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ウォーヘッド  作者: グレゴリー
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怒りの矢

ストゥーカの目は、濃紺色の海に

浮かぶ数十隻のノル船と、

それを包囲しようとしている

十数隻のバナナボートを捉えていた


前方には、巨大なグレートドラゴンである

黄金竜スターチェイサーがいる。

大気を重く揺るがす声が、

背後のストゥーカに向けて放たれた



「竜騎士とレッドドラゴンよ、

 こちらに向けて2体の神の戦士モドキ、

 つまり、そなたらの言う使徒とやらが

 向かってきておるが、見えておるか?」



ボケコラが言った



「我はあなたのような大きな目を持たぬゆえ、

 まだ見えぬ」



その背中に乗るストゥーカが言った



「偉大なる黄金竜スターチェイサー、

 私の目では未だにその姿を

 捉えることはできませんが、

 巨大な圧力のようなものは感じます。

 あっ、バナナボートに向けて

 エネルギー弾が放たれたわ!

 船を守らないと」



数発もの光り輝く球体が、凄まじい速度で

バナナボートに向かってくる


しかし、ストゥーカとボケコラを追い越して、

4匹のゴールデンドラゴンたちが

スターチェイサーに並んだ


グレートドラゴンほどではないが、かなり

巨大なゴールデンドラゴンであるボブが言った



「落ち着くのだ、我々がバナナボートの

 援護として選ばれた理由を今、見せてやろう」



並んで飛ぶゴールデンドラゴンたちが

一斉にゴールドブレスを吐き出した


黄金色に燃えるそのブレスは、

まるで流体の金属のような

重い質量を持っているかのようだ


まるで、バリアのように

黄金色の炎がバナナボートの上空を覆う


全てのエネルギー弾が、ゴールドブレスと

接触し、爆発を起こした


再び、スターチェイサーの声が

大気を震わせる



「よいか、竜騎士たちとドラゴンたちよ、

 我々の相手は使徒だ。

 眼下の敵の船団は、バナナボートに任せて

 我々は使徒だけに注力するのだ 

 あれは、単体ですら我を倒す力を持っておる。

 決して、一対一で戦ってはならぬぞ」



ストゥーカにも2体の使徒が見えてきた

竜騎士としての脅威的な視力で使徒たちの

色の判別もできる。


赤色と青色の甲冑だ



「あの青色の使徒、確か、ベーレンで私たちに

 映像を見せてくれた奴じゃない?

 久しぶりの再会ね」



青色の甲冑を纏った使徒ルーシーは、

ストゥーカに向けて腕を伸ばし、

人差し指を突き出して見せた


ストゥーカもすかさず、

使徒ルーシーに向けて

腕を突き出し、人差し指を突き出した



ボケコラが言った



「あの青色の奴、ベーレンで我々のことに

 気が付いておったのか!

 気の利いた挨拶までしてくるとは!

 しかも、こちらにまっすぐ向かっておるぞ」


 


/////////////////////////////////////////////////



レイデン同盟の武装バナナボートの甲板上では、

水兵たちが戦闘準備をしていた


海上部隊の指揮官が言った



「いいか、上空での出来事は無視して、

 俺たちは目の前のノル船だけを相手にする。

 我らレイデンの偉大なる友、

 黄金竜スターチェイサーと

 ゴールデンドラゴンたち、そして、

 頼もしき竜騎士たちが頑張ってくれているが、

 もしも、使徒の攻撃が俺たちの船に

 当たったとしても、それはもう、

 俺たちにはどうしようもない。

 天に身を任せるだけだ、

 メシアのご加護を信じよう!


 では、いくぞ!

