーでもないこーでもないと話し合いながらテーブルや椅子、タンスやソファを配置していく。
正直、俺は配置にさほどこだわりはない。
やはりこういうのは女の子のほうが理想があるんだろうな。
そして家具の後は罠も配置していく。
窓からの侵入を試みる愚か者にはマジカルライトニングワイヤー。
そして屋内への侵入を成功させた狼藉者にはマジカルオートボウガン。
それをくぐり抜けてインテリアを荒らさんとする不届き者にはマジカルクローゼットミミックが襲いかかる。
更に別荘の周囲には柴犬(強度:強い)とビーグル犬(強度:強い)を放し飼いにしてある。
それだけでなくマジカルマインを各所に埋め込んでいくことも忘れない。
これだけ厳重にしておけば生半可な強盗など何人来ようが返り討ちだろう。
「センパイ。迎撃対象はどうします?」
「そうだな・・・」
俺とリコッチ以外の全員を迎撃対象にすると、フレンドやギルメンが訪ねてきたときにも迎撃アイテムが発動して困ったことになる。
なので”俺とリコッチのフレンドおよびギルメン”を除く全員、を迎撃対象とした。
かなり時間はかかったが、これでひとまず完成だ。
リコッチが望み、俺たち2人で手に入れた別荘風の一軒家だ。
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「ふー・・・」
「センパイ、お疲れ様でした!」
俺がソファで一息つくと、リコッチがグラスに入ったオレンジジュースを持ってきてくれた。
効果はHPゲージの自然回復が気休め程度に早くなるというものだ。
リコッチも俺の隣に腰を下ろす。
「とりあえず、リコッチ」
「はい」
俺たちはグラスをカチンと合わせて乾杯をする。
「長かったな・・・」
「ですねえ」
大半のプレイヤーはまだ権利書さえ手に入れていない段階だ。
だから俺たちはかなり早かったほうだが、それでもここまでずいぶん長く感じた。
ほっと一息だ。
俺たちは揃ってジュースを飲む。
「センパイ! ありがとでした!」
リコッチが改まってぺこりと頭を下げた。
「唐突にどうした?」
「だって、センパイ元々はハウジングなんて興味なかったでしょ?」
「ん・・・。まあ」
その通りではある。
ソロプレイヤーの俺はハウジングに関わる気などなかった。
リコッチが家がほしいと言い出さなければ、詳細を調べることもなかっただろう。
「だからすごく感謝してるんです! あと私のワガママに付き合わせちゃってごめんなさい!」
リコッチがまたぺこりと頭を下げた。
どうやらずっと申し訳ないと思っていたようだ。
しかしそれは誤解だ。
「リコッチ、勘違いしないでくれ。俺のほうこそ感謝している」
「・・・そうなんですか?」
目をぱちぱちさせるリコッチ。
俺は大きく頷く。
「俺はこのゲームを楽しみたいと思っているし、ハウジングとて楽しみの一環だ。ソロプレイヤーだから流そうと思っていたが、リコッチが関わるきっかけをくれたんだ」
「センパイ・・・」
「だからリコッチ、有り難う」
俺が告げると、リコッチは嬉しそうに「えへへ」と笑った。
「私、どうしても・・・そ、その、センパイと一緒に住む家がほしくて・・・」
恥ずかしそうに身を捩らせるリコッチ。
俺はもう一度、頷いて見せた。
「それについても、迷惑に感じたことはない。まあ、何だ」
「?」
「・・・その、可愛い恋人と一緒に住むのも悪くないと思っている」
こういうことをはっきり口に出すのも恥ずかしいもので、俺は少し頬を掻く。
「・・・センパイっ」
リコッチが潤んだ瞳で俺に抱きついてきた。
俺は慌てて受け止める。
「センパイ、好きです・・・!」
「リコッチ・・・」
「何ていうか、あの・・・あんまり愛情表現みたいなこと、してくれないタイプだと思ってたので・・・」
・・・その認識は正しい。
こんなおっさんが何を言っているんだ、という微妙な気持ちになるのと、少々の照れもある。
だがリコッチは、俺に対して言葉でも態度でも愛情表現をしてくれる。
・・・だからこそ、一方通行に感じてどこか寂しく思っていたのかもしれない。
俺はぎゅうっとリコッチを抱き締めた。
「わ・・・! せ、センパイ」
「寂しい思いをさせて悪かった」
「・・・いいえ」
リコッチも俺の背中に手を回して、ぎゅうっとしてくる。
俺はリコッチに告白された当初は、確かにそこまで強くリコッチを好いていたわけではない。
良い彼氏になれると誓ったので努力はするつもりだったが、恋愛感情という意味ではさほど大きくなかった。
今はどうか。
リコッチは俺のことを、俺が抱いている気持ちとは比べ物にならないほどの想いで好いてくれている。
しかしそこで独りよがりに自分の感情を優先するのではなく、俺に嫌な思いをさせないよう気を使い、あまりワガママを言わず控えめに接してくれた。
俺としてはそれは有り難かったのだが、リコッチからすれば不満もあっただろう。
それでもリコッチはその不満を一度も零すことなく、ずっと俺に配慮し続けてくれたのだ。
そのうえで今でも一途に俺のことを想ってくれている。
・・・こんな子を、愛おしいと思わずにいられるだろうか。
今はもう、はっきりとリコッチのことが好きだ。
リコッチが可愛い。
容姿はもちろん可愛らしいのだが、そういうことではなく、存在が可愛い。
俺を想ってくれて、恋人になってくれて、本当に感謝している。
これからは俺なりにもう少し愛情表現をしたいと思うし、大切にしたいと強く思う。
「リコッチ、好きだ」
「センパイ・・・」
俺はリコッチの髪を優しく撫でる。
リコッチは恥ずかしそうに頬を染めて、ゆっくりと目を閉じる。
俺はリコッチの唇に、そっと唇を触れた。
告白はされたし、付き合ってもいた。
だが今日このとき、俺たちは本当の恋人同士になった気がした。
次回はリコッチとイチャイチャします。




