刑事アズキ 最終回。
「……ここまでだ。」
ガチャン!!
石田は黒沢の左手を掴むと、後ろから手錠をかけた。
黒沢は驚き後ろを見ると、背後で手錠をかける石田に気づいた。
「何をしている!?」
「何って手錠だよ。はい、右手も。」
石田は黒沢の右手も掴んだ。
黒沢の右手から力無く、タバコがスルリとこぼれ落ちる。
タバコがポトンと地に落ちると、音も無く火が消えた————
「何故だ、どうしてだ。」
「タバコで目線誘導するのはわかっていた。そのわずかの間、無防備になることもな。」
黒沢はショックを受け、地面を見つめた。
石田は黒沢に追い打ちをかけるように話した。
「それを利用させて貰ったって訳さ。アズキ、大丈夫か?」
その場に立ち尽くしていたアズキは石田の声に反応し、我を取り戻すと状況を理解した。
地面を見つめていた黒沢が声を荒げた。
「つまり、私が逆に目線誘導されていたというのか!!」
黒沢は怒りに満ちた表情で石田を罵った。
「この、ノンキャリアが!!」
石田は淡々とした口調で黒沢に話しかけた。
「ノンキャリアでよかったさ。おかげであんたの目線に入らずにすんだ。」
アズキがポケットから用意していた目隠しを取り出し黒沢にかけた。
「行こうか、元総監。」
石田が警視庁内に黒沢を連行しようとすると黒沢が吐き捨てるように言った。
「これで終わりではないぞ、日本人!!」
胸に手を当て安堵の表情を浮かべていたアズキは、連行される黒沢元総監を悲しそうな目で見つめた。
数日後、警視庁、講堂。
「まさか、あいつが新総監とはね……。」
やれやれといった顔の石田。
「なぁ、アズキ。黒沢の奴、なんで白龍会系のトップなんてやってたんだ?あれだけ優秀なら総監だけで十分だったろ?」
石田が隣のアズキに尋ねた。
「私、なんとなくわかっちゃったんです。故郷、人には故郷が必要なんです。」
アズキは軽く深呼吸してから石田に答えた。
「故郷ねぇ……。俺には一生、理解出来ないな。」
石田は両手を頭の後ろに回し、天井を見つめた。
壇上に新総監が上がる。
アズキが新総監を見て石田に声をかけた。
「来ましたよ、新総監。」
「くしゃみしたりして。」
石田がおどけながら言った。
「そんな漫画みたいな。」
アズキは苦笑した。
壇上に上がり演説を始める小野寺新総監。
「へっくしょん!!さて、皆さん。」
アズキと石田は目を合わせ笑った。
総理官邸。
新総理にチャコールグレーのスリーピースを着た男がアジア系美女の腰に手を回し、微笑みながら声をかけた。
「新総理就任おめでとう、≪尹浩≫。」
「ありがとう城島副総監。ただ、≪尹浩≫。その外国風の呼び名は止めてくれないか?私はリベラルではなく保守のプリンス、鷹司浩だよ。」
胸からタバコを取り出し、タバコに火をつける鷹司新総理。
威圧するように鷹司新総理は城島を睨みつけた。
鷹司新総理はタバコを吸うと、白い煙を吐き出し城島に話しかけた。
タバコの白い煙が城島を包み込んだ。
「そうだろう?」
「あ、ああ……そうだったな。」
扉が開き、スタッフが鷹司新総理に声をかけた。
「新総理、会見のお時間です。」
町中のモニター、スマホにチャコールグレーのスーツを着た鷹司新総理が映る。
日の丸を背にし、スポットライトを浴びる鷹司新総理が国民に向かって話しかけた。
「こんばんは、日本の皆さん。≪新しい日本≫の始まりです。」
主のいないテーブルの上のタバコから、白い煙がゆらゆら揺れ、儚く消えていった————
空から東京の街並みが見える————
刑事アズキ。 最終回。 終わり。