 ドワーフの怒りの矢を準備しろ」



武装バナナボートは2層の甲板を有しており、

両舷に、外に向けて機械式バリスタの矢を

突き出すための窓がいくつも開いている


それらの窓から、太い鉄製の矢のようなものが

突き出された


その矢は、船内で機械式バリスタに

つがえられているのだが、誰がどう見ても

こんな巨大で重そうな矢を、非力なバリスタで

遠方に飛ばせるとは思えなかった


しかし、バナナボートの船団は、ノル船の

反撃を食らわないように十分に離れた位置から

包囲している


矢の照準を45度ほど上向きにして、

水兵たちが攻撃命令を待っている


そして、ついに攻撃命令が下った



「今だ、撃て、やっちまえ!奴らに

 ドワーフの怒りの矢を放つんだ」



先端のとがった巨大な筒のようなその矢が

一斉に放たれた


矢のケツにピンが刺さっており、弓の弦と

そのピンは繋げられている。

そして、空に放たれてピンが抜けたと同時に、

ドワーフ王国が開発したその機会仕掛けの矢は

動作を開始したのだった



まずは、一瞬にして、内部から羽のようなものが

飛び出し、矢の飛行を安定させる

そして、内部の水平器が水平状態を察知したと

同時に、矢のケツから炎が吹き出たのだった



ニュルーン王国のノル船の甲板上では、

ヒラヒラした服装の太った貴族たちが

口をぽかんと開けていた


護衛の魔法使いの攻撃魔法すら届かない

距離から放たれた巨大な矢が、

長い炎の尾を引きながらこちらに飛んでくる


矢は、ノル船の甲板よりかなり高い高度を

飛んでいて、このままでは、自分たちの

上空を飛び去ってしまうだろう


しかし、ドワーフの矢の最後の仕掛けが作動した


矢の弾頭に空いた無数の穴から

引火性の液体が染み出て、

仕掛けによって飛び散った火花で

それが引火したのだ。

そして、弾頭はバラバラになって落下していった


無数の火の玉がノル船の集団に降り注いでいく


ノル船の水夫たちは我先にと海に飛び込んだ


しかし、太った貴族たちはどうしようもなかった

もはや、貴族としての意地を見せて

散っていくのみ



「ふはははは、まるで我が野望のごとき

 燃え盛る炎が、わが身を

 包み込もうとしておるわ。

 まさに自らの野望で

 その身を焦がすがごとくではないか!

 なんと皮肉に満ちた最期であるものよ」



ワインが入ったグラスを頭上に掲げて

強がって見せる者、



「我が愛しのエスメラルダ、

 そなたを初めて見たときも、

 今のごとき炎が我が瞳に写っておった。

 これから我が身を襲うであろう炎ですら、

 そなたの燃え上がるような愛の

 激しさには及ばぬだろう」



胸に下げた肖像画入りのペンダントを握り締め

愛を囁く者



「やはり海は大嫌いじゃ、

 泳ぐ訓練をしておればよかったのう。

 否、この重たい身ではそれも叶うまい。

 美食の道を捨ててまで、やることではないわ」



相変わらず、盆の上に乗った食い物を

食べ続ける者



割と潔く、ニュルーン王国の貴族たちは炎の中に

散っていったのだった。



///////////////////////////////////////////



怒りの矢が放たれたのは、

リンデンの海上だけではなかった。

 

ヌルーン王国の王城の広い廊下を、

グランヘルム3世がズカズカと歩いていた。



(勇者マックスよ、やはりそなたは

 奇跡を起こす者だ。

 余はそなたと違ってあくまで凡人、

 しかし、せめて、そなたのように

 自らの意思で立ち上がる決意をいたす)



整えられたブルネットの髪と髭、

その灰色の瞳は決意に燃えている


柱の陰に、王の小姓が隠れていた


グランヘルム王は、小姓に向けて頷いた


........



長い地下への螺旋階段を

王の小姓が駆け下りていく


やがて、ジェネラルの牢にたどり着いた小姓は

息を切らしながらも、

一言だけ告げた



「矢は放たれました」



鉄格子越しに見えるのは、地面に座り込んだ

性犯罪者、

白いシャツに、豪奢なトランクス姿のジェネラル


短く刈り込んだごま塩頭に、顔の下半分を覆う

白い無精ひげ。

その軍人は、一瞬にして、

直立不動の姿勢となった


そしてジェネラルは、小姓の目の前で、

その豪奢なトランクスを脱いだ


下半身フルチンになった初老の英雄の姿を

小姓がドン引きして見つめる


しかし、ハイエルフ製の上絹で作られたその

トランクスの内側には、

びっしりと複雑な図形のような

呪文が描かれていた


ジェネラルは、トランクスから突き出た一本の

絹糸を引いた。

トランクスはスルスルと解体され、一枚の布と

なった


その布に描かれていたのは、ハイエルフの

移転魔方陣


ようやくジェネラルが口を開いた



「クローディス大公よ、ついに我々も

 立ち上がる時が来ましたぞ!」



レイデン侵攻作戦の知らせは、

グランヘルム王から

密かにクローディス大公に知らされていた


そして、彼らはこの日のために

ずっと待機していたのだった



 








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